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四情狩林  作者: 戌尾 昴
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それぞれの苦しみと意い ~第二章~

日太達の一族が集う集落で待ち受ける者とは?

  四情狩林 ~それぞれの苦しみと意い~


第2章…一族の掟と悪しき風習

 次の朝――

(日太)「うーん」

 日太は時間を見た。

(日太)(7時か)

(日太)「はあ、今日は淡堕の家に皆が集合だったよな」

 日太は1階に行きリビングに入ると両親が居なかった。

(日太)「あれ? 二人とも何処に行った?」

 日太がリビングにあるテーブルの上を見たら二つの紙があった。

(日太)「二人とも、出かけたのか」

 日太はテーブルの上に置いてある紙の内容を読んだ。

(私達は今日が結婚記念日だから二人で沖縄に行ってくるから留守番宜しく頼むね)

(日太)「二人共、結婚記念日旅行かよ…たくっ」

 日太はもう一つの方も読んだ。

 (日太、お前の事だ、オカルト系の呪い等を冗談半分でやるだろ…まあ、知り合いの霊能者のお祓いで解決しとけ…旅行は7日後の夜には帰るから)

(日太)「あの霊能者は嫌いだ!」

 日太は父親の《置き手紙》を《クシャクシャ》にしてゴミ箱に投げ入れると朝食を食べて顔を洗って家の電気を消して家中の扉が閉まっているかチェックして外に出て玄関の鍵を閉めて淡堕の家に向かった。

(日太)(それにしても、俺達の一族の村があってもそこでの情報収集は無いと思うが…)

 日太はそう思いながら家から右に曲がって、更に右に曲がり、4番目の角にある家が淡堕の家であるが目の前に門があるが玄関は、後ろにあるので後ろに回って、インターホンを押した。

(淡堕)『はい』

(日太)「俺だ、日太だ」

(淡堕)『…』

(日太)「ん?如何した?」

(淡堕)『販売会社の方ですか?』

(日太)「何処を如何したらそうなる! 昨日約束した日太だよ…それにお前のインターホンはカメラ付きだろうが!」

(淡堕)『悪い、悪い、冗談だよ』

(日太)「あのなあ」

(淡堕)『玄関は開いているから入って』

(日太)(おいおい、泥棒が入ったらどうする気だよ)

 日太は玄関を開けて中に入った。すると、玄関脇には刀があった。

(日太)(おいおい、玄関に刀って)

(淡堕)「おはよう、日太」

(日太)「おはよう」

 淡堕が出迎えた。

(淡堕)「じゃあ、俺の部屋に行っていてくれ」

 日太は2階にある淡堕の部屋に向かうとそこには完素と丹波そして山海がいた。

(丹波)「よう、日太」

(完素)「日太、おはよう」

(山海)「以外に早かったな」

(日太)(以外には余計だよ!)

 其処には界男以外の皆がもう集合していた。

(日太)「後は界男だけか」

(淡堕)「ああ」

(日太)「あいつは何をしている?」

(山海)「俺が界男の携帯電話に連絡してみるよ」

 山海は界男の携帯に電話をした。

(山海)「もしもし」

 界男の電話に繋がったようだ。

(丹波)「あいつ、今、何をやっている…」

 そう丹波が言った。

(山海)「早く来いよ」

 山海は電話を切った。

(丹波)「如何だった?」

(山海)「界男のやつ、俺の電話で起きたらしい」

(全員)「…」

 皆が絶句した。

(丹波)「今…何時だっけ?」

 丹波が言った事で皆は部屋の時計を見た。

 今の時刻9時半。

(完素)「あいつ…自律神経失調症かよ」

(淡堕)何だよ、それ?」

 完素の言葉に淡堕が訊いた。

(完素)「…率直に言えば朝と夜が反対になったりすること」

 完素は淡堕にそう説明した。

(山海)「そういえば、界男のやつあの事件の前から夜に散歩するようになったな」

(丹波)「ふ~ん」

 山海はそう言った。

(日太)「そう言えば、今日は親の結婚記念日なのよな」

 日太は暇つぶしにそう言った。

(淡堕)「それは、おめでとう」

 淡堕は祝ってくれた。

(完素)「それは置いといて」

(日太)(置いといてって)

 日太は心の中で突っ込んだ。

(丹波)「なぁ、日太」

 突然、丹波が言った。

(日太)「ん?」

 日太は返事をした。

(丹波)「今、結婚記念日と言ったよな」

 丹波は日太に日太の両親の行動を確認した。

(日太)「ああ、そう言ったが」

 日太は両親の行動の確認に返答した。

(丹波)「親はどうしている?」

 丹波は訊き返した。

(日太)「? 沖縄旅行に行ったよ」

 日太は両親の結婚記念日旅行の行き先を教えた。

(丹波)「やっぱりか」

 丹波は何故か納得した。

(日太)「ん?」

 日太は気になった。

(丹波)「実は此処に居る全員の親が旅行に行っているらしい」

 丹波は日太に皆の両親も旅行に行っている事を説明した。

(日太)「…嫌な予感がするな」

 日太は皆の両親が旅行に行っている事に不吉な予感を感じ始めていた。

(山海)「まあ、偶然だと思うけど」

 山海は偶然だと言った。日太達は些細な話をしていると淡堕の家のインターホンがなった。

(淡堕)「ん?誰だ」

 淡堕は1階に向かった。

(日太)「あのさ、淡堕の家のインターホンってカメラ機能付いているよな」

(完素)「ああ、今、カメラが故障中だって言っていたよ」

(日太)(あぁ、それでか)

 其処に界男が合流した。

(界男)「いや~ 遅れて御免」

 界男は皆に遅刻の事を謝った。

(完素)「遅いってば!」

(淡堕)「…じゃあ、皆も集まった事だし本題に入るか!」

 淡堕は皆が集合したので本題の切り出そうとした。

(日太)「そうだな」

 日太はそう言いながら部屋の床に座った。淡堕は、例の件について詳しく語り始めた。

(淡堕)「例の村は、祟娘山(すいじょうさん)の一か所に集まっているが外からは、入れない仕組みになっている」

 淡堕は村の場所と入り方について語り出した。

(山海)「どう言う事だ?」

 山海は首を傾げた。

(界男)「外から入れないって事は内から入るしかないって事か?」

 界男が話に入った。

(淡堕)「その通りだ。祟娘山のある場所に内側から入れる場所がある」

 淡堕が言うには外からでは無く内側から入る為の場所が存在するらしい。

(丹波)「でも、何故そこまで知っている?」

 丹波は淡堕が村について詳しい事に疑問を感じたらしい。

(淡堕)「……2~3才ぐらいに祖父母に連れて行かれた事がある…と言ってもその場所までだからその先は知らない」

 淡堕は昔、祖父母に連れられて行った事があったらしい。

(丹波)「そうか、でも、外から入れないってどういう事だよ」

 丹波は村に入るには内側からだと気になったらしい。

(日太)(何故、今…)

 日太は丹波の発言に唖然とした。

(淡堕)「その集落の周りには、巨木の囲いがあってそこを通って入ろうとすると巨木で造られた槍が出て来て、通った者達を阻むようになっているらしく外からの侵入を許さないらしい」

 淡堕は外から村に入ろうとするとどうなるか説明した。

(日太)(それって、侵入者に痛いじゃ絶対に済まない防衛設備だな…ってか、自分で言うのも何だけど防衛設備と言えるのだろうか…)

 日太は淡堕の説明で村の防衛設備?の起動した時の想像をして恐怖を感じた。

(界男)「でも、もう集落は廃墟とかしているし人間はもう誰も居ないはずだろ、何で動く?」

 界男が村の施設が動いている事に疑問を感じた。

(淡堕)「その点に関しては、詳しくは分からないがどうやら完素の村が関わっているらしい」

(完素)「俺の集落が…」

 淡堕の言うには完素の村が村の設備が起動しているのと関係しているらしい。

(淡堕)「俺が知っているのはここまでだ」

 淡堕は話しを終えた。

(完素)「俺からも情報がある」

 完素が言った。

(完素)「俺の友人が前に例の集落に行った事を聴いてそいつに昨日、改めて詳しく話を訊いてみたら大変な事が分かった」

 完素の友人が集落に行った事が判明した。

(日太)「何だよ」

 日太は完素の話しに積極的に聴いていた。

(完素)「その集落に入る前から異臭がしていたらしいがある集落に入ってそこの事を記した本を見つけて、悲しい事実があった」

 完素は村の悲しい事実について語ろうとした。

(全員)「…」

 皆は完素の話に集中して聴こうとしていた。

(完素)「普通は生物が亡くなったら火葬か土葬またはミイラ化させるのが普通だろ」

 完素は皆に人が亡くなった後に如何するか確認した。

(淡堕)「…まぁな」

 淡堕は返答した。

(日太)(ミイラ化は違うと思うがまあいいか)

 日太はミイラ化に関しては心の中で否定した。

(完素)「そこでは、火葬や土葬ましてやミイラ化をさせずに一か所に集めて、何もせずそのままずっと放置していたと友人から聞いた」

 完素は話しを終えた。

(山海)「だとするとそこで情報を得るのは無理とみて間違いないな」

 山海は村での情報収集は不可能と考えていた。

(日太)「いや、そうとは、限らないと思うけど」

 日太は山海の考えを否定した。

(山海)「ん?」

 山海は首を傾げた。

(日太)「六つの村が集まって出来た所だ。六つの村がその中にある。それで間違いないなよな、淡堕」

 日太は淡堕に村が存在する場所を確認した。

(淡堕)「ああ」

 淡堕は肯定した。

(日太)「だとすれば六つの村は、一つの村には何かしらの技術を持っていた事になる」

 日太は其々の村に一つの技術が集約してあると推測を話した。

(山海)「言われてみればそうだ」

 山海も納得したか首を縦に傾げた。

(日太)「そうなれば、その一つの技術がヒントになるはずだ! …まあ行って見れば分かるはず」

 日太は村にある技術が一族の廃企業を調べられると言った。

(山海)「そうだな」

 例の件についての話しは終わった。

(淡堕)「皆はいつ空いている?」

 淡堕は皆に村に行ける日を訊ねた。

(日太)「俺は明日って言うか、ほぼ毎日開いているけど」

 日太は毎日開いていると答えた。

(淡堕)「まあ、仕事も何もしてないからね」

 淡堕は何もしていない事をきっぱり言った。

(日太)「うるせぇ」

 日太は軽く突っ込んだ。

(山海)「ふっ、俺も毎日開いているよ」

 山海は今のトークをみて微笑んだ。そして、自分の予定も話した。

(丹波)「俺も」

 丹波も毎日、開いていた。

(界男)「僕も」

 界男も毎日、開いていた。

(完素)「自分も」

 完素も毎日、開いていた。

(淡堕)「じゃあ、明日に例の集落に行こう」

 淡堕は集落に行く予定を明日に決めた。

(全員)「オッケー」

 皆も承知した。

(界男)「…っで、何時に集合する」

 界男が集合時間を何時にするか皆に尋ねた。

(淡堕)「9時に祟娘山入口駅に集合って事で」

 淡堕は集合時間を九時にした。

(全員)「じゃあ、それで」

 皆は九時で承知した。

 こうして、日太達は午後の9時に淡堕の家を後にした。日太は家路に着いた。

(日太)(はぁ、それにしても、嫌な予感しかしないがまあいいか…とりあえず風呂の支度でもするか)

 日太は風呂の準備が出来るまで、屋上に行き夜景を見ていた。

(日太)(やっぱ、夜景は見えないけど屋上に来ると彼等との思い出が蘇るなあ)

 日太は十数年前のある出来事を振り返っていた。

 十数年前のある日、同級生の麓町ろくちょう ゆう邪都じゃと 海刀かいとうとの三人が家で遊んでいた時――

(日太)「なあ、偶には、チャンバラでもするか屋上で」

 日太は二人に屋上でチャンバラをするか尋ねた。

(海刀)「いいな」

 海刀は喜んで承知した。

(勇)「そうだな、海刀が転校する前に三人での思い出に良いと思うぞ」

 勇は海刀が転校する前に思い出として良いと承知した。

(日太)「そういえば、海刀は引っ越しだっけ」

 日太は海刀に言った。

(海刀)「そうだよ」

 海刀は縦に頷いた。

(日太)「何処に引っ越しだっけ?」

 日太は引っ越しの行き先を訊いた。

(海刀)「アメリカに…」

 海刀は日太に行き先を言った。

(日太)「そうか」

 日太は最後の思い出に屋上でチャンバラをする事が決まった。

(勇)「でも、なにでチャンバラすんだよ」

 勇はチャンバラに使う物を日太に尋ねた。

(日太)「この玩具で良いよな」

 日太は昔から人気のSFの剣をチャンバラに使う事を提案した。

(二人)『お、良いね』

 二人は賛成した。そして、日太達は、屋上に上がりチャンバラで遊んでいた。その時、日太の強烈な攻撃が海刀に当ってしまった。

(海刀)「いたっ」

 海刀の腕の関節に当った。

(日太)「あっ悪い」

 海刀は蹲ったまま何も喋らずにいた。

(勇)「チャンバラはここまでにしておこう」

 勇はそう言い日太は頷いた。

(勇)「海刀も明日に引っ越すための準備があるだろ」

 勇は、そう言うと海刀は痛みを堪えた。

(海刀)「そうだね」

 海刀は痛みを堪えながら言った。

(勇)「日太、僕と海刀は帰るわ」

 勇は海刀と共に家に帰る事を日太に言った。

(日太)「ああ」

 日太は納得した。

(勇)「じゃあな」

 二人は自分の家に帰って行った。

 現在に戻る――

(日太)(あの時、海刀には悪いことをしたな)

 日太は罪悪感に感傷していた。

(???)『たっく、まだその事引きずっていたか』

 日太の後ろから声が聴こえた。

(日太)「誰だ」

 日太が振り返ると其処には半透明に立っている男がいた。

(男)『お前の守護霊だよ』

 日太の守護霊が話した。

(日太)「俺の!?」

 日太は驚いていた。

(守護霊)『お前に悪気は無かった…そうだろ』

 守護霊は日太にあの時の事を訊ねた。

(日太)「確かにそうだ…だけど、結局は俺が海刀を傷つけた事には違いない。だから俺は、あの時の事を忘れるわけにはいかない! 罪なのだから!」

 日太は罪に対して罪悪感をちゃんと受け止めていた。

(守護霊)『罪っていうのは、法律の物だけ、お前の罪は罪にならねぇ』

 守護霊は日太に法の事だけが罪だと言った。

(日太)「確かに法律の事だけだ。ましてや、子供がやった事だ。大目に見られるのが関の山だ。だけど俺は法律だけが罪じゃねぇと考えている」

 日太は法律に触れた物だけが罪ではないと考えている。

(守護霊)『ほう、じゃあお前が言う罪とは何だ?』

 守護霊は日太に罪とは何か訊ねた。

(日太)「…光だ」

 日太は光が罪と言った。

(守護霊)『ほう光かお前は、なぜ光と』

 守護霊は日太に光が罪とは何か訊ねた。

(日太)「俺は闇の人間だ。だから光しか見ていない者達は、闇を知らない…いや、自分の中にある闇の部分を見つけてはいない…俺は、友を傷つけ・祖母を殺そうとしたが未遂で終わった・お隣の花壇を壊して謝らない人間だ。だから闇の部分は他人の心の傷や嘘を見抜く力があるが光しか見ない奴は他人の事を何とも思わずに消そうとする。それが光だ」

 日太は自分の考えを守護霊に絶命した。

(守護霊)『お前の言っている事は逆に聞こえるが』

 守護霊は日太に言っている事が逆に聴こえる点を訊ねた。

(日太)「確かにそう聞こえるがちょっと前にあったアレルギー体質で小学校の給食にそのアレルギーとなる食材が入っていたためにその子供が亡くなったという事件がニュース番組で放送していたがあの時の生徒がもしも、一人っ子だと考えると一つの仮説が出来ちまう。一人っ子には、一人っ子の苦しみがある」

 日太は昔のニュースを話した。

(守護霊)『話しがそれたが一人っ子の苦しみとは何だ?』

 守護霊は話が逸れそうだったが話を本題に戻ろうとしていた。

(日太)「一人っ子は、自分の家系を繋げていかなければならないという事を一人で背負う事になるがその苦悩は一人っ子なら誰しもが背負うことになる。もしも、そうだとすればその子はその事に早くに気が付いたが親には言えず苦しみ続けた。そんなある日、給食でアレルギー体質がある子が居る事を忘れて、ついアレルギーになる食材を入れてしまった。普通アレルギー体質や嫌い物がある子は、それが入った食材は避けるが食べたのは死にたくなるほどその事に悩み続けた結果から死にたい衝動に走り食した。というのが妥当な考えだ」

 日太は長くニュースの仮説を長く説明した。

(守護霊)『…良くもそこまでの仮説を出来たな』

 守護霊は少し茫然とした。

(日太)「【類は友を呼ぶ】という諺があるように俺には【類は類を知る】という言葉が一番かな」

 日太は自分の中で考えた言葉を言った。

(守護霊)『なるほど、お前も一人っ子だったな』

 守護霊は日太が一人っ子だと忘れていた。

(日太)「ああ、だから仲間を知らないで暮らしている奴らを光と俺は言う!」

 日太は蹲ったまま言った。

(守護霊)『成程、全てを知る事で闇に染まるという事か』

 守護霊は日太の言っていた言葉に納得した。

(日太)「そうだ、正確に言うと自分と見ている世界を知るとね、闇に染まるが約束を破るような奴は闇ではなく【皇光こうこう】と俺は呼ぶけどね」

 日太はそう言った。

(守護霊)『ふん、光が全てではなく闇を見る事で自分のすべきことが分かるってやつか』

守護霊は日太に訊ねた。

(日太)「そういう事」

 日太は肯定した。

(守護霊)『どうやら、迷っていないって事か…まあいい暇つぶしになった』

 守護霊は日太が道に迷っていない事を確信した。

(日太)「まあ、いいさ」

 日太もスッキリした表情をしていた。

(守護霊)『そういえば、風呂に入る予定だったよな』

守護霊は風呂に関して話した。

(日太)「そういえば」

 日太は守護霊に訊かれるまで忘れていた様子だった。

(守護霊)『もう、風呂が沸いている頃じゃないか?』

 守護霊は日太に風呂が沸いている頃だと教えた。

(日太)「やべ、冷める前に入らないと」

 日太は屋上から一階まで急いで降りた。

(守護霊)『…弟は、俺達の思想をちゃんと持っている。弟が母さんに約束した事・俺達二人の兄との約束を果たしてくれている。だが、弟は苦しんでいる今もこれからも忘れたら人じゃなくなるからな…弟にとって苦しい思い出を友に話すときは、笑顔で話す心配されたくないからだろうその証拠に腕に傷を負い体は吹き出物の痕で血が出る始末(まあ、それは弟の計画)背中もボロボロ…弟は、自分が犯した罪の罰だと言い聞かせている。まあ、母さんなら思いっきり叩いているだろうな』

 守護霊は日太の兄だった。日太は兄だと気付いていない様子だった。

(日太)「はぁ…はぁ…さてと、風呂に入るか」

 日太は服を脱いで風呂場に入るとシャワーを浴び風呂に浸かり1時間位入り風呂から出た。

(日太)「ふぅ、それにしても、明日は、俺達の集落に向かうにしても、あいつらどうやって行くつもりだ」

 その時、日太の携帯が鳴った。

(日太)「ん?誰からだ」

 携帯の画面を見ると完素からのメールだった。

 (件名…緊急事態発生

  内容…さっき話した例の集落に行った奴が急に倒れて、昏睡状態らしい。

  まぁ命に別条はないとは言え救急車の中で不思議な事を言った。

     「呪ってやる」

     「復讐してやる」

     「死にたくない」

  こんな言葉を言ったらしい。しかもそいつの声じゃなくて、女子の声らしい)

 完素のメールは不吉な事が書かれていた。

(日太)「おいおいこれって何かの警告かそれとも…」

 日太は胸騒ぎがしたが気にせず明日の為に早めに寝た。

 翌日――

 日太がベッドの横で携帯電話のアラームがなった。日太は携帯電話のアラームで起きた。日太は携帯に表記してある時間を確認した。

 現在の時刻4時半――

(日太)「早く起きすぎたか…」

 日太は二度寝しようと布団に包まった。

(日太)(…っていうか、俺は4時半に設定した記憶はねぇな…確か昨日、俺が設定した時刻は6時半だったような…)

 日太は携帯のアラームの時差が気になった。

(守護霊)『俺が夜中にかえといてやった』

 すると、日太の背後に守護霊が見えた。

(日太)「お前か、どうしてまた」

 日太は布団から出て守護霊に突っ込んだ。

(守護霊)『今日、祟娘山に行く予定だろ』

 守護霊は日太の為に時間を早めたらしい。

(日太)「そうだけど、何もこんなに早くにしなくても…」

 日太は少し眠気が残りながら言った。

(守護霊)『昨日、準備をしないで寝ただろ』

 守護霊は日太が今日、行く為の準備を怠っていた。

(日太)「忘れてた!」

 日太は準備を忘れていた事に気付いた。

(守護霊)『持って行く物を用意も、しないで行くつもりか』

 守護霊は日太に怒った。

(日太)「すいません」

 日太は謝ってすぐさま行く準備に取り掛かった。

 1時間後――

(日太)「これで、OK」

 日太は行く準備が出来た。

(守護霊)『それじゃ、俺は元に戻る』

 守護霊は日太が行く準備が出来たのを見て通常勤務に戻ろうとした。

(日太)「分かった」

 日太は納得した。すると、日太の前から守護霊は消えた。

(日太)「…さてと、朝食にしますか」

 日太はリビングに移動した。

(日太)「朝は、パンだけにして」

 日太は朝食の献立を考えていた。

(日太)「…そろそろ、出るか」

 すると、家のインターホンが鳴った。

(日太)「はい」

 日太はインターホンに出た。

(山海)(日太おはよう、山海だ、迎えに来たぞ)

 日太を迎えに山海が来た。

(日太)「はい?」

 日太は頭を傾げた。

(山海)(一緒に車で行くって、言っているの)

 山海は簡易的に説明した。

(日太)「はいよ」

 日太は納得して一階に向った。

(日太)(あいつ、移動の方法に関しては、誰にも負けず嫌いだからな)

 日太は外に出た。

(日太)「よう、山海、意外と早いな」

 日太は山海が意外に早く来た事に少し関心をした。

(山海)「…まぁね」

 山海は少し言葉に詰まった様に言った。

(日太)「その車って、もしかしなくても」

 日太はふと山海が運転している車を訊ねた。

(山海)「ああ、親の車だ」

 山海が運転している車は親の物だった。

(日太)「良いのか、親の車に乗って」

 日太は少し心配した。

(山海)「大丈夫だって、置き手紙に【車は自由に使って良い】と書いてあったからな」

 山海はそう言った。

(日太)「そうかい」

 日太は、後ろ座席に荷物を乗せて日太も車の助手席に乗った。

(日太)「そう言えば、あいつらは?」

 日太は他の皆が如何やって行くのか訊ねた。

(山海)「ああ、界男と丹波はオートバイクで、完素と淡堕は電車でくるみたい」

 山海は他のメンバーが如何行くのか説明した。

(日太)「そうかい」

 日太は納得した。

(山海)「じゃあ、行きますか」

 山海は目的地にそろそろ行こうと言った。

(日太)「そうだな」

 日太と山海は祟娘山に向う為に車を出した。

 それを後ろから見ている人影があった。

 その人物は何処かに電話をした。

(人影)「ええ、今、例の六人の内、二人が高尾山の別称…祟娘山に向いました。…例の件について、検討して、頂けますか?」

(電話の相手)(ああ、分かった、検討して置こう)

 電話の相手は大物らしい。

(人影)「ありがとうございます」

 その頃、日太と山海は祟娘山に向かっている途中だった。

(日太)「なあ、山海」

 日太は山海に言った。

(山海)「何だよ?」

 山海は前を向いて返事した。

(日太)「昨日の夜中に完素からメールは来たか?」

 日太は昨日の完素からのメールが届いたか訊ねた。

(山海)「ああ、集落に行った奴が倒れたってやつか」

 山海の所にも完素からメールが届いていた。

(日太)「ああ、そいつがはいた言葉が妙に引っ掛かる」

 日太は言葉が気になった。

(山海)「確かにそれは右に同じだ」

 山海も同じらしい。

 数時間後――

(日太)「やっと、着いたな」

 二人は集合時間より早く祟娘山入口に着いた。

(山海)「あのなぁ、信号が見えたら赤になったのが連続だったぞ」

 日太はついアクビをした。

(山海)「日太、眠いのか?」

 山海は日太に聞いた。

(日太)「…まぁね」

 日太は朝早く起きてまだ眠気がしていた。

(山海)「日太、お前、何時に起きた」

 山海は日太が起きた時間を訊いた。

(日太)「…4時半」

 日太は起きた時間を教えた。

(山海)「4時半! 何で?」

 山海は驚いた。

(日太)「ちょっと色々あって」

 日太は説明しなかった。

(山海)「ふ~ん、まあ、まだ時間もあるし少し寝たら」

 山海は車の中で寝たらと提案した。

(日太)「そうだな、御言葉に甘えて」

 日太は車の座席を落として寝た。

 数時間後――

(山海)「起きろ、日太」

 山海は日太を起こそうとした。

(日太)「皆、来たか」

 日太は全員が集合したか訊いた。

(山海)「ああ」

 日太は車から下りて皆と合流した。

(淡堕)「…では、案内しましょう」

(日太)「頼む」

 そうして、日太達は道無き道を通り、ある古びた神社へと辿り着いた。

(丹波)「…ここは?」

 丹波が訊いた。

(淡堕)「名も無き神社だ」

 淡堕は返答した。

(丹波)「は?」

 丹波は淡堕の言葉が気になった。

(淡堕)「ここは、神社としての機能は無く、俺達の集落を隠すためだけに造られた建物だ」

 淡堕はこの場所が何なのか説明した。

(山海)「つまり、ここが入口って訳か」

 山海は淡堕に訊いた。

(淡堕)「そういう事だ」

 日太達は、名も無き神社に入った。

(界男)「そういえば、集落の中心にはどうやって行く?」

 界男は入り方について訊いた。

(淡堕)「それに関しては簡単だ。まず社の後ろに集落へ行ける隠し階段がある」

 淡堕は村の中心への行き方を説明し始めた。

(日太)「なるほど」

 日太達、社の後ろにある隠し階段を開けて、中に入って階段を一段一段と下りていった。すると、二人が通れるほどの広さで先が見えないほど長く続いていた。

(山海)「やけに長くないか」

 山海は通路の長さに疑問を感じた。

(丹波)「確かに長すぎる」

 丹波も同感した。

(淡堕)「そもそも、ここは戦争・戦乱の時に敵から身を守るために長いと祖父から聞いた事がある」

 淡堕は通路が長い理由を説明した。

(完素)「にしても、明るくないかこの道」

 完素は通路が明るい事に疑問を感じた。

(日太)「言われてみれば」

 日太達は周りを見渡した、すると天井に、電球が付けてあった。

(丹波)「おい、これってLEDだよな」

 丹波は電球がLEDだと言った。

(淡堕)「ああ、そうだな」

 淡堕は落ちついて返答した。

(日太)「取り敢えず先に進むぞ」

 日太は皆に先へ行く事を催促した。

(丹波)「ああ」

日太達はライトを照らしながら先に進んだ。すると、目の前に六つに階段がある大きなフロアに来た。

(日太)「如何いうことだ…階段が六つ」

 其処には上へ続く階段が六つもあった。

(淡堕)「これは、避難用だな」

 淡堕は推測した。

(丹波)「どう言う事だ?」

 丹波は訊いた。

(淡堕)「そもそも、六つの村…つまり俺達の村はこの上にあるが一つじゃないって訳だ」

 淡堕は説明し始めた。

(丹波)「どう言う事だ?」

 丹波は更に訊き返した。

(淡堕)「この上に行けば分かるさ」

 淡堕は説明を省いた。

(淡堕)「とりあえず、一つの階段に一人つけば分かるって事」

 淡堕は更に丹波の為に提案した。

(日太)(まあ、丹波には難しいよな)

 日太は丹波の頭では理解力では分からないと悟った。

日太達は、一つの階段に一人にして、皆で一斉に上った。頂上に着くとそこには、六角形の形をしており、門が六つあった。

(三人)「これは?」

 淡堕と日太と完素以外の三人は驚いていた。

(淡堕)「俺が死んだ祖父母に連れて来られたのはここまでだ。この先は絶対入ってはいけないと言われているからな」

 淡堕は祖父母と此処に来た時の話をした。

(山海)「つまり、ここまでが平気な場所って訳か」

 山海は安全地帯と危険地帯の境を訊いた。

(淡堕)「まあ、そういう事になるな」

 淡堕は返答した。

(完素)「でも、どうする?」

 完素が言った。

(界男)「何が?」

 界男が言った。

(完素)「皆で回るかそれとも、別れて行動するかどうするの?」

 完素は如何やって探索するか訊いた。

(山海)「ここは、皆より、別れて行動した方が良いと思う」

 山海は別々の策が良いと言った。

(丹波)「自分は、一緒の方が良いと」

 丹波は全員で行動した方が良いと言った。

(日太)「俺は別々に行った方が正しいと思う」

 日太は別々が良いと言った。

(界男)「日太、どうしてだ」

 界男は日太に別々の方にした理由を訊ねた。

(日太)「まず、一つ目は、早く帰れるから」

 日太は本音を言った。

(界男)「お前、怖いのか」

 界男は日太が怖いのか言った。

(日太)「違うって! もしも俺達がここで二日以上もいれば、車にバイクそれが両親にばれるおそれがある事だ」

 日太は両親にばれる可能性がある事を説明した。

(丹波)「どう言う事だ」

 丹波は理解していなかった。

(日太)「淡堕の祖父母がここまでで何故、廃村となった村に入らなかったのかが気になる。しかも、祖父母がここに連れて来たって事は、淡堕の親もここに来た可能性がある、つまり、別々に行動すれば時間を短縮できる、しかも、ここに来た事を親達にばれたら、俺達は、あの子達と同じ目にあって、死ぬ可能性がある以上だ」

 日太は親にばれればあの子達と同じ運命を辿る可能性がある事を皆に説明した。

(山海)「成程ね」

 皆は納得した。

(山海)「でも、どれが誰の一族の村だ」

 山海はどれが誰の村なのか皆に訊いた。

(日太)「言われてみたら」

 日太達はどれが誰の一族の村の門かを考えていた。

(界男)「ちょっと待て、さっきの淡堕の話からして淡堕の祖父母は、どうやって、一族の村がこれだって分かった?」

 界男は淡堕の祖父母が如何やって村の門か分かったのか皆に言った。

(完素)「言われてみれば」

 皆は淡堕の祖父母が一族の村だと解ったか考え込んでいた。そのころ、日太は村の門を調べてある事に気付いた。

(日太)「…分かったぞ!」

 日太は見分け方が分かったので皆を呼んだ。

(山海)「本当か?」

 山海は日太に訊いた。

(日太)「ああ、簡単だよ、門の近くに行けば分かる」

 日太はそう言うと皆と門の近くに行った。

(日太)「これだよ」

 日太は、門の中央を指差した。そこには大きく彫られた一族の家紋らしき物が描かれていた。

(山海)「これか! …でもこれは誰の村だ?」

 山海はこの村が誰の一族の村か気になった。

(日太)「簡単だ、此処は水楽の村だ」

 日太は目の前の門が丹波の一族の門だと皆に言った。

(丹波)「え!」

 丹波は驚いた。

(日太)「このマークは川の様に彫られているからだよ」

 そして、日太達は自分の一族の村がある門を探し出した。日太は林のマーク・山海は森と海のマーク・界男は幽体離脱しているようなマーク・完素は笑顔の顔をしたマーク・淡堕は怒りマークだった。

(日太)「それじゃあ、皆が無事にここに戻りそして皆で帰ろう!」

 日太は無事にこの場所に皆が再度集まる事を皆に約束した。

(全員)(おお!)

 そして日太達は己の一族の門を開けた。

 ここから彼らは不思議な体験そして一族に苦しい呪いを彼らは思い知ることとなる 彼らは超えられるのでしょうか?

 水楽村――

 丹波が門を開けると水が流れる音がした。

(丹波)「何だ、この音?」

 丹波が奥の方へ行くと噴水があった。水の色が茶色く濁っていた。

(丹波)「これ、まだ動いているのか」

 丹波は先に進むと大きな木造建築の家があった。

(丹波)「ここは、一体?」

 丹波は家の中に入って、少し進むと棚があった。

(丹波)「ここは書棚か…」

 丹波は棚にあった書物を読んだ。

(万能の水効能説明書)

 丹波はその書物を見ると、そこには、万能の水の効能と販売する時の注意事項が書いてあった。

 (万能の水について

   ・紫色の水は癌に効く。

   ・白く濁った水は眼に効く。

   ・赤色の水は基礎代謝を上げる。

   ・緑色の水は傷の治りが速くなる。

   ・青色の水は頭痛に効く。

   ・黄色の水は全ての病気に効く。

  注意事項について

   ・お客様に丁寧に説明をする事。

   ・金額はお客様の所持金を聴いて、お客様に配慮した金額にする事。

   ――)

 丹波は書物を読み終え、あった場所に戻そうとした時に奥にもう一つ本がある事に気付き奥の書物を取って読んだ。

 (4月6日 今日また雌が産まれた例の場所に送った。

 6月2日 今日は雄が産まれたこの子の未来が楽しみだ…)

(丹波)「雌?雄?何の事だ」

 丹波は疑問を抱きながら本棚を調べると地図の様な物が出て来た。

(丹波)「これは…地図かこの家は何だ」

 丹波は調べるとどうやらここは、村長の家だった。しかも、驚く名前を見つけた。

(丹波)「これって」

 (村の門の左隣の建物の名は…【女子処分場】と書かれていた)

 丹波はすぐさまその建物がある場所に向かった。建物に近づくにつれ異臭が臭い始めた。

(丹波)「なんちゅう、臭いだよ! これは世界一だな」

 丹波は建物に着いた。

(丹波)「ここは一体、何の建物何だ」

 丹波は扉を開け、中に入った。する突然扉が閉まった。

(丹波)「何だ!?」

 丹波は扉を開けようとした。

(丹波)「くそ、ビクともしない!」

 すると、突然何処からか声が聴こえて来た。

(???)『コロシテヤル』

(丹波)「この声は一体」

 丹波が振り返るとそこにはこの世の者とは思えない者がそこにあった。

(丹波)「お前は、何者だ!?」

 そう言うとそいつは言った。

(???)『我が名は、鵯怒(ひしょ)この村に巣くう二百人の女性達の怨念の集合体だ』

(丹波)「怨念の集合体だと」

(鵯恕)『お前の体を頂いて、復讐してやる!』

(丹波)「復讐ってお前らの恨み対象はとっくに亡くなって、無理に決まっているだろ!」

(鵯恕)『違う! この世の全ての人間に復讐するのだ!』

(丹波)「そんなことは、絶対にさせない」

(鵯恕)『じゃあ、止めてみろよ!』

 すると鵯恕は丹波の体の中に入っていった。

(丹波)「ここは?」

(鵯恕)『お前の心の中だ』

(丹波)「心?」

(鵯恕)『ここで、お前の心の大きさ小さくさせお前の体を乗っ取ってやる!』

(丹波)「絶対に復讐はさせない!」

(鵯恕)『ルールは簡単だ。お前の心の炎を小さくさせれば俺の勝ちだ。制限時間は、十分だ。それ以上いると俺がお前に取り込まれるからな』

(丹波)「分かった」

(鵯恕)『では、スタートだ!』

 すると、二人の頭上に長針だけの時計が現れた。途端、鵯恕は勝負を始めた。

(鵯恕)『お前は、役立たずで、この先も役にも立てるはずがない』

(丹波)「…」

 丹波の心の炎はちょっとだけ縮んだ。

(鵯恕)『お前は、今も、何かの罪悪感を覚えているな、それに今も苦しんでいるな』

(丹波)「…」

 丹波は、その瞬間に花がイメージされた。

(鵯恕)『お前は皆の足を引っ張る存在だ』

(丹波)「…」

 丹波の心の炎が半分まで縮んだ。

(鵯恕)『お前は、何も出来ない』

(丹波)「…」

 丹波の心の炎は更に小さくなり、五十センチの大きさだったのが一円玉サイズの大きさまで縮んでしまった。

(鵯恕)『これが、最後だ。お前は、仲間の為に何も出来ないし、仲間の足を引っ張る存在だ。だから、私に体を渡してもらおう!』

(丹波)「…!」

 すると、丹波の精身体が消え始める。

(丹波)(俺は、死ぬのか…皆…すまない)

 丹波は皆に謝ろうとした。

(鵯恕)『これで、お前の体を貰う!』

 丹波が消えかけた瞬間ふと昨日のある出来事を思い出し丹波の体は元に戻ろうとした。

(鵯恕)『どうして』

(丹波)「お前は俺には勝てないよ、絶対に!」

(鵯恕)『どう言う事だ!?』

(丹波)「俺が消えかけた瞬間、二つの約束が俺を助けたのさ」

(鵯恕)『二つの約束だと』

(丹波)「一つは、門の前で仲間との約束だ!」

(鵯恕)『もう一つの約束は』

(丹波)「お前も分かっているだろ」

(鵯恕)『?』

(丹波)「そういえば、もうすぐ制限時間切れるけど大丈夫か?」

 時計を見ると残り十秒だった。

(鵯恕)『無理か』

 そう言いながら鵯恕は丹波の体から出ようとした。が丹波は、鵯恕を捕まえて、体から逃さないようにした。

(鵯恕)『何をしているこのままでは…』

(丹波)「お前は俺の体に入る事を認める! だがお前の復讐は認めない!」

(鵯恕)『何故だ?』

(丹波)「お前はずっと苦しい生活をしていた。だから、俺の中で一緒に暮らしていけば、まだ希望がある事や楽しい事を見て行こう」

(鵯恕)『…』

(丹波)「お前の心を絶対に変えてやる」

(鵯恕)『…分かった』

 そうすると、逃げるのを止め、丹波の体内に残った。丹波と鵯恕は一時の和解をした。そうして、丹波は、現実の世界に戻ってきた。

(丹波)「さてと、この村でやる事は、終えた。門の外で皆の帰りを待つとするか」

 その時、中に居た鵯恕から話しをしてきた。

(鵯恕)『皆とは、ここに来る時に一緒に来た者のことだろ』

(丹波)「当たり前だろ」

(鵯恕)『無事だと良いな』

(丹波)「どう言う事だ」

(鵯恕)『この村には、私が居たように他の村にも怨念の集合体が居る』

(丹波)「そうなのか」

(鵯恕)『ああ』

(丹波)「あいつらなら大丈夫だろ」

(鵯恕)『どうして、そう信じられる?』

(丹波)「あいつらは度胸があるし、心配はするだけ無駄だよ」

 そう言い、門の前に着き、門の扉を開けた。

 濃怒村――

 淡堕は門を開けると異様な空気が流れていた。

(淡堕)「この感じ、胸騒ぎがするなあ」

 淡堕は奥の方を見ると異様な影が見えた。

(淡堕)「あれは…」

 淡堕は影がある方に向かった。すると、そこには、他の建物とは、違った空気を出していた。

(淡堕)「この建物は一体」

 淡堕は建物の中に入ろうとした時、足元に板があった。そこには、この建物の名前が書いていあった。

 (改善更生施設)

(淡堕)「改善更生施設どういう建物だ」

 淡堕は建物の中に入ると、右側に案内図があった。

(淡堕)「この先を右に曲がれば事務室があって、他は全て、更生人室って書かれている」

 淡堕は取りあえず事務室に向かった。

(淡堕)「事務室ならここが何なのか分かる筈」

 事務室に着き、扉を開けた。中には、まだ物が残っていた。物色していると一つの書物が出て来た。

(淡堕)「これ、説明書だな」

 淡堕は書物の内容を読んだ。

 (ここでは、自殺が起きて、我々はその自殺には、必ず自殺まで追い込んだ者やその件で悲しんだりせず平気な奴ら【関係者のみ】をこの施設に入れて、更生させるのがこの施設の目的である)

(淡堕)「成程…ここは、更生施設だが薬物などではなく命を軽く見ている者達を入れて、命の重さを教える場所か」

 淡堕は先を読むとそこには、村の事やここの記録帳は、村長の家にあると書かれていた。

(淡堕)「村長の家か」

 淡堕はもう少し、読むと最後の方にこの村の見取り図が描いてあった。

(淡堕)「村長の家は、隣にあるのか」

 淡堕は建物から出て村長宅に向かった。

(淡堕)「村長の家なら何か分かるかも」

淡堕は村長宅に着き、中に入ると本棚があった。書棚を調べると村の見取り図と一冊の日記帳が出て来た。

(淡堕)「日記帳か読んでみるか」

 淡堕は日記帳の内容を読んだ。

 (十月五日 今日は雄が産まれた

  八月一三日 今日は雌が産まれたあの世に逝かせるために例の場所に送った。母親には産まれた直後に亡くなったと伝えた。…)

(淡堕)「例の場所って」

 淡堕は地図を見るとそこには、名前からして恐ろしい建物の名があった。その名は【女子処分場】と書かれていた。

(淡堕)「何だ、この場所は!」

淡堕は女子処分場へと向かった。そこに着くと大きな建物で、一階建てで扉は、両開きの扉だった。

(淡堕)「ここは、一体…」

 淡堕が扉を開けて中に入った瞬間に扉が急に閉まった。

(淡堕)「ちょっ!」

 淡堕は扉を開けて、外に出ようとするが何故か扉が開かなくなっていた。

(淡堕)「開かない」

 淡堕が扉を開けようとしていると突如、何処からか声が聴こえた。

(???)『ニ…ク…イ』

 声は淡堕の後ろから聴こえた。淡堕が後ろを振り向くとそこにはこの世の者とは思えない者がいた。

(淡堕「お前は何者だ!?」

(???)『我が名は、魚剣(おけん)濃怒村に巣くう四百人の怨霊の集合体である』

(淡堕)「怨念の集合体か」

(魚剣)『そうだ』

(淡堕)「俺をここに閉じ込めてどうする」

(魚剣)『お前の体を頂いて、この世の全ての人間を血祭りにあげる』

(淡堕)「何だと!」

 淡堕は頭に血が上り始めた。

(魚剣)『だが、お前の体を頂くには、やらなくてはいけない事がある』

(淡堕)「何だ」

(魚剣)『お前と勝負をする』

(淡堕)「は?」

 魚剣は何処からともなく剣を出した。

(魚剣)『この剣で戦わないとお前の体を手に入れる事が出来ないのだ』

(淡堕)「つまり、俺が勝てば、お前の計画も無くなるわけか」

(魚剣)『そうだ』

(淡堕)「…分かった、この勝負…受けてたつ!」

 すると、淡堕の前に剣が現れた。淡堕は剣を手に取り構えた。

(魚剣)『お前の名は…』

(淡堕)「濃怒 淡堕、此処の濃怒一族の子孫だ」

(魚剣)『そうか、では参る!』

 そして、二人の激しい戦いが始まった。そして、数時間以上の激戦は決着が着いた。魚剣が淡堕の持っていた剣を薙ぎ払った事で勝負は淡堕の負けで決着した。

(淡堕)「くそっ!」

(魚剣)『この剣がお前の体を一刀両断にすれば、我はお前の体を頂く事が出来る』

(淡堕)「ちょっと、待て!」

(魚剣)『何だ』

(淡堕)「俺を一刀両断にすれば俺の体が実際に二つに切られて死ぬ事になる。そうなればお前の目的は達成出来ない筈だ」

(魚剣)『そうではないのだよ』

(淡堕)「どう言う事だ?」

(魚剣)『この剣は霊気のみを切る事が出来る。つまり、お前の魂を切る事でお前の体には空きが出来るそこに我が入れば良いという事だ』

(淡堕)「くそっ!」

 魚剣は淡堕の魂を一刀両断にしようと刀を振り上げた。

(淡堕)(ここまでなのか)

 淡堕は諦めかけた瞬間…皆の事を思い出した。

(淡堕)(そうだ、皆が全員無事であそこに戻る事を約束したじゃないか)

 淡堕が約束を守るために最後の賭けに出た。

(魚剣)『その体、頂くぞ!』

(淡堕)(そう簡単に渡せるかよ!)

(魚剣)『何!』

 淡堕は魚剣の剣を《真剣白刃取り》で受け止めた。

(淡堕)「そう簡単に死ねるか」

(魚剣)『くっ!』

 すると、魚剣の刀を奪い淡堕は形勢逆転をした。

(魚剣)『我を殺せば、世界を助けた事になってお前は英雄だ』

(淡堕)「…」

(魚剣)『さあ、早く殺せ!』

 淡堕は刀を下ろした。

(魚剣)『どう言うつもりだ!』

(淡堕)「俺はお前を殺さない」

(魚剣)『何?』

(淡堕)「お前は俺の中で生きればいい」

(魚剣)『どうして、そんな事を?』

(淡堕)「俺はそもそも、此処に来たのは俺達の一族がやって来た事を調べて全てにけりをつける為にここに来ただがそれ以上にお前のような怨霊の集合体がいた。お前は憎しみに苦しめられて来た。俺達は一族のやって来た行いを知り、怒りを覚えただけど一族の血が流れている俺達に出来る事は一族の関連施設を見つけ出し、そこに巣くう狂霊達を助けて解決させる事にした。だから、俺はお前を殺せば約束を果せなくなる」

(魚剣)『だったら、我は、どうしたら』

「淡堕」「俺の体の中に入ればいい」

(魚剣)『それは、危険すぎるぞ』

(淡堕)「そうすれば、お前の苦しみと思いを引き継ぐ事が出来るし、お前がここに閉じこまれた、何百年もの間に変わった世界を見る事が出来るからな」

 淡堕は優しく温かい笑顔で魚剣に見せた。

(魚剣)『…分かった』

 魚剣は淡堕の中に入っていった。

(淡堕)「これで、俺とお前は一蓮托生だ」

(魚剣)『ふん』

 淡堕と魚剣は建物から出た。淡堕は門に向かった。その途中で魚剣はある事を言った。

(魚剣)『そういえば、お前と一緒に来ていた者って…』

(淡堕)「この廃集落の他の村の一族の子孫達だよ」

(魚剣)『一応、言っとくけど、他の村にも俺みたいな存在がいるが大丈夫なのか?』

(淡堕)「心配無いと思うぞ」

(魚剣)『どうして?』

(淡堕)「あいつらは、俺よりも強いからな…一人以外」

 そう話していると、急に地面からゾンビが現れた。

(淡堕)「こいつらは?」

(魚剣)『ここの警備隊だ。人が侵入すると警報も無く現れる』

(淡堕)「くそ、後もう少しで出入り口の門だっていうのに」

(魚剣)『大丈夫』

(淡堕)「え?」

(魚剣)『ちょっと、耳かせ!』

 すると、魚剣は淡堕にある事を伝えた。

(淡堕)「出来るのか?」

(魚剣)『ああ、大丈夫だ、信じろ』

(淡堕)「分かった」

 淡堕が念じると目の前に刀が現れた。

(淡堕)「出来た! でも、如何して?」

(魚剣)『我がお前の中にいる事でお前も我の力を引き出せる』

(淡堕)「とりあえず、目の前の奴ら片付けるとするか」

 淡堕は刀をもう一本だして、二刀流で警備隊達に突っ込んで行った。淡堕は無双の如く、全員を薙ぎ倒した。

(魚剣)『あの時のお前は全力では無かったのか?』

(淡堕)「いや、あれが俺の全力だよ」

(魚剣)『しかし、警備隊を全滅させるとは』

(淡堕)「正確に言うとあの時の俺は理性を保った状態でお前と戦った。でも今回は警備隊だから手加減無しで出来るから思いっきり戦闘狂のように戦っただけ」

(魚剣)『なるほどな』

(淡堕)「さてと、外に出るか」

(魚剣)『……』

 淡堕と魚剣は村の門を開けて、外に出た。

 哀世村――

 界男は村に入ると少し先も見えないほどの濃い霧が出ていた。が特に界男が気になったのは、線香の匂いが強く匂っていた。

(界男)「この匂い…線香か」

 界男は匂いが特に強い方に向かった。すると大きな建物が見えて来た。

(界男)「あれは、一体?」

 界男は建物に近づいた。すると、線香の匂いが強くなって来た。

(界男)「やっぱり、此処からだったか」

 界男は建物の中に入った。すると何所からか声が聞こえた。

 【こちら、悲劇事相談センターです。相談事の相談に来て下さり有難う御座います。受付にこちらの施設の見取り図と案内図が受付に御座います。御自由にお取り下さい。】

(界男)「これは、館内アナウンスか」

 界男はアナウンスの言っていた受付に向かった。すると、まだ見取り図と案内図が残っていた。

(界男)「見取り図を見とくか」

 見取り図を見ると1階の右奥に職員室があった。他に記録室は、1階と2階を繋ぐ階段の裏にあった。界男は、記録室に向かった。すると、途中で異様な気配がする部屋を見つけた。だが中には、入らずに先に進んだ。界男が無視した部屋から血走った大きな目が界男を見ていた。界男もその冷たい目線に気付き例の部屋に向かい扉を開けた。だが、誰もいなかった。

(界男)「出て来い! 何者だ!?」

 すると、界男に呼び掛けに答える様に《そいつ》は現れた。

(界男)「何者だ」

(???)『我が名は、蛙樴(あくい)

(界男)「蛙樴、お前の目的は何だ?」

(蛙樴)『この世の全ての人間達に幻覚を見せて、地獄を見せる。そして、永久に人間達を幻覚の世界に送らせる』

(界男)「そんなことは、絶対させないよ」

(蛙樴)『もう、計画は始まっている』

(界男)「どう言う事だ?」

(蛙樴)『此処に来た人間達に我の力で幻覚を見せている。もう、二百人を超える人間達がいる』

(界男)「そんな、ニュース聞いたことが無い」

(蛙樴)『当たり前だ。表向きには、植物状態と酷似しているし、昏睡状態にみせかける事も可能だ』

(界男)「つまり、表向きは他の症状になる。だが、その裏では標的者に幻覚を見せられている状態と言う訳か!?」

(蛙樴)『そうだ、お前も標的の一人だ。逃がしはしないぞ!』

(界男)「そう、簡単に捕まってたまるか!」

 すると、界男は動く事を止めてそのまま体の力を抜いた状態に変わった。

(蛙樴)『それで、どうやって、捕まらない気だ!?』

(界男)「…」

 蛙樴は界男に目掛けて腕を伸ばした。だがそれを簡単にかわした。

(蛙樴)『どういうことだ』

 蛙樴はその後も続けて、界男に当てるようにするが界男は全てをかわした。

(蛙樴)『くそ、どうなって、やがる』

 蛙樴は、理解が追い付かずにいた。すると、背後に界男が現れた。

(蛙樴)『何!』

(界男「軽いな」

 そう言うと蛙樴を体の中に取り込んだ。

(蛙樴)『くそ』

(界男「お前ぐらいなら暴走しようと俺の体の中で抑え込む事ができる」

(蛙樴)『そうか、だが俺は分身体だ。本体はまだ計画に着手している。お前が止められると思っているのか』

(界男「止めるよ、絶対に」

(蛙樴)『どうしてそこまで』

(界男「約束だから、あいつとの約束だから」

 界男はその時、庭にある墓を思い出していた。

(界男)「さてと、お前の本体の居場所を教えろ」

(蛙樴)『教えるか! 自分で見つけだせ!』

(界男)「…そうするさ」

 界男は部屋から出て、廊下を渡り、二階に通じる階段の裏側に記録室があった。

(界男)「いっぱいあるな」

 界男は全ての記録帳を調べたが手掛かりになりそうな物が無かった。

(界男)「此処には無いか」

 界男はもう一つの手掛かりになりそうな物があると思われる職員室に向かった。その途中に絵があった。

(界男)「これは…」

 その絵には一人の男性と【パパだいすき】と書かれていた。

(界男)「この絵、もしかして、被害者の子が描いた絵か」

 その絵の男性の顔は笑顔に描かれていたがその男性は亡くなっていると界男は考えた。愛する子供と永遠の愛を誓った妻を残して、あの世に逝ったと…。

(蛙樴)『でも、この絵も相当古いから家族は全員今頃、あの世で幸せに暮らしているだろうな』

(界男)「…そういう問題じゃない!」

 蛙樴の分身体と少し、口論したが界男は職員室に向かった。界男は職員室に着いた。

(界男)「ここなら何か」

 界男は此処に来て、一つの違和感があったがそれが何なのか分かっていなかった。界男は職員室にある、全ての書物を調べあげたが何も出なかった。

(界男)「おかしい、こんなに大きな施設なのに重要な物が何も無いのは可笑し過ぎる! 他にそれらしい場所は…。ちょっと待てよ、此処に来てから何か違和感があったけど、やっと分かった。此処には、何故、職員室があるのに職長室が無いのは可笑しい!」

 界男が見取り図を見ても、職長室が無かった。案内図の方も、見たがこっちも無かった。

(界男)「これは、可笑し過ぎる」

 界男がもう一度、見たがやはり無かった。そこで、もう一度、職員室の物を全て調べた。すると、壁の方にある棚に違和感がある事に界男が気付いた。

(界男)「この棚、何かが可笑しい…」

 界男がその棚を調べたら壁と棚に隙間があった事に気付いた。界男が隙間を見るとその間に書物があった。

(界男)「これ、取れるか」

 界男は壁と棚の隙間にある書物に腕を突っ込むと何とか書物に手が届いた。

(界男)「よし、取れた」

 界男は書物を隙間から出した。そして、書物の中身を読むと一か所気になる記述が書かれていた。

(界男)「此処に行けば分かるかもしれない」

 界男は建物を一旦出て、書物に書かれていた場所に向かった。

(界男)「確かにこんなに近くなら職長室が無くても合点がいく」

 界男はその場所に着いた。

(界男)「此処なら分かる筈だ」

 界男は建物に入っていった。界男が入って行ったのは村長の家だった。界男は村長宅の中を調べた。界男を子供立ち入り禁止と書かれていた扉を見つけた。

(界男「子供立ち入り禁止ねぇ…此処なら詳しい村の地図があるかも」

 界男は扉を開けて中に入った。すると、大きな書棚が沢山置かれていた。

(界男)「ビンゴだな」

 界男は書棚から怪しい書物を虱潰しに探し出した。その中で特に気になったのが【出産記録簿】と書かれていた書物だった。界男は、書物の内容を見た。

 (八月一三日 今回の性別は、雄だった。

  十月五日 今回の性別は雌だった。本当に憎らしい、あの場所に送ろう…)

 界男は、この内容が気になったが今は、蛙樴の本体の居場所を突き止めるべく行動を再開した。すると、ある書物の間から何か折られた紙が落ちた。それを広げるとそれは、詳細に村の事が描かれていた地図だった。地図を見て、気になる場所があった。

(界男)「この場所は、もしかして…」

 界男が見つけた場所の名は【女子処分場】と書かれていた。界男は【女子処分場】に向かった。向かう途中で、大きな門を見つけた。

(界男)「可笑しい、この先にある筈なのに」

 界男は、更に可笑しな事に気付いた。

(界男)「可笑しいな、あの悲劇事相談センターに向かう時に此処を通った筈なのにこんな門は見た事無いし、何だろう、さっきから後ろから冷たい空気を感じる」

界男は後ろから感じる冷たい空気が気になって、後ろを振り向くとそこは、墓地になっていた。

(界男)「此処に墓地は無かったはずだが…」

 界男は墓地を見ると墓石を見ると後ろ側がうっすらと見えていた。

(界男)「もしかして、これ全て幻影…」

 界男は墓地を見て、これが全て幻影と察したが墓地の方を無視して、門を開ける事に頭を使っていた。

(界男)「にしても、この門を開けるには、必ずスイッチがある筈だし、これだけは幻影じゃないからな他に道は無いし、どうやって、この門を開けようかね…」

 界男は必死に門を開ける方法を考えた。すると、界男は、門を至近距離で見たがヒントらしき物が無かった。

(界男)「どうしたら、良いものかね…」

 界男が門に手を付けて考えていた。すると急に門から音がした。

(界男)「もしかして、これって指紋セキュリティなのか?…どんだけ、天才科学者がいたの」

 界男が手を付けて数十秒後に門の音が止んだ。

(界男)「音が止まった?」

門は開かなかった。

(界男)「開かねえ」

 界男は考えていたが埒が明かない為に界男は《強硬手段》に出た。

(界男)「…仕方ない、あれをやるか」

 界男は門に蹴りを入れた。五発蹴ると門の扉を抉じ開けた。

(界男)「…これで先に進める」

(蛙樴)『どんだけ、力あるの?』

(界男)「ああ、家には、四箇所ぐらい俺の蹴りで壊した場所があるからね」

(蛙樴)『…』

(界男)「ああ、俺の方は、少ない方で知り合いには、十箇所を超える程壊している恐怖の人物がいるけどね」

 界男の頭の中に日太の顔を思い浮んでいた。

(界男)「さてと、先に進むか」

 界男は先に進んだ。界男は歩きながら携帯電話を見たが圏外になっていた。

(界男)「やっぱり、圏外かよ」

(蛙樴)『怖くなったのか?』

(界男)「ちげーよ!」

 界男は蛙樴の分身体と話していたら目的地に着いた。

(界男)「此処か」

 界男の目の前に大きな建物でコンクリート製なのか木製では無いようだ。更にこの建物には、扉が無く一番上に開き窓が四方の一面ずつに三個ずつ有った。

(界男)「入るには、あそこにある開き窓からしか、入れないようだけど、風化のせいか階段らしき址は在るけどこれじゃ開き窓からは、無理そうだな…」

 界男は他に建物の中に入る方法が無いか模索していた。

(界男)「コンクリートかは、分からないが俺の蹴りなら何とかなるかも」

 界男は自分の蹴りを壁に当てて大きな穴を開けようとする為に風化で強度がかなり落ちた場所を探した。すると、一箇所だけ罅が入った場所を見つけた。

(界男)「此処なら大丈夫だろ」

 界男は罅が入った壁に勢いよく蹴りを壁に当てた。すると、少しだが壁に小さい穴が入った。

(界男)「あと一回で十分だろ」

 界男は更に全ての力を蹴りに入れた。すると、壁に予定より大きな穴が開いた。

(界男)「予想外に開いたな」

(蛙樴)『ちょっと、天井まで辿り着きそうだぞ』

(界男)「そうだな」

 界男は中に入った。すると、霧が出て来た。

(界男)「これは…」

(???)『絶対に殺す』

 後ろから野太い女性なのか男性の声か分からない声が聴こえた。界男は、後ろに振り向いた。

(界男)「お前か、蛙樴の本体は」

(蛙樴)『そうだ、我の名は蛙樴【あくい】此処に留まっている女性達四百三十一人の怨念が集まった集合体だ』

(界男)「そうか…」

(蛙樴)『お前の中に我の分身体がいるな』

(界男)「…」

(蛙樴)『我の計画はお前を乗っ取れば計画は円滑に進むのだ!』

(界男)「絶対に止める!」

(蛙樴)『我をどうやってお前は止める』

(界男)「必ず、お前を殺さずに止める!」

(蛙樴)『やってみろ!』

 界男と蛙樴本体は、臨戦態勢に入った。

(蛙樴)『まずは、場所を整えよう』

(界男)「どうぞ、好き勝手にやれ!」

(蛙樴)『そうですか』

 蛙樴と界男は、幻覚の世界に入った。すると、界男の周囲からゾンビの集団が這い出て来た。

(界男)「なるほどね」

(蛙樴)『我を…止めてみろ!』

 ゾンビの集団は界男に攻撃し始めた。だが、界男は全てを棍棒で薙ぎ払った。

(蛙樴)『何故?棍棒を持っている』

(界男)「簡単さ、此処は幻覚の世界だ。つまり、俺も想像した物を出す事も出来るだろ」

 蛙樴もそれに対応する為かゾンビの姿が剣士で鎧まで着ていた。

(界男)「そうきたか」

(蛙樴)『これなら、棍棒も効かないぞ!』

 界男は棍棒をバズーカに変えた。そして、バズーカを片手で持ち、もう片方には、ロープを持っていた。

(蛙樴)『ロープとバズーカだと』

(界男)「この勝負も俺の勝ちだ」

 そう言うと界男は一気にバズーカを撃った。だが、蛙樴も負けず劣らずと界男を狙ったが界男はロープを開き窓に向けて投げた。そうして、界男は蛙樴の攻撃をターザンの様に使い全ての攻撃をかわしながら剣士型のゾンビにバズーカを撃ち込んだ。だが、最後の剣士型ゾンビによって、ロープが切れて地面に叩き衝かれそうだったが界男は上手く着地した。だが、最後のゾンビが目の前にいた。が界男は、全ての攻撃をかわして、すぐさま相手と同じ剣を出した。そして、お互いの剣がぶつかった瞬間に界男は、左手に棍棒を出した。そして、界男は、棍棒を力一杯に剣士型ゾンビにぶつけた。

(界男)「これで終りだ!」

(蛙樴)『まだまだ、此処からだ!』

(界男)「はぁ…はぁ…」

 界男の顔に疲労が現れ始めた。だが蛙樴も疲労を隠しきれないでいた。

(蛙樴)『はぁ…はぁ…』

(界男)(少し、様子が可笑しいな)

 界男は蛙樴にあった時と今の感じが何か変わっている気がした。ようく蛙樴を見ると蛙樴の体が消え掛けている事に界男は気付いた。

(界男)「お前、若しかして…」

(蛙樴)『何だ…』

(界男)「いや、何でも無い」

(蛙樴)『そうか』

(界男)(蛙樴が消えれば、被害者達は全員が意識を取り戻す筈だが、そうすれば、また蛙樴が蘇る事で計画も再び進行してしまう。ならば取るべき行動は一つだな。蛙樴を俺の体内に入れて、改心させる他に手は無い!)

界男は一か八かの大勝負に出た。

(界男)「お前はこの計画に命を賭けて取り組んでいるのか?」

(蛙樴)『当たり前だ』

(界男)「計画を前に死んでもいいって訳か」

(蛙樴)『どう言う事だ』

(界男)「気付いて無いのか。だったら教えてやるよ、お前は、俺との戦いの最中に消えるって事だ」

(蛙樴)『意味が分からん』

(界男)「お前、自分の姿をちゃんと見てみろ」

 蛙樴は界男の言う通りに自分の姿を見た。

(蛙樴)『どう言う事だ。体が薄くなっている』

(界男)「お前の力はそもそも自身の体を形成している物質が媒体となり引き起こす能力だ。つまり、お前が此処で力を遣い続ければお前は確実に計画を実行せずに消える。永遠に…」

(蛙樴)『永遠に…』

 界男は嘘を交えて蛙樴が躊躇するのを願いながら話した。界男の策略は上手くいった。

(界男)「お前が消えたくなければ俺の中に入り、俺が死ぬまで、一生を共に生きればお前は生きて妖怪として生きていけるだろう」

(蛙樴)『そんな事信じられるかよ』

(界男)「俺は昔に一度だけ悪霊に憑依された事が有る。でも、俺は心の中で悪霊の憎しみ・悲しみ・苦しみ全てを感じた。俺には、お前もその時、憑いた悪霊と同じ気持ちでいるはずだ。ずっと、此処に閉じこまれて恐怖を感じ、更に閉じこまれて飢えが必ず来る苦しみ、死ぬ寸前に来る外界への怒り憎む気持ちをお前から感じる。お前は、今も苦しんでいる。俺も一族のやって来た行為に絶望し憎んだ。だけど俺はこの村にある心も此処に来るまで感じていた。それは、平穏と安全だ。だが此処は、不浄と負の感情が全て集まったのがこの場所だ。だけど、俺には村の方がもっと不幸の場所だったと感じた。それにお前の気持ちは同情に値する、だけど、お前の行動は世界中を不幸に陥れる計画だ。お前は、自分と同じように苦しめば好いと思っている。だけど、それは、お前の憎しみや苦しさは、改善出来ない。それにお前自身が消えたら此処で遭った出来事を知る物は永久に居なくなるかもしれない。そんな事をすればこの村で起きた事を誰一人も知らずに此処は潰されるかもしれない、それにこの村で長生きした者達の思い通りになる。それを阻止しなきゃ行けない、だから俺の体に入ればお前も無事だし、この村の出来事だって忘れずに話して行けるだろう」

(蛙樴)『…つまり、お前の体に我が入れば我の目的も成就するって事か…』

(界男)「そうだ」

(蛙樴)『分かった』

 蛙樴は界男の言いている事を理解した。そして、蛙樴は界男の体の中に入って行った。

(界男)「宜しく、蛙樴」

(蛙樴)『あ、ああ』

 界男と蛙樴は建物から出た。そして、村の唯一の出入り口である門に向かった。

(界男)「この村でやる事は終えた。後は、場所を特定して、現場に向かうだけか」

(蛙樴)『何の事だ?』

 界男と蛙樴は何事も無く村の門まで来た。

(界男)「一つお前に質問したい事がある」

(蛙樴)『何だ?』

(界男)「此処から先は、お前にとっては未知の世界だ。お前は一歩踏み出す勇気が有るのか?」

(蛙樴)『…当然だ』

(界男)「…分かった」

 界男と蛙樴は村の門から出た。

 喜未村――

 完素が村に入ると大きな機械音がした。

(完素)「この音…機械音か奥の方から聴こえる。向かってみるか」

 完素は村の奥に向かっている途中の家々が今の技術より遥かに発達した技術の建築物が多くまるで近未来の世界に来た感じが完素は感じていた。

(完素)「音は此の先から聴こえる。けど、家は見た事の無いセンサーや見た事の無い玄関が一杯あるな」

 完素は村の建物を見ながら先に進んだ。そして、完素は機械音の発生源である建物に辿り着いた。建物の名前は【喜未研究所】と入口らしき所の上に書かれていた。

(完素)「音はこの中から聴こえる…」

 完素は建物に入って行った。すると、中の電球が点いた。

(完素)「まだ、電気が通っているのか? …しかも、この明るさは、LEDかよ」

 完素は中を探索していると登録室と書かれていた部屋を見つけた。完素は中に入るとそこにはファイルが見て、ざっと十万以上のファイルが有った。

(完素)「結構あるな」

 完素は持って来たリュックに此処の全てのファイルをリュックに入れ始めた。すると、気になるファイルを見つけた。それは、非人道的な実験をやっていた事を書き記した物が有った。書類の中には『喜未村で起こった出来事は全て村長宅に有る』と書かれていた。更にファイルの最後には喜未村の地図が挟まれていた。村長宅はこの研究施設の隣にある事が分かった。完素は村長宅に向かう為に出入り口に向かった。その途中で完素の視界ギリギリを人らしき影が横切った。完素は気になったが完素は気の精だと思い無視して出入り口に再度向かった。

(完素)(先の人影は一体 …気になるけど、今は、情報収集が出来る村長の家に行かない)

 完素は研究施設跡地の出入り口から外に出て、村長宅に向かった。その道中に何かの破片が落ちていた。

(完素)「これは…檻の痕か? でも、材質は何だ?」

 完素は檻らしき破片に触ろうと手を破片に近付けた。しかし、手が檻の破片をすり抜けた。

(完素)「どう言う事だ?」

 完素は檻の破片に触れる事が出来ないのが気になった。

(完素)「この檻はこの世の者では無い者を捕える為に作られたのか?」

 完素は推測を立てた。だが、完素は深く追究せずに今、行くべき場所である村長宅に向かった。

数分後――

完素は村長宅に着いた。見た目は木造建築だった。

(完素)「此処に村の全容と真実が有る筈!」

 完素は村長宅の中に入った。中はハイテク技術で何故かリビングにはTVが配置されていてキッチンにはガスコンロ・給湯・電子レンジ・冷蔵庫が配置されていた。ここ最近に置かれた物では無く百年以上前から此処に存在していた事が窺えた。更にエアコンまで配置されていた。

 完素は村の事が書かれている書物が在りそうな場所を探したが見つからない。

(完素)「建物の中は全て探した筈なのにどうしてない…待てよ、この建物がこんなにハイテクなら何所かに隠し部屋の一つや二つ在る筈だ」

 完素は隠し部屋が存在するか建物の中をくまなく探した。すると、TYが置かれていた場所の裏側に何かのスイッチが在った。

(完素)「もしかして、これが…」

 完素はスイッチを押した。すると、リビングの床が階段状に変わり、地下と二階に向かえる様になった。

(完素)「この家には二階と地下が在ったのか」

 完素はまず階段を上った。すると、二階には本棚が沢山並んでいた。

(完素)「ビンゴだな」

 完素は書棚の書物を調べるとこの村と他の村が今までの外で経営していた会社名が全て記された書物を保管していた場所だった。

(完素)「良い情報は在ったがこの村についての書物は此処には無いか」

 完素は全ての書物を持って来たリュックに入れた。

 完素は階段を下りて地下に向かった。地価も本棚だらけだった。

(完素)「こっちは何が記載されているのやら」

 完素が調べてみるとこの村が今まで行って来た事を記された書物が多かった。その中で気になる書物が在った。その名は【雌雄誕生記録】と書かれていた。

(完素)「これは何だ?」

 完素は、【雌雄誕生記録】の内容を読んだ。

 (三月二日 今日、産まれたのは元気な雌が誕生した。この子は処分場に送る。

  六月十日 今日、産まれたのは元気な雄だった。

  九月六日 今日、産まれたのは双子の雌雄が誕生した。雌の方は処分場に送り、雄の方は双子で産まれたのでは無く一匹として産まれた事にした。…)

(完素)「此処に書かれている事って…淡堕が言っていた事と合致する」

 完素は前に淡堕が言っていた言葉を思い出した。

 完素は更に書棚を調べていると本の奥に何か大きな紙が在った。

(完素)「何だ?」

 完素は大きな紙を手に取った。大きな紙は喜未村の地図だった。

(完素)「これは地図か…」

 完素は地図を見た。その中には雌雄誕生記録に書かれていた【処分場】と思われる場所が載っていた。

(完素)「此処か」

 完素が見た地図に描かれていた場所の名は【女子処分場】と書かれていた。

(完素)「此処には絶対に向わないと行けない場所だ。それに村の全容を知って損は…するかもしれないけど絶対に行かないと何も解決はしないな」

 完素は地下の書物も全て持って来たリュックに入れた。

(完素)「これで全てか…以外に少ないな…」

 完素のリュックにはまだ入る余裕があった。

(完素)「さてと、次は例の建物に向かうか…」

 完素は【女子処分場】に向かった。その道中に霧が出て来た。そして、完素の前に色んな破片が散らばっていた。

(完素)「急に霧が出て来たと思えば周りには、破片ばかりだな」

 完素は周りの破片が個々に違う事に気付いた。

(完素)「これは刃物系であっちは何かの鳥類の嘴の骨の残骸だ」

 完素が周りの破片の中で特に気になっていたのが足元にあった破片。

(完素)「この破片から周りにある破片の力を吸収している《気》を感じるけど気のせいか…」

 完素がそう思っているとまた霧が発生した。

(完素)「またか」

 霧が晴れると周りにあった筈の破片が全て消えていた。

(完素)「どう言う事だ?」

 完素は少しパニックになったが完素は冷静に今、自分がやるべき事を思い出す。

(完素)「今は【女子処分場】に行かないと」

 完素は【女子処分場】に再度、向かった。数分後、完素は【女子処分場】に着いた。

(完素)「此処が【女子処分場】か…」

 女子処分場には大きな扉が一つあった。完素は其処から建物に入った。入ると扉がひとりでに閉った。

(完素)「何だ!?」

 完素は扉を開けようとしたが何故か開かなかった。

(完素)「くそっ、開かない何でだ!?」

 完素は抉じ開け様とするが開かない。すると、背後から声が聴こえた。

(???)『…ノ…ロ…ッ…テ…ヤ…ル…』

 完素は声が聴こえた方向である後ろを向くと其処にはこの世の者では無い者がいた。

(完素)「お前は一体何者だ!?」

(???)『我の名は櫳巣おりす喜未村の怨念四九三人の集合体だ』

 櫳巣はいきなり完素を取囲む様に櫳が現れた。

(完素)「これは、一体?」

 完素は櫳に閉じ込められた。

(櫳巣)『我は日本中に居る人間達を不幸のどん底に送ってやる!』

(完素)「どうやってだ!?」

(櫳巣)『我は実際に手を出す気は無い』

(完素)「何?」

(櫳巣)『我がやるのは人間達の心と内臓そして実態に大きな櫳を造る。心には《人を殺してはいけない》を《人を殺しても良い》に変える。次に内臓には《エネルギーになる物は全てが櫳で動きを封じ空腹の状態に陥れさせる》 実態には実際に動きが鈍くなる程度の櫳を造り前述の二つが限界に達したら三つの内、内臓と実態の二つを外して、人間達が無差別に喰い殺し我はそれを傍観しているだけですみ人間達は自ら滅ぶという事だ!』

(完素)「絶対にそんな計画は阻止してやる」

(櫳巣)『お前は我の体となる為にそうやって櫳で監禁している。お前が我の計画を阻止したいのならまずはその櫳から脱出しないと我の計画は阻止できないぞ』

(完素)「なら、まずは櫳から脱出して見せる」

 完素は勢いよく櫳に体当りしたがグニャっと曲がって完素は反動で後ろに吹き飛んだ。

(櫳巣)『この櫳はそう簡単には壊せないぞ』

 完素は櫳が柔軟である事に気付き次に取った行動は櫳を素手でゆっくりと曲げて脱出する作戦に出るが曲げようとすると何故かさっきとは異なり硬く曲がる気配が無かった。

(完素)「如何なってる!?」

(櫳巣)『この櫳は勢いよく体当りとかをすると柔軟して、手で触ったりすると硬くなる特質の櫳だ。絶対にこの櫳から脱出は無理だ』

(完素)「じゃあ、この櫳は絶対に壊せない櫳って事か」

(櫳巣)『そう言う事だ』

 櫳はどんな事をしても壊せない事を知り完素は絶望した。

(完素)「…一つ訊ねるがさっきお前は俺の体に為ると言っていたがそれはどう言う事だ」

(櫳巣)『気になるか?』

(完素)「気になるに決まっている」

(櫳巣)『分かった説明してやろう』

 完素の体を櫳巣がどうやって、手に入れるのかを説明を始めた。

(櫳巣)『お前の体は現在その櫳の中に入っているお前はそこで体力と気力の両方を限界まで削り意識が朦朧し始めたらお前の体を頂くそういう計画だ』

(完素)「…成程ね」

 完素は櫳巣の計画を聴いて、少し笑みを浮かべた後に驚くべき行動に出た。完素は無駄な事を知りながらも櫳に連続に体当りを繰り返した。

(櫳巣)『自棄になったか』

 櫳巣は笑みを浮かべた。

 数時間後まで完素は何度も櫳に体当りを繰り返していたが疲労が見え始めた。

(櫳巣)『そろそろ、準備を始めるか』

 櫳巣は完素の体内に入る準備を始めた。

(完素)(…もう少しだ)

 完素には何か作戦を実行に移していた。

 数十分後――

完素は体力気力共に力尽き様としていた。

(完素)「…ハァ…ハァ…もう限界だ」

 完素は倒れそうだった。

(櫳巣)『意外と早く尽きようだな…もう、我の計画を阻止する事は無理の様だな』

(完素)「…そうだな」

 櫳巣は櫳を消して完素の体内に入った。

 此処は完素の体内――

(櫳巣)『これで、我の計画は成就出来る』

 櫳巣が大笑いしていると背後から気配がした。櫳巣は背後を見ると遠くから何かが近付こうとしていた。

(櫳巣)『何者だ!?』

(完素)「俺だよ」

 其処に居たのは完素だった。

(櫳巣)『馬鹿な! 我が入ったのと同時にお前の精神は我が櫳に幽閉した筈』

(完素)「そんな物は簡単に壊したよ」

(櫳巣)『どうやって!?』

(完素)「簡単だ、お前は俺のハッタリに引っ掛ったのさ。俺は確かに体力気力ともに尽きていたがお前の計画を阻止するという信念は折れた訳じゃない、そもそも俺がどうして、無謀な行動をしたかだがあれはお前を俺の体内に入れる為の演技だ」

(櫳巣)『つまり、我はお前の罠にまんまと引っ掛った訳か』

(完素)「そうだ」

(櫳巣)『まだ、お前を櫳に入れればこの体は我の物だ』

 すると、櫳巣は完素に再度、櫳に閉じ込めた。

(完素)「無駄だって」

 完素は櫳を消した。

(櫳巣)『消えた!…どうして…』

(完素)「念波で櫳を瞬間転送したにすぎない」

 櫳巣は再度、櫳を出そうとするが何故かで無い。

(櫳巣)『どうして、櫳が出ない?』

(完素)「当然出るわけ無い」

(櫳巣)『どう言う事だ!?』

(完素)「周りを見てみろ!」

(櫳巣)『これは!』

 櫳巣が周り見渡すと櫳巣は櫳の中に閉じ込められていた。

(櫳巣)『どうして、我が櫳に』

(完素)「俺が飛ばしたのは櫳だけではその周りにあった空間自体も飛ばした。つまり、お前の周りにある空間自体は俺がいた場所にあった空間だ」

(櫳巣)『まさか、我が櫳に閉じ込められるとは』

 櫳巣の表情が懐かしさと苦しさと怒りの表情を一瞬だけ見せた。完素は表情の変わりを見逃さなかった。

(完素)「…」

(櫳巣)『絶対に計画を達成させなくては』

 櫳巣は目に涙を流しながら言った。

(完素)「お前のやり方だとお前…いや村で無残に亡くなった者の願いは達成なんて出来やしない!」

(櫳巣)『何!?』

(完素)「お前のやっている事は村の悪生存者と同じやり方だ」

(櫳巣)『【目には目を】だ』

(完素)「確かにそうだ。でも、お前のやり方だと証明は愚かお前らの存在は認識してはくれないだろう」

(櫳巣))『じゃあ、我はどうしたらいいのだ』

(完素)「それは、お前が決める事だ。だが俺が進めるのは俺の体に俺と共に一緒に暮して行けばお前の証明にもなるし存在も必ず分かってくれる」

(櫳巣)『…それで、あいつらの証明になるのか?』

(完素)「当たり前だ。どんなに苦しい事実だって人間はちゃんと受け止めなきゃいけない責務がある!」

(櫳巣)『…分かった』

 櫳巣は自分を捕えている櫳を消した。

(完素)「宜しく、櫳巣」

(櫳巣)『宜しく』

 櫳巣は少し恥ずかしい様子だった。

 そして、現実世界に戻った完素は建物を出た。

(完素)「そう言えば、お前ってこの村から出た事ってあるのか?」

(櫳巣)『いや、全く無い』

(完素)「…そうか」

 完素はリュックを持って外に出た。

(櫳巣)『その荷物は?』

(完素)「この村に関わる書物と他の五村とこの村に関わる大事な書物だよ」

(櫳巣)『それをどうする?』

(完素)「…俺は此処に来る前にある女の子にあった。その子は酷い虐めにあっていた。親には見捨てられた。けど、その子の兄とその子が大好きな男の子だけは見捨てなかった。でも、二人とも自殺に見せかけて殺された。女の子もその後を追って自殺をした。そして、俺は友達四人と一緒にその子が出ると噂の廃校に行った。案の定、女の子の幽霊と遭遇した。そして、俺の腹に刃物が刺さると意識を失った。それから、目覚めるまでは友達の一人がもう一人の友達に連絡を取った。それから、そいつは、連絡して来る友達が来るまでずっと隠れていた。連絡で来た友達が俺を助けてくれた。それも、四人全員の意識を一人で救いだした。それから、ずっと隠れていた友達と一緒に女の子の気持ちを助けた。俺も役に立ちたいと思ったが俺には何も出来なかった。でも、俺がこういう時に唯一出来ることと言えば知っている情報を皆に教える事しか出来ない。此処に来て、俺の情報網と此処にある情報を照らし合わせて、俺達があった女の子の霊と同様に苦しんでいる霊がいるもなら俺達が救ってやらないと行けない!」

(櫳巣)『我が言うのも可笑しいがそう言うのは霊媒師に頼めばいいのでは』

(完素)「確かにそうだ。でも、俺は俺の一族の行いは一族の末裔が背負うべき物だ。俺は俺達の手で救わないと本当の意味で救われた事にはならないと考えている」

(櫳巣)『我はお前の意見には同感する』

 そんなこんなで完素と櫳巣は村の門に着いた。

(完素)「お前にとって初めての外界だ。覚悟は出来ているな」

(櫳巣)『当然だ』

 完素は門を開けて外に出た。

 鮫熊村――

 山海は門を開けて村に入った。すると、山海の鼻に異臭がする。

(山海)「これは、きつい臭いだな」

 山海は臭いがする方に向かった。其処は村の中心地だった。

(山海)「此処は、一体?」

 山海は建物の中に入った。すると、中には加工途中の肉が散ばっていて其処から異臭がしていた。

(山海)「肉の腐った臭いか」

 山海は建物の中を調べた。すると、頑丈な扉を見つけた。

(山海)「この扉…結構、重そうだな」

 山海は扉を力一杯に引くと扉が開いた。

(山海)「簡単に開いたな」

 すると、目の前にもう一つの扉があった。

(山海)「まだ、あるのか」

 山海は扉を開けようとすると扉に張り紙が貼ってあった。

(山海)「これは…」

 (この扉を開ける前に開けた扉を閉めるべし)

(山海)「なるほどね」

 山海は後ろの扉を閉めた。それから、山海は目の前の扉を開けた。すると、中には加工終了の肉が沢山置いてあった。

(山海)「此処の肉は匂いも良いし、状態はもっと、良く見える」

 山海は肉を見ていたが目の前はガラスで覆われていた。山海は横に広がる長い廊下を歩いた。少し歩くと目の前に部屋の扉があった。

(山海)「この扉はやけに簡易的だな」

 山海は扉を開けると其処には大きな機器があった。

(山海)「これは、一体?」

 山海は機器の釦を適当に押していると不意に機器の起動釦を押してしまった。

(山海)「やっべ!」

 機器が動き出すと目の前にある硝子の奥に肉の置かれている場所があったらしくその場所に明りが点いた。

(山海)「此処は肉の保管とかを務める場所か」

 機器が完全に起動して、山海は此処に関するデータが無いか調べてみた。

(山海)「やっぱり、無いか」

 山海は根気よく調べてみると【重要ファイル】と書かれているファイルを見つけた。

(山海)「重要ファイルか…見てみるか」

 山海はファイルの内容を見ると肉が何の肉で、何処で手に入れたのかが書かれていた。

 (六月十二日 祟娘山周辺に生息している猪の肉(十個)+東京に生息している狸の肉(九個)収穫=合計十九個の収穫

   九月五日 祟娘山周辺に生息している烏の肉(六個)+東京に生息している猫の肉(九匹)+東京湾に生息している魚(八百八十個)収穫=合計八百十五個の収穫…)

(山海)「まあ、特にこれと言った情報は無いか…」

 山海はもう少し、ファイルの内容を見ていると気になる文章を見つけた。

(山海)「これは…」

 (三月一日 赤血の肉(十四個)…)

(山海)「赤血の肉?」

 山海は《赤血の肉》と言うのが気になった。それから、ファイルを見ると地図と書かれている所があった。その場所をクリックすると此処【鮫熊精肉加工場】ともう一つ建物へのルートが描かれていた。

(山海)「この場所ともう一つの建物のルートはこの建物から行けそうだな」

山海はルート携帯電話のカメラで撮影した。

(山海)「もう一つの建物には何かヒントがあれば良いが…」

 山海はもう一つの建物に行く為。この部屋に来た時の扉ではなく反対側の扉を開けた。其処から二百米進むと左側に扉が見えた。その扉を山海は開けた。すると、階段が目の前にあった。

(山海)「この階段を上ればもう一つの建物に着く筈」

 山海は階段を上った。最上階に着くと大きな扉が一つあった。

(山海)「予想通り」

 山海は扉を開けた。其処には大きな機器が置いてあった。

(山海)「此処もか!」

 機器は既に起動していた。

(山海)「若しかして、あっちの建物の機器が起動したのと同時にこっちも起動したのか」

 山海は起動している機器の画面を見ると【秘密最重要ファイル】と書かれているファイルを見つけた。

(山海)「このファイルあっちで見たのと違うのか?」

 山海はファイルを開くと狩猟に必要な道具を記録していたのと同時に気になる文面を見つけた。

 (…この記録を村長に渡す事…)

(山海)「この文面を見ると村長宅に情報が全て集っている筈…」

 山海はもう少しファイルを調べると村長宅に向かう為の道筋が描かれていた。

(山海)「村長宅に行くには…」

 山海は画面に描かれている事を自分のメモ帳にメモを書いた。

(山海)「…これでOKと」

 山海は一旦、建物から出る為に此処に来た時に開けた扉とは逆方向にある扉を開けた。すると、目の前に二つの扉があった。山海は山海から見て右側の扉に入った。すると、地下へ向かう階段があった。山海は階段を下りた。すると、広い場所に出た。

(山海)「此処は?」

 山海は辺りを見渡すと大きな湖が奥にあった。

(山海)「湖か …流石に歩き続けたから休憩でも取るか」

 山海は湖の水を手で掬い上げて飲んだ。

(山海)「しゃっぱ!」

 山海が飲んだ湖の水は海水の様な味がした。

(山海)「この水…もしかして」

 山海は服を脱ぎ湖に潜った。すると、水中には魚が泳いでいた。

(山海)(まさか…)

 山海が辺りを見渡すと大きな穴が出来ていて、其処から魚が出入りしている様子も窺える。その時、穴から鮫が現れた。

(山海)(鮫!)

 山海はゆっくりと鮫に気付かれない様に岸まで泳いだ。

(山海)(後、少し…)

 山海は鮫に気付かれずに岸に辿り着いた。

(山海)「ふぅ…何とか気付かれずに岸に着いたが何で海水の湖が此処に?」

 山海は岸に上がり何故ここに海水の湖があるのか考えた。

(山海)「そういえば…」

 山海は村に着いて最初に入った建物である【鮫熊精肉加工場】で読んだ【重要ファイル】に書かれていた所に【魚】と書かれていた箇所があった事を山海は思い出した。

(山海)「もしかして、此処が海洋生物の狩漁場か」

 山海が辺りを見渡すと狩漁用の道具が数カ所に落ちていた。

(山海)「やっぱり、此処は一族の狩漁場になっている訳か」

 山海は、此処を後にして三つの扉があった場所に戻った。山海はまだ明けてない左側の扉を開けた。

(山海)「さてと、改めて村長宅に向かうとするか」

 山海は扉の先に進むと狩猟用の道具を保管室と思われる場所に出た。

(山海)「やっぱり、俺の一族は狩猟に関わる仕事に就いていたのか…」

 山海は亡き祖父の事を思い出した。

(山海)(祖父ちゃん…格好良いよ、やっぱ)

 山海は涙を少し流した。

(山海)「感傷に浸っている場合じゃなかった!」

 山海は涙を腕で拭い、保管室から出ると外に出た。

(山海)「外か…確か村長宅は左か」

 山海はメモ帳を見て左に進んだ。すると一,二分で村長宅に着いた。

(山海)「此処が…村長宅」

 山海は驚愕してメモ帳を落とした。

(山海)「これが…」

 村長宅は動物の皮が全体に覆っている。

(山海)(犬の皮や猫の皮もっと言えば烏の皮膚と羽までもつけているし)

 山海は村長宅に入った。

(山海)「さてと、何か手掛りが見付ればいいが」

 山海は中に入ると異臭はしないが良い匂いがした。

(山海)「匂いは良いが見た目は流石に村長宅と言うより怪しい館だよな…」

 山海は一つの部屋に目を付けた。

(山海)「この部屋は書斎か」

 山海は書斎と思われる部屋に入った。

(山海)「本が多いな」

 山海は書斎の書棚を見ていた。すると、山海はある事を思った。

(山海)「こういう書棚って、何所かを動かすと本棚が動いて隠し部屋までの隠し通路が現れるのがドラマとかではよくあるが流石に在る筈ないよな」

 山海は、書棚の上から三番目の一番右にある本を取ろうとすると取れなかった。

(山海)「…まさかな」

 山海はそれを奥に押すと書棚が動いて地下に下りる為の隠し階段が現れた。

(山海)「マジであったよ!」

 山海は隠し階段を下りて行った。すると、大きな部屋に出た。

(山海)「…此処は書物室だな」

 此処の書物は二百冊あった。

(山海)「結構、あるな。探すにしても何か区別している方法がある筈。まずは、それを探すか…」

 山海は書棚の一番両端と段ごとなど、どうやって区別しているかを調べた。数分後、区別の仕方が分かった。

(山海)「成程ね、年代毎に分けてあるのか…こりゃあ、全部読むのに時間が掛かりそうだ…さて、どうするか…」

 山海は此処で読むのを諦めて家で読む事にして持って来たリュックに本を二百冊入れる事にした。

(山海)「はぁ、全部持って帰ると重くなる筈だけど…まぁ大丈夫だろ」

 本棚の書物を入れていると奥の方にまだ、書物があった。

(山海)「この棚、奥の方にも収納スペースがあるのか…先に表の方の書物を回収しないと」

 山海は先に表側にある書物を回収する事にした。

 数分後――

(山海)「ふぅ、やっと、終わった」

 山海は表側にあった書物を全て入れた。そして、奥の方にある書物を手に取った。

(山海)「これはノートか…【雌雄誕生記録】って、一体?」

 山海は【雌雄誕生記録】と書かれているノートの内容が気になりノートを開いた。

 (九月六日 元気な雄が産まれた。好い事だ           

  五月八日 雌が産まれた。今年も不吉な事が起きない様にする為にも処分場に送らんと災いが起きる

  四月四日 雄が産まれた。元気がない将来が不安だが雄が産まれるのは好き事だ…)

(山海)「処分場?不吉な事って一体?」

 山海は気になるワードはあったがノートを先まで読んだ。

(山海)「読むと処分場は村の中にある事は分かるがそれが何所にあるのかノートからじゃ分からないな」

 山海は処分場の場所が記されている所を探した。すると、ノートの最後の方に何かの破片を見つけた。

(山海)「何だ、この紙切れ…何か描かれているみたいだけど、これは…!もしかして」

 山海は何か思い付いた。山海は書棚の奥にある他のノートを手に取り頁と頁の間を調べて似た紙切れを探した。

 数分後――

山海は六枚の紙切れを見つけ出した。

(山海)「これ、刃物じゃなくて、無理矢理、手で切った感じの切れ目だな」

 山海は六枚の紙切れを組合せた。すると、村の地図が出来た。

(山海)「やっぱり、村の地図か…」

 山海は地図に処分場と記してある場所を探した。

(山海)「えっと、処分場…処分場…」

 山海は処分場を探すと唯一の出入り口である門の左側に【女子処分場】と記されている場所があった。

(山海)「女子処分場か…ノートに書かれている処分場は此処の事か…ノートに書いてあった雌雄は村で産まれた人間の赤ん坊が男子か女子かの事か…なるほどね」

 山海は地図を携帯のカメラ機能で地図を撮って処分場の位置をメモした。

(山海)「さてと、このノートもリュックに全て入れてからこの建物から出て、処分場に向かって見るか…」

 山海はノートをリュックに全て入れた。その後、村長宅から出ると一瞬だけ方角を見失うが携帯の写真を見て、道を迷わずに【女子処分場】に向った。

(山海)「それにしても、村は異臭がして、頭がクラクラするな…走ると危険だから歩いて【女子処分場】に向うか」

 山海は普通の歩くスピードで【女子処分場】まで歩いた。

 数十分後――

(山海)「此処か」

 山海の目の前に大きな建物が見えた。外から見ると屋根には死んだ烏の顔が四方に載っていた。扉は両開きで大きく威圧感があった。

(山海)「こりゃ、まるで不幸の…いや、言わない方が良いか…」

 山海は大きな扉を開けて建物の中に入った。すると、異臭の臭いがした。

(山海)「なんちゅう、臭いだ!」

 すると、扉が突然閉まった。

(山海)「何だ!?」

 山海は扉を開けようと扉の方に行った。

(山海)「扉がひとりでに閉まるなんて」

 山海は扉を開けようとするが開かない。

(山海)「何で、開かない」

 山海が扉を抉じ開け様としてると後ろから不気味な声が…。

(???)『ゼツボウヲオモイシレ』

 山海は後ろを振り返った。すると、後ろにはこの世の者とは思えない異形な姿が現れた。

(山海)「お前は一体何者だ!?」

(???)『我は鮫熊村の四九三人の怨念の集合体の夜視兄(よじえ)だ』

(山海)「怨念の集合体ねぇ…お前は何故此処に俺を閉じ込める必要がある」

(夜視兄)『我の目的は外界の人間達への復讐だ』

(山海)「復讐?どうやって」

(夜視兄)『外界の者達をパニックに陥れて人間達に最大級の恐怖を見せる!』

(山海)「いや、だから俺を閉じ込める方だって」

(夜視兄)『お前の体を頂く。そして、我はこのままでは、この建物から出る事は不可能…人間の体を手に入れないと計画は実行出来ないと言う事だ』

(山海)「なるほどね、此処に来る馬鹿はいないだろうし、それに…」

(夜視兄)『違う!』

(山海)「違う?」

(夜視兄)『我がお前の体を頂く理由はもっと根本的な事だ』

(山海)「根本ねぇ…」

 山海は夜視兄の言葉の意味を考えた。

(山海)「…!なるほどね」

(夜視兄)『では、頂くとするか』

 すると、山海の視界が暗くなった。

(山海)「これは…」

(夜視兄)『我の力は相手の視界を暗くさせる能力だ』

(山海)「なるほど、俺の体を乗っ取った後、外界で能力を最大にして、外界に居る全ての人間達の視界を暗くさせパニックに陥れて全ての行動をストップさせ交通麻痺を起きて事故も多発して医者や警察更に消防隊員も行動不能となり外界の人間は視界以外で暮らす事は健康的な人間達には苦難を強いられる。暗い世界で餓死して、外界の人間は全滅する。それが、お前の計画だろ」

(夜視兄)『そうだ、我の様な存在が生まれたのは集落の実態を知らずに怨念を造り出した外界の人間達だ!』

(山海)「いや、待てよ! それは村の人間達で在って、外界の人間達には無関係じゃないか」

(夜視兄)『確かに村の人間達が我の怨念の元凶だがそれを知らずにのうのうと暮らしていた外界の人間達にも責任はある。だからこそ、我は外界の者達にも我が受けた仕打ちを思い知らせてやるのだ』

(山海)「…じゃあ、お前はそんな村の人間達と同類になる気か」

(夜視兄)『どう言う事だ』

(山海)「お前が受けた仕打ちを外界の者達にやればお前は村の人間と同類になって、世界中にいる者達から非難されるぞ」

(夜視兄)『それは…』

(山海)「確かに俺は一族の末裔だが俺は村のやり方に賛同は出来ないだけど俺も一族の人間だ。一族の罪は一生背負う事になる! だけど俺は一族の掟を守るつもりはない!」

(夜視兄)『お前は我の事を恐れないのか』

(山海)「当たり前だ」

(夜視兄)『何故だ?』

(山海)「お前は、苦しみ続けた。誰かに救って欲しいと願っていることぐらい分かる」

(夜視兄)『だが、どうしたら良い…ずっと、此処にいろと? ずっと同じ苦しみを味わい続けなければ生けないのか』

(山海)「いや、最初にお前が言った俺の体を利用して悪用するのは流石に賛同しかねない。しかし、一つだけ方法がある俺と共一族が造り出した他の怨霊達は救い出せばお前は皆に賛同してくれるかもしれない」

(夜視兄)『つまり、我はお前の体で共同生活をしろと』

(山海)「そう言う事になる」

(夜視兄)『お前は我が体に入るのに抵抗は無いのか?』

(山海)「完璧に無いとは言えないが俺は一族の末裔でお前が入れる体なら俺は受け入る! …それにお前が救われる方を選ばないと後輩達に立つ瀬が無いし」

(夜視兄)『…分かった』

 夜視兄は山海の体に入って行った。

(山海)「うっ!」

 山海は少しよろめいた。

(夜視兄)『大丈夫か?』

(山海)「大丈夫だ」

 山海は夜視兄が体に入った反動で少しよろめいただけだった。

(山海)「さてと、この村でやるべき事は終わった。後は皆と無事に集合すると約束した門前に戻るとするか」

(夜視兄)『皆とは?』

(山海)「ああ、一緒に来た友が五人いて、それぞれ他村の末裔で皆それぞれの村に入った。その前に皆で無事に帰ろうと言う約束をした」

(夜視兄)『大丈夫か?』

(山海)「何が?」

(夜視兄)『いや、他の村にも我の様な《怨霊の集合体》がいるから心配はしないのか』

(山海)「大丈夫だよ、皆、根っから優しい奴らだ。俺よりも感情を出す事はしないが約束は必ず果す。まぁ、果す為なら自らの体や精神がどんだけ、ボロボロになっても相手を消さずに助けて約束も果たす奴らだ。心配はしないよ。皆、頭が切れるからね」

(夜視兄)『…そうか』

(山海)「村を出るか」

 山海は建物を出て門がある方に向った。

(山海)「そう言えば」

(夜視兄)『何だ?』

(山海)「いや、何か忘れているような気がして」

 山海はリュックを建物の壁に置いてあるのを忘れていたが気付いて無い。

(夜視兄)『そう言えば、村で何を?』

(山海)「確か一族が何をしていたのかを調べたりしていたが結構な量だったからリュックの中に入れて家で確認しようと…」

(夜視兄)『リュックって持ってないぞ』

(山海)「忘れていたのはそれか!」

 山海はリュックを持っていない事に気付き建物に戻った。するとリュックはあった。だがそこにはリュックを切り裂こうとしている人影があった。

(山海)「お前…俺のリュックを如何するつもりだ」

 リュックを持った人物は完素だった。

(山海)「完素、お前…如何して」

(完素?)「…」

 完素は突然、刃物で山海を襲いかかって来た。

(山海)「どう言うつもりだ!」

(完素?)「…」

 完素は刃物で山海を切ろうとするが全てをかわし続けた。

(夜視兄)『山海、我の力を使え』

(山海)「だが」

(夜視兄)『俺の力は相手が生物なら視界を観えなくさせるのは容易い』

(山海)「…分かった」

 山海は完素に向けて力を使ったが完素には効かなかった。

(山海)「どう言う事だ!」

(夜視兄)『簡単に言えばあいつは人間じゃない!』

(山海)「なら、手加減無しで壊すか!」

(夜視兄)『でも、どうやって』

(山海)「まあ、見てな!」

 山海は袖から棒を出した。すると、山海は完素に突撃した。完素は刃物を向けて山海に突っ込んだ。山海は完素の攻撃を持っていた棒を使ったジャンプで回避したのと同時に完素の頭に強力な一撃を与えた。

(夜視兄)『なんちゅう、無茶を』

(山海)「これで、あいつは動かないだろ」

(完素?)「…テキトニンショウ」

(山海)「今頃かよ!」

(完素?)「バクダンノキドウカンリョウ」

(山海)「はい?」

(完素?)「バクハツマデ1プンマエ」

(山海)「マジかよ!」

(夜視兄)『どうする』

(山海)「止めるに決まってるだろ!」

 山海は完素似のロボットに突撃した。山海は途中で棒に付いてある一つの釦を押した。すると、山海はロボットに向けて棒を当てまくった。

(完素?)「ノコリ四十ビョウ」

(山海)「後、少し」

(完素)「ノコリ二十ビョウ」

 すると、山海が持っていた棒から冷気が現れた。

(山海)「これで終りだ」

 山海は思いっ切り棒を振りまくった。

(完素?)「ノコリ…」

(山海)「止まったか」

 山海は地面に倒れた。

(夜視兄)『それは、一体』

(山海)「これか、簡単に言えば完素の発明品だ。あいつの知り合いは完素がそいつの得意と思われる武器を一週間で完成させて渡す癖があって他にも俺達の家の機械は一通りあいつの手が加わっている」

(夜視兄)『成程、お前は棒術に長けていると思った訳か』

(山海)「そうだけど、実は棒術に関しては全くの皆無だった。けど、貰った後にこっそりと夜中に公園で練習していた」

(夜視兄)『そうか』

(山海)「取り敢えず、リュックを持って、門に行こう」

 山海は重い腰を上げてリュックを持って門に戻った。

(山海)「それにしても、あれは一体」

(夜視兄)『おそらく、防衛ロボットだと』

(山海)「でも、どうして完素の顔になっていたんだ」

(夜視兄)『さぁ』

 山海達は村の門まで戻った。

(山海)「さてと、此処をくぐれば外界だ。お前にとって知らない世界だ。覚悟は出来ているのか」

(夜視兄)『もちろんだ』

 山海は微笑んで門を開けて約束の地に戻って来た。

 林寸村――

 日太は村に入ると蜘蛛の巣が多く見える。

(日太)「流石に長年、人が暮らして居なければ蜘蛛の巣が沢山あっても可笑しくないか」

 日太は村の中を探索していると大きな建物が在った。

(日太)「此処は…」

 日太は建物の中に入った。すると、大木が沢山在った。

(日太)「大木か…」

 日太が建物内は探索すると、大きなエレベーターが在った。

(日太)「エレベーターか…この大きさなら、あそこにある大木も入る大きさだな」

 日太はエレベーターに乗り地下へ向った。

(日太)「……」

 エレベーターは地下に着いた。扉が開くと大きな部屋になっていた。

 (日太)これは…」

 日太の目の前には大きなフロアが広がっていた。

(日太)「この広さなら大木を育てるのは不可能ではないな!」

 日太はフロアの奥に進むと一つの部屋があった。

(日太)「此処は…」

 部屋に入ると大きな機器が置かれていた。

(日太)「この機器、何所かで…」

 日太は機器に近い物を何所かで見た覚えがあった。

(日太)「…!思い出した。完素の家にあった機器に特徴が一致しているな…と言う事は…」

 日太は完素の部屋にあった機器と同じならと機器の起動釦と思われる場所を押すと機器が動き出した。

(日太)「思った通りだ!」

 日太は機器が完全に動き出すまでに時間が掛かる様で日太はその間に此処について推測を立てて、時間を潰した。

(日太)「一族は土木関係の仕事を昔からしているのは見て分かるが…この機器は如何考えても一族の造った物では無い。考えられるのは完素の一族だが何故、日本は喜未一族を受け入れなかったのか気になる。それに…」

 日太が推理を立てていると機器の起動が完全に作動した。

(日太)「これで、村の事が少し位は分かるか…」

 日太は村の情報が在るか調べた。

(日太)「何だ? この【重要機密ファイル】って?」

 日太は気になるファイルを見つけファイルを開いた。

(日太)「これは村の方向性と掟についての改善を訴える物か…」

 日太は全容を読まずに気になる記載が載ってないか飛ばして読んだ。

(日太)「これだ!」

 日太は重要な事が村長に伝えるという記載を見つけた。

(日太)「村長宅に送る事、つまり村民は村長の下で奴隷のように働かせられているようなものか」

 日太は機器の中に村の地図が在るか調べた。

(日太)「これは、此処にあった木々の成長記録と健康記録のファイルか…こっちは外の企業が依頼した木材と企業名が書かれているファイルか…」

 百件のファイルを調べて、百一件目でやっと村の地図を見つけた。

(日太)「村長宅は村の一番右側か門から離れているのか…」

 日太は機器を停止させて村長宅に行く為にエレベーターを乗ろうと釦を押した。

(日太)「…?」

 エレベーターの扉が開かなかった。

(日太)「まさか」

 日太は何度も釦を押したが開かなかった。

(日太)「このタイミングで故障かよ!」

 日太は地下に閉じ込められた。

(日太)「どうしようか」

 日太は無茶な考えを思い付いた。

(日太)「登るか! エレベーター内をよじ登れば何とかなるだろ」

 日太は扉をこじ開けて、持って来た懐中電灯をエレベーター内に当てて、行けそうな場所を確認した。

(日太)「あそこ…とあそこと…」

 日太は懐中電灯をズボンに付けて、エレベーター内をよじ登り始めた。

(日太)「これは、結構掛かるぞ!」

 日太は登って数分が経過した。

(日太)「やっぱり、在ったか」

 日太の目の前には巨大な蜘蛛の巣が在った。

(日太)「蜘蛛はいないか…」

 どうやら、蜘蛛の巣の主はすでに死んでいた。

(日太)「蜘蛛の巣が道を塞いでいるから、如何したものか…」

 考えていると中央にエレベーター本体が在った。

(日太)「…あれを使うか」

 日太は一旦、エレベーター内の出っ張りに座りリュックからロープを出した。

(日太)「この完素特製ロープでエレベーター本体の下にくっ付ければ…本体の中に入れる」

 日太はロープをエレベーター本体に向けて投げた。すると、上手くロープはエレベーター本体の下にくっ付いた。

(日太)「よし」

 日太はロープをつたってエレベーター本体の下に着いた。すると、日太はエレベーターの底を思いっ切り蹴った。

 「…ハァ…ハァ…後三発」

 日太は底を三回蹴ると底が吹き飛んだ。エレベーターの底が吹き飛んだ事によってロープが取れて落ちて行った。

(日太)(予定通り)

 日太は落ちながらロープをエレベーター本体の天井にくっ付けた。

(日太)「ふぅ…伸縮自在なのが幸いしたか」

 日太はロープをよじ登り、エレベーター本体の天井に辿り着いた。

(日太)「…ハァ…ハァ…恐らく此処が地上の扉の筈」

 日太はリュックからシートを出した。

(日太)「この完素特製のシートを底に敷いて底を造る」

 日太はシートを底に敷いた。すると、日太はシートに下りた。

(日太)「流石…完素は俺が知っている天才だよ」

 日太は扉を抉じ開けるともう一つ扉が在った。

(日太)「予想通り」

 日太は最後の扉を抉じ開けた。すると、一階のフロアに出た。

(日太)「…ハァ…何とかなった」

 日太はシートとロープを回収して、建物を出た。

(日太)「確か、こっちが門だから反対方向の右側だな」

日太は村長宅に向った。その道中に不思議な現象を見た。

(日太)「蜘蛛が動いて無いから死んでいると思ったら時が止まっている?!」

 何と村中の物が時を止めていた。

(日太)「今は、村長宅に行ってみないと」

 日太は村長宅に再度、進んだ。

 数分後――

 日太は村長宅に着いた。

(日太)「此処が村長宅ねぇ」

 日太の目の前には、大きな木造建築物が建っていた。

(日太)「一階建てだけど広さが広すぎる」

 日太は驚きながらも建物に入った。

(日太)「さてと、一族の情報が記されている書物を探すか…まずは、書斎らしき部屋を探すか」

 日太はまず奥の方から調べた。

(日太)「こういう建物で一番厄介なのは出口から遠い場所だ。若しもの時に奥の方から行くか」

 日太は建物の奥の方に行った。

(日太)「まぁ、普通に探しても村の掟の中でも黒い掟は隠してあるだろうし…」

(日太)(あのファイルを見ると)

 日太は奥の方に着き近くの部屋に入った。すると、一つ目の部屋が書斎だった。

(日太)「ビンゴか」

 日太は書斎の書棚が動いた形跡が在った。

(日太)此処だけ、埃の被りが他の所と違って少ない…もしかすると)

 日太は書斎の机を少し動かして壁際の方を手探りで調べると釦が在った。

(日太)(…やっぱり)

 日太は釦を押すと書棚が動いた。

(日太)「予想的中!」

 日太は本棚の裏に在る隠し階段を下りた。

(日太)(やっぱ、一族の血は変わらないな…)

 日太は少し微笑んだ。

 日太は階段を下りると其処には大きなフロワがあり沢山の書物で埋め尽されていた。

(日太)「これは、流石に多すぎる…リュックに入れて家に帰ってから読むか」

 日太はリュックに書物を入れて行った。

(日太)「流石は完素特製のリュックだ。沢山入れても重くならず形も変わらない構造は凄いよ」

 日太は書物を入れていると気になる見出しの巻物を見つけた。

(日太)「何だ、これ…【雌雄誕生記録簿】ねぇ」

 日太は巻物を開いた。

 (六月二日 元気な雄が産まれた。

  六月七日 元気な雄が産まれた。

  六月九日 雌が産まれた。残念だ…)

 日太は内容を見てある事に気付いた。

(日太)「…淡堕の推測が当ったかもしれない」

 それは、此処に来る前に淡堕が言った事が日太の脳裏を過った。

(淡堕)(昔、俺達の一族が男の子以外…つまり女の子が産まれたら殺す…)

(日太)「あの時の推測が当ったとしたら俺達は非常に重圧な十字架を背負っている事になる…」

 日太は在る事に気付いた。

(日太)「村を回ったが墓らしき物が一個も無いと見ると何所かに収容して、そこで殺害していた事になるがその場所は何所だ?」

 日太は考えていると大きな立て掛けてある何かを見つけた。

(日太)「こんな所に…埃で何か分からないな…」

 日太は立て掛けてある物に付いていた埃を取り除くとそれは村の詳細な地図だった。

(日太)「この地図に何かヒントが在る筈だ」

 日太は村の地図を見ると気になる場所を見つけた。

(日太)「間違いない…此処だ!」

 日太が見つけた場所の名前は【女子処分場】と記されていた。

(日太)「此処に行けば過去に亡くなった者…いや、一族が見捨てて、殺された者達眠っている筈だ!」

 日太は隠し部屋の書物をリュックに入れて、隠し部屋から出た。

(日太)「何か嫌な予感がするが気にしない事にしよう」

 日太は村長宅を出た。

(日太)「確か【女子処分場】は門の左側に在ったな」

 日太はまず、門に向った。

数分後――

日太は門に着いた。

(日太)「リュックは此処に置いておこう」

 日太はリュックを置いて、【女子処分場】に向った。

 数分後――

 日太は【女子処分場】に着いた。

(日太)「この大きさ結構な数の女子達を殺した事になる」

 日太は怒りが込み上げて来た。

(日太)「落ちつけ…今は冷静になって村の事を知らないと」

 日太は怒りを抑えて冷静に戻った。

(日太)「さてと、中に入るか…」

 日太が扉を開けようとするとひとりでに扉は開いた。

(日太)「何だ?」

 日太は建物に吸い込まれるかの様に入って行った。

(日太)「此処が一族の闇の一部分か」

 日太が感傷していると突然、扉が閉まった。

(日太)「何だ!?」

 日太が扉に向った。

(日太)「急に閉まるか…」

 日太は気配を感じ、後ろを振り向いた。

(日太)「やっぱり、お前があの蜘蛛をいや、村の時間を止めていた犯人か」

 其処に居たのはこの世の者とは思えない異形の姿をした者だった。

(???)『そうとも』

(日太)「お前は一体何者だ?」

(???)『我の名は刻苦怒こくくどこの村で亡くなった女性達五一八人の怨念の集合体だ』

(日太)(五一八人か…多くも無いか)

 日太は冷静に刻苦怒と対峙している。

(日太)「お前の目的は…」

(刻苦怒)『我の目的は外界の人間達に最大の恐怖を植え付ける』

(日太)「最大の恐怖?どうやって…」

(刻苦怒)『我の力は時を止める力だ。それをコントロールして、一定の場所に時間を停止させる。そうする事で恐怖を植え付けて行く』

(日太)「成程ね」

(日太)(…刻苦怒の狙いは、電車の車掌の時間を止める事で車掌は動けない事で電車は動きが停止できず終点で大爆発を起こし車掌と乗客共々に殺す事でニュースがTVで流れる。それを見た視聴者が恐怖を覚えて外国に逃げる。そうする事で日本は滅ぶ)

(刻苦怒)『お前が今、何を考えている事が分からないとでも思うか』

(日太)「分かっているさ…つまり、今、俺が頭の中で考えていた通りだろ?」

(刻苦怒)『そうさ、公共機関の設備を壊す事が狙いだ』

(日太)「俺に話してお前に得など無い筈…如何して俺に言う」

(刻苦怒)『我がお前に話す理由は無い…だが、お前は此処で命を落として体を俺が頂く』

(日太)「成程ね」

 日太は落ちついている。

(刻苦怒)『怖くないのか?』

(日太)「怖いって、お前自身の方だろ」

(刻苦怒)『何?』

(日太)「俺自身は心霊番組や衝撃映像で慣れている。お前の方は人間を恐れている。何故なら恐怖は外界を知らないからだ。お前の復讐は絶対に失敗はしないだろう だが、俺はお前の復讐を此処で阻止してやる」

(日太)(絶対に止める!)

(刻苦怒)『我が外界の人間を恐れている?我の復讐を止める?…やってみろ!』

 刻苦怒は日太の体内に入った。

(日太)「俺は絶対に止める。復讐の先が何かを…」

 日太はその場で動かなくなった。

 日太の精神世界――

(日太)「俺はお前を救う!」

(刻苦怒)『無理だ! 我を救うなど』

 刻苦怒は日太の右腕に向けてナイフを投げた。

(日太)「くっ!」

 日太の右腕が切れた。

(刻苦怒)『利き腕を使えなくすればお前は何も出来ない筈…このまま、お前の精神を消して我が体の主人になって、復讐を遂げる!』

(日太)「止めろ! そんな事をすれば一族と同じ事をする事に…」

(刻苦怒)『! 五月蠅い!』

 刻苦怒はナイフを日太に向けて何度も投げた。すると、日太の精神体は頭と胴体のみになった。

(日太)「お前が復讐をすれば霊能者が出てくる。そうなればお前はまたこの場所に封印されるかもしれない。俺は霊能者を信じたいけど、俺は俺のやり方で霊と和解する道を選んだ。もしも、お前が封印でもされたら俺は悲しい」

(刻苦怒)『じゃあ、如何したら良いのだ』

(日太)「俺と一緒に村を出て、一緒に世界を見れば良いじゃないか!」

(刻苦怒)『我は怨霊の集合体だ! お前と一緒に入れるわけが…』

(日太)「愚痴、愚痴、言うな! 俺とお前は一族に苦しめられている者同士だ。一緒に一族のやり方を変えればいい! お前の力がいる時が来るかもしれないだろ」

(刻苦怒)『…』

(日太)「俺はお前の事が一番では無いが愛したい存在だ!」

(刻苦怒)『…分かった』

 刻苦怒は攻撃を止めた。

(日太)「之から、宜しく…」

 日太は笑顔で言った。

(刻苦怒)『宜しく』

 刻苦怒は暗い感じで言った。

 現実に戻る――

 日太は目が覚めた。

(日太)「さてと、村を出るとするか…」

 日太は建物から出ると時が動き出していた。

(日太)「蜘蛛も動いているな…」

 日太は門に向った。

 数分後――

 日太は門に着いた。

(日太)「刻苦怒…お前にとって門から先は未知の世界だ。覚悟は出来ているか」

(刻苦怒)『ああ…』

 日太は門を開けた。

 日太が門を開けると皆が同時に出て来た。

(日太)「あれ、お前らも調査は終わったのか?」

 日太が言うと淡堕が不思議な事を言った。

(淡堕)「お前ら結構な時間、調査したのか?」」

(全員)「?」

 日太達は淡堕の言葉に疑問が生じた。

(丹波)「いや、俺は数十分位しか村に入っていなかったが…」

 他にも、一時間程度や三時間程度など皆が村に入っていた時間帯がバラバラだった。

(日太)(…もしかして)

 日太は体内に居る刻苦怒を見た。

(刻苦怒)『さあね…』

 刻苦怒は笑って返した。

(日太)「それは、置いといて何か収集はあったか?」

 日太は皆に時間の話から村での収集に着いて訊いた。

(日太)「俺は書物を見つけたが量が多くてリュックに入れて家で調べる事にした」

 日太は書物を見つけた。

(山海)「俺も日太と同じで書物で日太と同じく家で読む事にしている」

 山海も日太と同じだった。

(淡堕)「俺も」

 他のメンバー達も同じだった。

(日太)「さてと、此処でやるべき事は終わったな」

 日太は皆に言った。

(山海)「取り敢えず、集落から出るか」

 山海が言った言葉に皆が賛成した。

(日太)「確か、淡堕と完素は電車だったよな?」

 日太が淡堕と完素の二人に訊いた。

(淡堕&完素)『そうだけど』

 二人は答えた。

(日太)「一緒に山海の車で帰ろうぜ」

 日太は淡堕と完素の二人を誘った。

(淡堕)「だが…」

 二人は誘いを受けるか迷った。

(日太)「電車だと金掛かるし、アルバイトや就職をしていない俺達が使える金銭には限度がある。山海の車で帰るのなら無賃でも平気だし、若しも、欲しい物がある時に使うから出来る限り使わないでいた方が絶対に良いよ」

 日太は二人に誘った理由を言った。

(淡堕)「それもそうか」

(完素)「分かった」

 二人とも誘いに乗った。

 山海は日太を見て少し微笑んでいた。

(山海)(相変わらず冷静で燃える事を殆ど知らない奴だけど、優しいのよね…甘いのかもしれないけど)

 数時間後――

 日太達は駐車場に着いた。

(丹波&界男)『じゃあ、俺達先に行くから』

 界男と丹波が言った。

(日太)「ああ、皆の情報が整理出来たら再度集合しよう」

 日太は丹波と界男の二人に言った。

(丹波)「ああ、じゃあな」

 界男と丹波はオートバイクで先に帰った。

(山海)「…さてと、俺達も行くか」

(日太)「そうだな」

 四人とも山海の車に乗った。

 数分後――

(日太)「後ろの二人とも寝ているよ」

 淡堕と完素の二人は後部座席で熟睡していた。

(山海)「そうか…」

 山海は神妙な顔を浮かべていた。

(日太)「? どうした?」

 日太は山海に訊ねた。

(山海)「実は…」

(日太)「何だよ?」

(山海)「二人が寝ている原因は俺が車に乗る前に近くの自販機で買って来た飲料水に睡眠薬をこっそり入れたから」

(日太)「本当か!?」

 淡堕と完素が寝ているのは山海が飲料水に忍ばせといた睡眠薬が原因だと山海は言った。

(山海)「嘘」

(日太)「嘘かよ!」

 睡眠薬と言うのは嘘だった。

(山海)「実際に熟睡しているだけ」

(日太)「そりゃ、そうか」

 山海がちゃんと説明して日太は一安心した。

(山海)「日太、お前は俺達に何か隠しているだろ」

 山海は日太に訊いた。

(日太)「それは…」

 日太は動揺した表情になった。

(山海)「お前は相変わらず自分の事となると動揺しやすいからな」

(日太)「隠しているって、何の事だ?」

 日太は山海に訊き返した。

(山海)「皆が村から出て同時に集合場所の広場に着いた事について、何か知っているだろ」

(日太)「隠しても無駄か 実は――」

 日太は山海に皆が同時に着いた原因を説明した。

(山海)「成程、お前の村の怨念の集合体である刻苦怒の能力か」

(日太)「信じてくれるか?」

(山海)「信じるも何も…俺も同じ存在を体内に一緒に居る奴もいるし」

(日太)「お前も!」

 日太は驚愕した。

(山海)「お前の怨霊の集合体は何も言っていないのか?」

(日太)「何が?」

(山海)「俺達が其々に行った一族の村には境遇が似た怨念の集合体が居るらしいぞ」

(日太)「つまり、あいつ等も怨念の集合体を憑依させているって事か?」

(山海)「そう言う事になるな」

 数十分後――

(山海)「家に着いたぞ」

 山海は日太の家に着いたので日太を起こしていた。

(日太)「ああ、寝ていたのか」

 日太は起きて、車から降りた。

(山海)「それじゃ、今度会おう」

(日太)「そうだな」

 山海は車を出した。

(日太)「さてと、明日から忙しくなるぞ」

 日太は玄関の鍵を開けて家に入った。日太が家に入ると後ろに人影が在った。

(人影)「もしもし、先生ですか?」

 人影は《先生》という謎の人物と話していた。

(人影)「えぇ、第一段階はクリアと言えるでしょう。次の行動が楽しみですが例の案件は順調に進んでいるでしょうか?…そうですか、今の所は順調ですか…では…」

 謎の人物は先生との話しを終えた。

(人影)(あいつ等の仕事現場を創るのが俺の一族の役目だ)

 謎の人物は意味深な事を言うと日太の家とは別の方向へ去って行った。


四情狩林 それぞれの苦しみと意い   ~第二章~ 完

 

四情狩林 それぞれの苦しみと意い   ~第三章~ 続く――


日太達は自分の一族を怨む怨霊の集合体と共存する事になった! 悲しき亡女達の為に世界を見せると言う目標を掲げて――

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