~それぞれの苦しみと意い~ 第一章
この物語は一族に歯向かう物語。主人公はこの戦場で自分の道を改めるのか?
四情狩林
~それぞれの苦しみと意い~
第1章…プロローグ
深大寺の住宅街に建っている一軒の家の二階では18歳の男性が卒業アルバムを読んでいると家の固定電話が鳴った。
(男性)「誰だよ?」
男性は卒業アルバムを閉じて電話機の所に向った。扉を閉めた振動で一冊のノート(自由帳)が落ちた。其処には【三年一組 林寸 日太】と記されていた。
日太は電話機の目の前に来ると電話に出た。
(日太)「もしもし」
(男性)「俺だ、山海だ!」
電話をして来たのは小学校から中学まで一緒だった鮫熊 山海だった。
(日太)「山海、どうした?」
(山海)「助けてくれ!」
山海は日太の助けを求めた。
(日太)「どうした?」
(山海)「早く来てくれ! 頼む!」
(日太)「わかったから、今どこだ?」
(山海)「場所は…魔負児小学校だ」
(日太)「わかった、魔負児小学校だな…直ぐに行くから待ってろ!」
日太は電話を切って家を出て魔負児小学校に急いだ。
(日太)(確か、魔負児小学校って、調布市にあって今はもう閉校になった学校だよな、だとしたら…いやな予感しかしないな)
二十分後――
日太は、走って魔負児小学校に着いた。
(日太)「…はぁ…はぁ…やっと着いた」
(日太)(家から近かったから速く着いたけど…)
日太は迷う事無く学校の中に入った。
(日太)「山海どこだ」
日太の呼びかけに山海の返答は無かった。
(日太)「…こりゃ、最悪の展開かも…」
日太は学校の中を探すことにした。
(日太)「それにしても、汚れが一切ないなぁ」
(日太)(汚れが無いって事は、誰かが掃除をしている事になるが、一体、誰が?)
その時、日太の横の部屋からガタガタと音が聞こえた。 (日太)「山海か?」 日太は部屋を見ても誰もいなかった。 (日太)「誰もいない、にしても、本当に汚れが無いな」 (女の子の声)「フッフッフッフ♡」 日太の後ろから、笑い声のような声が聞こえた。 (日太)「誰だ!」 日太は後ろを振り返っても誰もいなかった。 (日太)(…誰もいない) (女の子の声)「フッフッフッフ♡」 次は真正面から女の子の笑い声が聞こえた。 (日太)「誰だ!」 日太は後ろに振り返ったが誰もいなかった。 (日太)(たっく! 誰だよ!?) その時、日太の足に誰かが両手で掴んで来た。 (日太)「ん?」 日太は足の方を見たら小学生の時の同級生だった哀世 界男【あいせ かいお】が足を押さえていた。 (日太)「界男じゃないか! どうした?」 (界男)「助けてくれ!」 (日太)「何があった!?」 (界男)「此処に丹波と完素・淡堕・山海と俺の五人で来て縦に順番に並んでいたんだが後ろの奴らが一人ずついなくなっていって俺と山海の二人になって俺達はケンカして別々になってここから遠くない所で後ろから笑い声が聞こえて振り返ったら誰もいなかったのに急に後ろから刺されて――」 (日太)「取り敢えず、病院に行くぞ!」
日太は界男に病院に連れて行こうと界男の肩を担いだ。 (界男)「駄目だよ」 (日太)「何で?」 (界男)「もうすぐで、自分は死ぬから…」 (日太)「諦めんなよ!」 (界男)「確かにその通りだよ …だけどお前は山海の方を助けてやってくれ」 (日太)「…わかったよ」 (界男)「ありがとう」
界男はそう言って目を閉じた。
(日太)「おい、界男! しっかりしろ!」
日太は界男を床に置いて界男の脈(腕の脈)を調べた。
(日太)「だめだ、動いてない…くそ! 絶対に山海を助けるよ…界男」
日太は部屋を出た。
(日太)(たぶん、あの時の笑い声がそうだろうな …でも、俺は刺さなかったってことは…もしかして…)
日太は歩きながらある仮説ができた。
(日太)(でも、そうだとしたら、山海が危ない! 何時、山海が狂ってもおかしくない! …急がないと!)
日太が急ごうとしたら、横の部屋から気配がした
(日太)「山海か?」
日太がドアを開けた。
(男性)「助けてくれ!」
(日太)「誰かいるのか?」
壁際を見たらそこには小・中と同じだった水楽 丹波がいた。
(丹波)「日太か」
丹波は腹から血が流れていた。
(日太)「何があった!?」
(丹波)「山海達と一緒に来て、俺が一番、後ろにいたら急に気を失ったらこの部屋にいて前から小学五年生ぐらいの女の子がきて――」
丹波は話しの途中で目を閉じて手が動かなくなった。
(日太)「おい、丹波しっかりしろ!」
日太は脈が動いているか確認した。
(日太)「……だめだ、脈が動いてない」
日太は丹波の体を仰向けにした。
(日太)(一体、何が…)
日太は一旦、部屋から出た。
(日太)(ここでの出来事は丹波が言った女の子が原因だろう …急いで山海を見つけないと危ない!)
日太は山海がいそうな場所を探すために魔負児小学校の見取り図があると思われる職員室の中を探した。
(日太)(…くそ! やっぱり、無いよな)
そう思って部屋を出ようとしたら前に人影があった。
(日太)「誰だ?」
(男性)「俺だ、日太」
(日太)「その声、完素か?」
(完素)「…そうだ!」
人影の正体は小・中と同じだった喜未 完素だった。
(日太)「何があった!」
目の前に血だらけの完素がいた。
(完素)「短く話すよ」
(日太)「ああ」
(完素)「俺は、皆と離された後、この近くの部屋にいた。その時、小学五年生と思われる女の子に『楽しい?』と言われて俺は『楽しい訳あるか!』と言ったら急に頭が痛くなって女の子が笑いながら消えた。そして、俺はそのまま気を失って、お前が山海を探している声が聴こえて目を覚ましてお前にこの事を伝えたくてなんとかお前に伝えられたよ」
(日太)「そうか、わかったからお前は、ここにいろ!」
(完素)「いや、もう俺は助からないせめて山海を助けてやってくれ頼む」
(日太)「……わかった」
(完素)「あ…り…が…と……」
完素は目を閉じた。
(日太)「…必ず、山海は、助けるから!」
日太は職員室と連結している一室に入った。
(日太)(ここは、たぶん、校長室かな)
校長室には何故か物が置いてあった。
(日太)「何で、此処には物があるんだ?」
日太はここの見取り図を探した。
五分後――
(日太)「これだ! 間違いない!」
日太は見取り図を見て山海がいると思われる場所が何所か探した。
(日太)「う~ん ……ここだ!」
日太は体育館に山海がいると思い向かっている途中である部屋を見てしまった。
(日太)「あれは…」
そこには山海達と来た濃怒 淡堕がいた。
(日太)(何してるんだ?)
淡堕はどうやら、助けを求めているようだ。
(日太)(助けないと!)
日太が助けに行こうとしたら、淡堕の前に五年生ぐらいの女の子が現れた。
(日太)(あいつが界男と丹波が言っていた子か…)
日太は女の子と淡堕の様子を見た
(女の子)「ネェ、タノシイ?」
(淡堕)「楽しい訳あるか!」
(女の子)「ソウ、カ…ナ…シ…イ…ノ…ネ…オ…ニ…イ…チャ…ン…ハ…」
(淡堕)「ひぃ! 助けてくれ、頼むから」
(女の子)「タ…ス…ケ…テ…ア…ゲ…ル…ワ…」
女の子が笑みを浮かべると淡堕の腹から血が流れ出した。
(淡堕)「な、何だよ!」
(女の子)「フフ♡」
(淡堕)「何の真似だ!」
淡堕が女の子を睨みつけると女の子の姿は消えた。
(日太)(これってまさか…)
(淡堕)「くそ、俺は、死にたくない!」
そう言うと淡堕は倒れた。
(日太)「おい、淡堕!」
日太は淡堕の脈を調べた。
(日太)「だめだ、動いてない!」
日太はここでの出来事が分かった。
(日太)(やっぱり、そういう事か! だとしたら、山海が危ない!)
日太は体育館に向かって駆け出した。
(日太)(それにしても、汚れが一切無いのは可笑し過ぎる!)
日太は疑問を覚えた。
(日太)(それに血の痕が無いのが可笑しい、せめても、犠牲者がいたのなら血を流しながら亡くなって逝く筈だ! なのに血の痕が無いのは不自然過ぎる! それに倒れた人の形すら見当たらない!)
日太は体育館に着いた。
(日太)「山海、いるか!?」
(山海)「日太、ここだ!」
山海の声は体育館の倉庫から聴こえた。
(日太)「山海、いるか?」
(山海)「日太、助かったよ」
日太は山海に駆け寄ると山海を殴った。
(山海)「何すんだよ!?」
(日太)「お前は何でここに来た!?」
(山海)「肝試しをしようと思って……」
(日太)「馬鹿野郎! お前はオカルト系を信じてないのかよ!?」
(山海)「信じてないよ!」
日太は再度、山海を殴った。
(日太)「見えない物も信じないのか!」
(山海)「そうだよ!」
日太はもう一度山海を殴った。
(山海)「何すんだ!?」
(日太)「目に見えるものが全てだと思うのか!」
(山海)「目に見えるものが全てだよ!」
日太の怒りが頂点に達した。
(日太)「目に見える物が全てじゃないぞ!」
(山海)「何ぃ!?」
(日太)「俺はオカルト系を信じてる! …オカルト系を信じないとお前はすぐに死ぬぞ!」
(山海)「…や、やめろよ、そういう冗談」
(日太)「冗談じゃないよ!」
(山海)「……え?」
(女の子)「フッフッフッフッフ♡」
(日太)「…来たか」
(山海)「な、何だよ、この声は?」
(日太)「女の子の声だよ」
(山海)「はぁ?」
女の子の怨霊が目の前に現れた。
(山海)「ひぃ! なんだよ、こいつ、化け物か?」
(日太)「化け物じゃないよ、この子はここで無くなった女の子の怨霊だよ」
(山海)「な、なぁ、逃げようよ」
(日太)「逃げたら、おしまいだぞ」
(山海)「どういう事?」
(日太)「お前とここに来た四人はたぶんこの子がやった」
(山海)「《やった》って、界男、丹波、完素、淡堕達の四人とも死んだのか!?」
(日太)「いや、死んだ訳じゃないと思う」
(山海)「どういう事だよ?」
(女の子)「フフ、サッシガイイワネ♡」
(山海)「?」
山海は日太と女の子の会話が分からない様だった。
(日太)「この子は一人ぼっちだから、ここに来た人たちをこの子と同じ空間にやった…そうだろ?」
(女の子)「…ソウダヨ♡」
(山海)「そんな! …界男達を返せ!」
山海が女の子に怒りをぶつけようとした。
(日太)「ちょっと、待った!」
日太は女の子に突っ込む山海の襟を掴んで山海を止めた。
(山海)「何すんだよ!?」
(女の子)「フフ♡」
(山海)「何がおかしい?」
(女の子)「イマノハ、オトモダチノオカゲデタスカッタノヨ♡」
(山海)「どういう事だ!?」
(日太)「ようく、見てみろ!」
山海はあの子の周りを見た。
(山海)「ひぃ!」
(日太)「そういうことだ」
女の子の前・上・下全体に刃物があった。
(日太)「お前が突っ込んだら死んでたろうな」
(女の子)「フフ、ネェ」
(山海)「?」
(女の子)「アソボ♡」
(山海)「なぁ、日太、逃げようぜ! こいつは危ないよ!」
(日太)「…いや、俺は逃げないよ」
(山海)「な、何で?」
(日太)「まだ、四人は生きてる! あいつらを見捨てられる訳無いからな!」
(山海)「……」
山海は黙り込んだ。
(女の子)「オニイチャン、アソボウヨ♡」
(日太)「いいよ、遊んであげる」
日太は女の子に渾身の笑顔で言った。
(女の子)「ヤッター♡ ナニシテアソブ?」
(日太)「《かくれんぼ》は如何かな?」
(女の子)「…イイヨ♡」
(日太)「こっちから一つ遊ぶための条件があるけど良い?」
(女の子)「ナニ?」
(日太)「君が君の空間に連れていった人達の魂を返してくれたら遊んであげる」
(女の子)「…ダッタラ、コウイウノハ、ドウ♡」
(日太)「何?」
(女の子)「キョウ、ウバッタヒトタチノタマシイヲサガシダシテ、ツカマエルノハドウ?」
(日太)「…わかった」
(女の子)「ジャア、タイムリミットハ、アサッテノアサマデデイイ♡」
(日太)「わかった」
(女の子)「ジャア、ヨーイスタート!」
女の子は笑いながら消えた。
(日太)「よし! 見つけ出してやる! 山海やるぞ!」
(山海)「俺は…やらない」
(日太)「何!?」
日太は山海の胸倉を掴んだ。
(山海)「何すんだよ!」
(日太)「お前はそれでいいのか!?」
(山海)「俺はあいつらを見捨てた」
(日太)「たっくよう…あいつらは俺にお前を助けてやってくれと言った!」
(山海)「あいつらが…」
(日太)「お前を思っているあいつらを放っておくのか?」
(山海)「それは…」
(日太)「迷うなよ! 助けたいと思っているなら、その《意》のままに行動しろ!」
(山海)「わかったよ」
山海と日太は四人のために女の子との《かくれんぼ》に挑む事になった。
一人目――
(日太)「さてと、まずは、倉庫から出よう」
(山海)「ああ」
日太と山海は体育館の倉庫を出た。
(山海)「なんだよ、これ」
そこには仰向けになっている界男、丹波、完素、淡堕の四人が寝ていた。
(日太)「何でここに」
(山海)「どういう事?」
(日太)「いや、こいつらは校舎にいたはずだ」
(山海)「…だとしたら、女の子のはからいじゃあ」
(日太)「…そうだろうな」
(男の子)『チガウヨ』
(日太)「誰だ!?」
日太が後ろを振り向いたら、男の子が立っていた。
(日太)「君は?」
(男の子)『僕は、ここで亡くなった、鮫熊 詩蘇男【きょうゆう しそお】です』
(日太)(鮫熊…って確か)
日太は山海を見た。
(日太)「そう、詩蘇男君だね」
それに気付かず話は進んだ。
(詩蘇男)『はい』
(日太)「でも、どうして?」
(詩蘇男)『あの子を助けてやってくれませんか?』
(山海)「え?」
(日太)「もしかして、君はあの女の子の事が…」
(詩蘇男)『……』
詩蘇男君は黙った。
(日太)「…そうか、隠れん坊が終わったらあの子の心も助けてやるよ」
日太は詩蘇男君と約束した。
(詩蘇男)『ありがとう』
詩蘇男君は頭を下げると《スゥ―》っと消えた。
(山海)「日太、お前は約束するのはいいがどうやって女の子を救う気だよ?」
(日太)「女の子の気持ち、俺には分かるから任せといて」
(山海)「…わかった」
(日太)「取り敢えず、今は界男達だ!」
(山海)「そうだった」
日太と山海は、全員が隠れている場所を考えていた。
(日太)「どうしたら」
山海が界男の服を調べていた。
(山海)「ちょっと、日太これ見てくれ!」
(日太)「ん?」
日太は山海が界男の服のポケットから見つけた物を日太に見せた
(日太)「これは!」
(山海)「これ、あの子が残してくれたヒントだよ」
(日太)「そうだな」
ヒントの内容を見た。
【888000211555552222255550003333115555522888888111334445511999888】
(山海)「何だよ、これ」
(日太)「……」
(日太)(…数字が綺麗に並んでる! 順番は適当だが同じ数字が並んでる部分が多い これを語呂合わせで読むのは難しいか 考えられるのは数字以外に必要な物が在ると言う事か …この状況で難しいヒントは無い! 簡単に解ける筈だ! 俺達が持ってる何かと合わされば簡単に――)
日太は近くに在る物を確認した。
(日太)(…衣類は無いな …衣類に関する数字と言えば《素材》と《サイズ》位だからな! …衣類以外だと《機器》位だな …定番の機器と言えば携帯電話か ……待てよ! …携帯電話には数字が在る! それに――)
(日太)「……! 分かったぞ!」
(山海)「え! …分かったのか日太!」
(日太)「ああ、これしかない!」
(山海)「何?」
(日太)「とりあえず、着いてきて!」
日太は界男のいる場所へ向かうため体育館を出た。
(山海)「これって!」
日太と山海が見たのは空が緑色で周りは学校の校舎と体育館以外は何もない世界だった。
(日太)「…どうやら、俺達は他の時空に来たようだな」
(山海)「た、助かるのか?」
(日太)「《かくれんぼ》に勝てば帰れるさ!」
(山海)「そ、そうだな」
日太と山海は界男がいる場所に着いた。
(日太)「此処だ!」
(山海)「此処って?」
(日太)「四階の五年生の教室だよ」
(山海)「え?」
(日太)「あのヒントの答えは『四階の五年生の教室にいる』だよ」
(山海)「どういう事?」
山海は未だに理解していなかった。
(日太)「たくっ! 携帯でヒントの記されてた数字を順番通りに打ってみれば分かるよ」
山海は携帯を取り出しヒントの通りに打った。
(山海)「…本当だ」
(日太)「つまり、この中に界男がいる!」
日太は扉を開けた。
(界男)「サミシイ…サミシイ…」
(山海)「界男のやつ狂っているよ」
(日太)「界男、みつけたよ」
界男の人魂は消えた。
(日太)「どうやら界男は救えたようだな」
(山海)「これでか?」
(日太)「よし、体育館に戻ろう!」
(山海)「あ、ああ」
日太と山海は体育館に戻った。
(日太)「界男、大丈夫か?」
(界男)「二人とも」
(山海)「よかった」
日太と山海は喜んだ。
(界男)「どうして」
(日太)「取り敢えず、今までの経緯を話すよ」
日太と山海は今までの経緯を界男に話した。
(界男)「…そうか」
(日太)「お前は、ここにいろ!」
(界男)「いや俺も加わるよ」
(日太)「いや、それは嬉しいけど、今は傷が開くかもしれない状態だ。ここで安静にしていた方がいい」
(界男)「…分かった」
界男を救った、日太と山海の二人は、次に救うのを完素に決めた。(残り三十二時と二十分)
二人目――
(日太)「山海…完素の服を調べないか?」
(山海)「そうだな」
日太と山海は界男の時と同じで完素の服に何か無いか調べた。
(日太)「何かヒントは、ないか?」
(山海)「こっちは、ないな」
(日太)「あったよ、山海」
(山海)「どれ」
日太は山海にヒントを見せた。
(迩家射廼庫右貯雨糸都煮医流世)
(山海)「なんだよ、これ」
(日太)「どうやら、漢字で書かれているけどよく解らないな」
日太と山海はヒントが解らずに悩んでいると界男が声を掛けて来た。
(界男)「なあ、二人とも」
(日太)「何だよ、界男」
(界男)「ちょっと、見せてくれない?」
(日太)「まあいいけど」
(界男)「ありがとう」
日太と山海は界男にヒントの紙を渡した。
(界男)「…解った」
(山海)「え!」
(界男)「校長室に完素がいるって」
(山海)「どういうこと?」
(界男)「これを平仮名にすると(にかいのこうちょうしつにいるよ)となるわけ」
(山海)「なるほどね、流石は界男だ。漢字検定1級並みだよね」
(界男)「まあね」
(日太)「取り敢えず、校長室に行こう!」
(山海)「ああ」
日太と山海は校長室がある2階に向かった。
(山海)「それにしても、日太は、何でオカルト系を信じているの」
(日太)「ああ、俺が今の家に引っ越してすぐに母が母方のお婆ちゃんかは…忘れたけど、母方の車が来て母が母方の車に乗って行った次の日に交通事故に遭ってさ」
(山海)「それと、オカルト系は関係無いだろ!?」
(日太)「確かに交通事故は…いや、関係が無いわけじゃないよ」
(山海)「どういう事だ?」
(日太)「本題はここからだよ」
(山海)「?」
(日太)「交通事故で母が死んで《葬式の日》俺は家にいた」
(山海)「何で葬儀に行かなかった?」
(日太)「まあ、家にはおじさんと父方の祖父母と父そして俺の5人が出かけたら家に誰もいなくなるだろ」
(山海)「確かに」
(日太)「…で、その日は自分一人が家で留守番していて自分の部屋にいたら隣のリビングを見ていたら、そこに粒子のような物質で出て来た」
(山海)「粒子のようなもの?」
(日太)「ああ、詳しくは判らないが形が《人の形》をしていてそいつが急に信号でやる左右確認をして台所の方に向かった」
(山海)「怖くないぞ?」
(日太)「当たり前だろ! だってこれって俺が小学生に上がる前の出来事だから曖昧だから怖くないだけだよ」
(山海)「…成程な」
日太と山海は談笑しながら校長室に着いた。
(山海)「…ここに完素がいるのか」
山海は扉を開けた。
(山海)「完素!」
(完素)「キテクレタ…キテクレタ…」
(山海)「たくっ!完素も!」
(日太)「完素、見~つけたっ!」
日太がそう言うと完素の魂は消えた。
(日太)「よし、体育館に戻ろう!」
(山海)「ああ!」
日太と山海は体育館に戻った。
(日太)「完素はどうだ」
(界男)「いや、まだだよ」
その時、完素が目を覚めた。
(完素)「お前ら、どうした?」
(山海)「よかった」
(日太)「取り敢えず、今までの経緯を話すよ」
(完素)「?」
日太は完素に今までの経緯を話した。
(完素)「…そうだったのか」
(日太)「ああ」
(完素)「界男、助かったよ」
(日太&山海)『俺達は!』
日太と山海は完素に突っ込んだ。
(完素)「お前らも、だよ」
(日太)「そりゃあそうだろ!」
(完素)「……俺も加わるよ」
(日太)「いや、無理するな」
(完素)「無理なんかしてないよ」
(日太)「完素…体を確認してみな」
完素は体を見た。
(完素)「何だよ、これ」
(日太)「完素は、傷が開くといけないから安静にした方が賢明だ」
(山海)「……そうだな」
(界男)「そう」
(完素)「分かったよ」
日太と山海は界男に続いて完素を助けて次に助けるのは丹波と決めた。(残り三一時間と十分)
三人目――
日太と山海、界男は丹波の服を調べた。
(日太)「ヒントは、そっちにあるか?」
(山海)「こっちには、無いぞ」
(日太)「こっちもだ」
(界男)「こっちにあったぞ」
ヒントが書かれている紙を界男が見つけた。
(界男)「でも、これ何だ?」
(山海)「どれ、見せてみ」
界男は山海に渡した。
(山海)「何だよ、これ」
山海と日太はヒントの内容を見た。
(苺の真中にいるよ)
(日太)「どういう事だ?」
(山海)「訳分からないな」
(完素)「ちょっと、見せくれるか」
完素にヒントを見せた。
(完素)「これ、簡単だよ」
(山海)「いや、難しいぞ、これは!」
(完素)「いや、簡単すぎだよ!」
(日太)「…言ってみ」
完素はヒントの謎を解いて見せた。
(完素)「まず、苺の字を平仮名にする」
(日太)「うん、それで」
完素はヒントの紙に苺を手に付いていた血で平仮名にして書いた。
(完素)「苺は、「いちご」となるよな」
(山海)「ああ」
(完素)「いちごは、数字の1と5にもなる」
(日太)「ああ、確かに」
(完素)「そして、真中に入るよ」
(界男)「ああ」
(完素)「真中とは、1と5の真中となる」
(日太)「じゃあ」
(完素)「そう、1と5の真中は、3になる」
(日太)「そういう事か!」
(完素)「そう、丹波がいるのは、3年の教室だ」
(日太)「よし、行くか!」
(山海)「ああ!」
(界男)「ちょっと、待って!」
(山海)「ん?」
界男が呼び止めた。
(日太)「何だよ?」
(界男)「俺も行く!」
(日太)「いや、駄目だ!」
(界男)「何で?」
(日太)「完素のそばにいてやれ」
(界男)「え?」
(日太)「此処で何かあったら、大変だからお前が完素を守れ!」
(界男)「……分かった」
(日太)「じゃあ、完素を頼むぞ」
(界男)「ああ、任せとけ!」
日太と山海は界男に完素の事を任せて丹波が居る《3年生の教室》に向かっていた。
(山海)「大丈夫かな?」
(日太)「ん、何が?」
(山海)「界男達だよ」
(日太)「ああ、大丈夫だよ」
(山海)「そうだな、今は丹波達を救出に集中しなくちゃ」
(日太)「そう、そう」
日太と山海は3年生の教室前に着いた。
(日太)「よし、開けるぞ」
(山海)「ああ」
日太は教室の扉を開けた。
(丹波)「タノシイナ…タノシイナ…」
(山海)「こいつもか!」
(日太)「丹波、見―つけた」
丹波の魂は目の前から消えた。
(日太)「山海、体育館に戻るぞ」
(山海)「ああ」
日太と山海は体育館に戻った。
(日太)「丹波、大丈夫か?」
(丹波)「俺は、一体どうしたんだ?」
(山海)「ふう、よかった」
(丹波)「あれ、山海、日太、界男、完素何で皆いるの?」
(日太)「丹波…今までの経緯を言うよ、落ちついて聞けよ」
(丹波)「?」
日太は丹波にこれまでの経緯を教えた。
(丹波)「そうか」
(山海)「日太、後は淡堕だけだよ」
(日太)「そうだな」
(丹波)「なあ」
(日太)「なんだよ、丹波」
(丹波)「俺も連れてってくれ」
(日太)「…」
(丹波)「頼む」
日太と山海は目を合わせた。
(日太)「無理だよ」
(丹波)「何で!?」
(日太)「お前を連れて行くのは無理だよ」
(丹波)「どういう事」
(日太)「例の女の子の霊との約束なのさ」
(丹波)「?」
(山海)「俺達、二人で四人を見つける事がルールなんだ」
(丹波)「?」
(日太)「つまり、俺と山海以外の人間の参加は無理ってこと」
(丹波)「そんなぁ」
丹波が落ち込みそうなその時、界男が丹波に話しかけて来た。
(界男)「丹波」
(丹波)「何?」
(界男)「確かに日太達の言うとおりだよ …けどな、校舎に入るのは二人だけって言う事だけでここでヒントの答えを見つける事に関してはここにいる皆で出来る! だから落ち込むなよ!」
界男の説得で丹波は気を取り戻した。
(丹波)「ありがとう、界男」
(界男)「いや」
界男は完素の元に駆け寄った。
(完素)「それになあ、丹波」
(丹波)「ん?」
(完素)「お前も傷を負っている」
(丹波)「え?」
丹波は自分の体を調べた。
(丹波)「何だよ、これ!?」
丹波は傷を見て驚いた。
(山海)「……」
(日太)「それが、女の子によってつかれた証拠だよ」
(山海)「悪い、俺のせいだ」
山海は丹波に謝ったのを見て日太は溜め息を吐いた。
(日太)「山海! 謝るのは今じゃないだろ」
(山海)「え?」
(日太)「皆が集まって、そこで謝るのが当たり前だろ」
(山海)「…そうだな」
(日太)「丹波、この件については…」
(丹波)「分かっている」
こうして、日太達は三人目である丹波を救出する事に成功した。そして最後の人物淡堕を救出に入る。(残り二六時間と四〇分)
四人目と日記とカウントダウン――
日太達は淡堕のヒントを探した。
(界男)「あったぞ、二人とも」
界男がヒントの紙を見つけた。
(山海)「界男、見せてくれ」
山海が紙を見た。
(山海)「何だ、これ?」
山海が頭を傾けた。
(日太)「山海、俺にも」
(山海)「ああ、悪い」
日太はヒントの紙を見た。
(日太)「何だ、これは!」
日太が見た、ヒントの内容とは――
【・名有って実無し】
【・合縁奇縁】
【・多岐亡羊】
【・先んずれば人を制す】
【・羽目を外す】
【・汗馬の労】
(日太)「…意味が分からん」
日太達の話を聞いていた丹波が言った。
(丹波)「…お前らちょっとその紙を俺に見せてくれないか?」
日太達はお互いを見て渋々、丹波にヒントの紙を見せた。
(日太)「…まあ、いいけど」
丹波はヒントの紙を見た。
(丹波)「…やっぱり!」
丹波はヒントを解いた。
(山海)「説明してくれ!」
山海は丹波に答えを教えてほしいと頼んだ。
(丹波)「…教えてあげる」
丹波は全員に解り易く教えた。
(丹波)「まず、これを平仮名に直す」
丹波は紙にかいてある文字の右横に自分の血で平仮名を書いていった。
(丹波)「これを平仮名にすると…」
【・なあってじつなし】
【・あいえんきえん】
【・たきぼうよう】
【・さきんずればひとをせいす】
【・はめをはずす】
【・かんばのろう】
(丹波)「…っと、こうなる」
(日太)「で?」
(丹波)「お前らは何か気になる事は無いか?」
丹波は全員に訊いた。
(日太)「…! 全部が〈あ〉の行か!」
日太は気付いた。
(山海)「どう言う事?」
(日太)「…だから、平仮名の全部の最初の文字が〈あ〉行…つまり、あ・か・さ・た・なの横の配列になっていた」
日太は全員に教えた。
(界男)「それで」
界男は先を訊いた。
(丹波)「…先ずは、日太の言う通りに全部が平仮名の一番上の横配列は意図的な事だ。…だが、それなら他の諺でも良い筈なのに何故? この諺なのか? 鍵は漢字の画数と諺の数にあった」
(界男)「…漢字の画数と諺の数?」
全員が丹波の回答を熱心に聴いた。
(丹波)「…最初の漢字の画数は全てが六画で諺の数は六個…答えは唯一つ…淡堕が居る場所は六年の教室だ!」
丹波は淡堕が居る場所を答えた。
(日太)「丹波でかしたぞ!」
日太は丹波を褒めた。
(日太)「…六年の教室に行くぞ!」
(山海)「…ああ」
日太と山海は六年生の教室に向かうため階段を昇っていた。
(日太)「…ちょっと待って!」
(山海)「ん、どうした?」
日太は足を止めて山海を止めた。
(日太)「前を見てみろ!」
(山海)「え?」
三階に行くための階段が無くなっていた。
(山海)「どうする?」
山海は日太に訊いた。
(日太)「…仕方ない、別の階段で行こう」
(山海)「そうだな」
日太は他の階段に行く為に二階の廊下を歩いた。
(山海)「他の道は、大丈夫かな?」
(日太)「大丈夫だよ、きっと」
日太と山海が職員室の横を通っていたら職員室の中を何かが動いた。
(山海)「おい、日太?」
日太は職員室の扉の方に行くと勢い良く扉を開けた。
(山海)「どうした?」
山海は日太に何があったか訊いた。
(日太)「…今、職員室の中で何かが動いて」
山海も職員室を見た。
(山海)「誰もいないぞ!」
山海も中を見たが誰も居なかった。
(山海)「……日太、一つ気になることが」
(日太)「何だよ?」
(山海)「ここ何で、物がある?」
(日太)「…さあな」
廃校になっても職員室には何故か物が散乱していた。
(山海)「…あっ!」
(日太)「どうした?」
(山海)「机の上に…」
山海の指さした机の上に何か物があった。
(山海)「日太、これは?」
(日太)「たぶん、誰かの日記帳だろう」
(山海)「え!」
日太と山海は日記帳の内容を読んだ。
(四月一四日 同級生からいじめられた)
(四月一八日 今日は友達から「死ね!」って言われた)
(四月二二日 お兄ちゃんと彼氏のあの子しか私を大事に思っていない)
(四月二六日 お兄ちゃんが交通事故で死んじゃった)
(五月四日 彼氏のあの子が学校で首を吊って死んじゃった。 もう誰も救いの手がない私どうしたらいいの …誰か助けて)
(五月六日 今日は学校に行ったら同級生から私の事を「人殺し!」と言って来た)
(五月九日 私もう生きる気がしなくなってきた。 …もう死にたい。あの子が死んだ学校で…)
(五月一八日 明日は学校お休みだから明日あの子のもとに行こう…)
(私、林寸 遊子は、いじめを苦に死にます。私をいじめていた奴らに地獄を見せてやる。あの子のもとに行きます …さようなら)
日太と山海が読んだのは林寸 遊子【りんすん ゆうこ】という女の子の日記帳だった。
(山海)「林寸って…」
(日太)「ああ、間違いないあの女の子の日記帳だ」
(山海)「そうじゃねぇよ!」
山海は日太に突っ込んだ。
(山海)「…でも、何でここに?」
(日太)「ここで、死んだけどこの日記帳だけは、見つからなかったってことだろう」
日太が日記帳をジャンパーの右ポケットに入れた時…。
(山海)「おい、日太! あれ!」
山海が指を指した棚に光る物があった。
(山海)「…この棚、開くのか?」
日太は棚の扉を開けようと手を掛けた。
(日太)「…鍵が掛かっている」
棚の扉には鍵が掛かっていた。
(日太)「たぶん、この部屋のどこかに鍵があるはず…」
(山海)「探そう!」
日太と山海は、淡堕の場所に向かう前に棚の中にある物を確認するために棚の扉の鍵を探した。
(山海)「鍵を見つけたぞ!」
山海が鍵のある場所を見つけた。
(日太)「山海、鍵を持てるだけ持ってこい!」
(山海)「分かった」
山海は鍵を持てるだけ棚の所まで持って来た。
(山海)「これをどうするの?」
(日太)「先ずは後ろの机に鍵を置いてくれ、そうしたら次は鍵を一つずつ俺に渡してくれ棚の鍵と違ったら俺がお前に渡すから鍵を置いた机の隣の机に置いてくれ! これを繰り返して棚の鍵を見つける!」
(山海)「分かった!」
山海は持って来た全ての鍵を机に置いた。
(山海)「先ずはこれだ!」
山海は日太に一つ目の鍵を渡した。
(日太)「…これじゃないな」
日太は山海に鍵を渡して山海は日太から渡された鍵を鍵の束が置いてある机の右隣の机に置き山海は次の鍵の束から新しい鍵を日太に渡した。
(山海)「次はこれだ」
日太は鍵を棚の鍵穴に入れた。
(日太)「…これじゃないな」
日太と山海はそれを続けて十八本目…。
(山海)「これで鍵の数は半分だよ」
日太は山海から渡された鍵を鍵穴に入れた。
(日太)「…よし、開いたぞ!」
(山海)「…ふぅ」
日太と山海は棚を開けた。
(日太)「さっき、光っていたのってこれか?」
(山海)「そうだな」
日太と山海が中を見ると古いノートがあった。
(山海)「これは?」
(日太)「…もしかして」
日太はジャンパーの右ポケットからさっき読んだ遊子と言う女子の日記帳を出した。
(山海)「どうした?」
(日太)「この日記帳の内容に彼氏と書いてあった部分が多々見られる。彼氏はこの学校で首をつって死んだ事が記されているから…」
(山海)「確かに…」
(日太)「あの女の子がここで遺体として見つかったっていう事は女の子と彼氏は職員室で自分の体を自ら捨てた事になる」
(山海)「…でも、何で女の子の方はああいう事になったの?」
(日太)「あの子の日記にお兄ちゃんと彼氏の二人以外の家族や近所に住んでいる人達・先生達・あの子の同級生…というかこの学校に入学している生徒全員・教頭・そして校長の皆が女の子に苛めをしていた」
(山海)「ああ、そうだな」
(日太)「そして一人で遊ぶことになる」
(山海)「一人じゃないだろ」
(日太)「…確かにお兄ちゃんと彼氏の二人はいたが他の子と遊べなかっただろうな」
(山海)「…確かに」
(日太)「…つまり他の子と遊べなかった」
(山海)「なるほど」
(日太)「まぁ、俺の推測だけどな」
(山海)「だけど、その可能性は高い」
(日太)「…それは置いといて日記帳の中身を読もう」
(山海)「そ、そうだな」
日太と山海は古いノートを読んだ。
(四月五日 また遊子がいじめにあっていた)
(四月一八日 今日は遊子が同級生に「死ね!」と言われていた。下校は遊子を安心させるために一緒に帰った)
(四月一九日 遊子の事を思っているのは僕と遊子のお兄さんだけだ)
(四月二六日 遊子のお兄さんが交通事故で亡くなった。きっと遊子の事を思っていない奴らが起こしたのかもしれない)
(五月三日 今日の夕方に遊子をいじめていた同級生を納得させるために学校で待ち合わせをした。僕は遊子を必ず救ってやる)
日太は、日記帳を閉じた。
(山海)「これって、どういう事だよ?」
(日太)「俺達は大きな間違いをしたのかもしれない」
(山海)「どういう事だ?」
(日太)「あの子の日記を読んで彼氏の所を読むと彼氏が自殺をしたと思ったが違ったようだ」
(山海)「?」
(日太)「お兄さんも彼氏もあの子への苛めを止めようと行動していた」
(山海)「だとしたら、今を生きている皆は愚かな人間ってことか?」
(日太)「いや、全員じゃないけどただあの子の味方は二人だけだったって事だけは確かだ」
(山海)「つまり、あの子が許せるのは兄と彼氏の二人だけと言う事か」
(日太)「そうだ! そしてあの子が許せないのは、生きている人間全てという事だ」
(山海)「だとしたら、あの子の心を変えられるのか?」
(日太)「…いや、変えるのは俺達の方だよ。…それに」
(山海)「それに?」
(日太)「二人ともあの子を助けるために動いていたがお兄さんは交通事故で彼氏は首を吊って亡くなっているが本当は殺人だったって事だ」
(山海)「でも、事件を事故にする事って不可能に近いだろ」
(日太)「確かにそうだろうな」
(山海)「だったら、どうやって」
(日太)「…一つだけ不可能を可能にする事が出来る」
(山海)「え!」
(日太)「警察の誰かがグルだったらどうだ?」
(山海)「確かにそれなら可能性は非常に高くなる」
(日太)「それに彼氏は首を吊って亡くなっていたと女の子の日記帳には書いてあった」
(山海)「…確かに」
(日太)「これもあの子を苛めていた奴らが殺していたら」
(山海)「そんな馬鹿な!」
(日太)「ようく、思いだしてみろ」
(山海)「え?」
(日太)「彼氏が自殺だとしたら遺書が無いと不自然だろ」
(山海)「え、遺書なんて最初から無かったのでは?」
(日太)「いや、その可能性は低い」
(山海)「どうして、言いきれる」
(日太)「仮にも自殺だとしたら遺書はあの子も見るはずだ」
(山海)「…あっ! そういえば!」
(日太)「それに、彼氏の日記に彼女に苛めをしていた奴らを学校に呼んでいる」
(山海)「確かに」
(日太)「それにこの日記帳がなぜここにあるのか分かるか山海」
(山海)「え!分かるかって…」
(日太)「あのなあ、この日記帳を書いたのがここって事だ」
(山海)「だとしたら、ここで…」
(日太)「そう、彼氏と女の子は同じ場所で亡くなったって事だ」
(山海)「だとしたら、運命なのかね」
(日太)「そうだとしてもこんな運命は許せない!」
(山海)「俺も!」
(日太)「まあ、寄り道はこれぐらいにして本題に戻ろう」
(山海)「あっそうだった」
日太と山海は職員室を出て淡堕のいる6年の教室に向かった。
(山海)「あのさ、日太」
(日太)「ん?」
(山海)「あの階段さっきまで使っていたのに何でさっきは階段がボロボロになっていて使えない状態だったよな」
(日太)「それは、簡単な話だよ」
(山海)「?」
(日太)「ここが、老朽化しているだけ」
(山海)「は?」
(日太)「つまり、学校が現実の世界にあった時に風化とかで消えていっているだけ」
(山海)「つまり、ここが消えかけているって事か?」
(日太)「…その通り」
(山海)「やばいだろ」
(日太)「いや、大丈夫だよ」
(山海)「え?」
(日太)「五年生の時にインターネットでここを調べていたら階段が一つだけあったらしい」
(山海)「どういう事?」
(日太)「最終的には人の手によって壊そうとしたみたいだけどそれまでは老朽化や風化によって壊れていっただけ」
(山海)「だとしても、どうして壊そうとした?」
(日太)「たぶん、あの子達を殺した人間達が壊そうとしたって事じゃないか」
(山海)「だとしたら、あの子達が亡くなって九十年以内に全てが壊されて人の記憶から抹消されたって事か」
(日太)「いや、それに反対する者達がいた」
(山海)「え?」
(日太)「あの子達がここで起きた出来事を忘れないようにするために守っている」
(山海)「でも、あの子は気が狂っているそんな事が出来るのか?」
(日太)「いや、詩蘇男君がやったのさ」
(山海)「え!」
(日太)「あの子を助ける為に…」
(山海)「でも、それじゃここでの出来事は分からないよ」
(日太)「いや、不可能じゃない」
(山海)「どういう事?」
(日太)「あの子を助けるって事はあの子の全てを理解してそこから何かを感じ取って受け止めてそしてその子の気持ちを救う…それこそ死蘇男君が願っていた事だ」
(山海)「つまり、恐怖や復讐などの感情で相手を遊ぶような気持ちで人を傷つけちゃいけないという事か」
(日太)「さらにひとつ加えると…自分達の思いが他人ではなく自分の事しか考えてない人達は、滅ぶと言う事だろうな」
(山海)(俺達はどう何だろう?)
(日太)「山海…大丈夫だよ」
(山海)「!」
(日太)「俺達は他人のため…いや、心を救う事が一番だよ」
(山海)「そうだな」
日太と山海は体育館から遠くの階段に着いた。
(山海)「日太、何で体育館から遠い階段に?」
(日太)「さっき言ったよな」
(山海)「…ああ、インターネットでここを調べたって事か?」
(日太)「そうだ!ここは学校の中で最後に残った階段だ」
(山海)「だとしたら、急がないとまずいよな」
(日太)「だとしても、歩いて登らないと」
日太と山海は階段を登り四階へ――
(山海)「よし着いた」
(日太)「山海、ここから気をつけろよ」
(山海)「え?」
(日太)「ここに来た時よりも、ボロボロになり始めている、気をつけた方が良い」
山海は、周囲を見た。
(山海)「確かにそうだな」
日太と山海は慎重に六年の教室に向かった。
(日太)「山海、そこ気を付けろ」
(山海)「ああ」
日太を先頭にして前に進んだ。
(日太)「ちょっと待て!」
(山海)「ん?」
日太と山海が前を見たら床に大きな穴が開いていた。
(山海)「ど、どうすんだよ」
(日太)「跳び越えるしかないな」
(山海)「マジで!」
最初に日太が向こう側に跳んだ。
(日太)「よし、山海」
(山海)「お、おお」
次は山海が向こう側に跳んだ。
(日太)「よし、六年の教室に行くぞ」
(山海)「お、おお」
日太と山海は六年の教室に向かった。
(山海)「日太、体育館に戻る時はどうする?」
(日太)「まあ、大丈夫だろ」
(山海)「そんな適当な」
そんなこんなで日太と山海は六年の教室に辿り着いた。
(日太)「六年の教室はここだな」
(山海)「どうせ、淡堕も気が狂っているだろうな」
(日太)「まあね、じゃあ開けるぞ」
日太は六年の教室の扉を開けた。
(淡堕)「コノヤロウ…コノヤロウ…」
(山海)「淡堕…」
(日太)「淡堕、見~つけた」
淡堕の魂が目の前から消えた。
(日太)「よし、淡堕の魂も体に戻ったから俺達も戻ろう」
日太と山海は体育館に戻った。
(日太)「淡堕、大丈夫か?」
淡堕の目が開いた。
(淡堕)「俺は、一体?」
(日太)「良かった」
(淡堕)「あれ、日太、何でいるの?」
(日太)「ああ、山海に呼ばれて来た」
(淡堕)「山海…あっ、てめぇ!」
淡堕は山海をぶん殴った。
(山海)「……」
山海はぶん殴られても何も言わない。
(淡堕)「お前があんな事を言わなければ」
(山海)「……」
山海は黙り込んでしまった。日太は界男達のもとに向かった。
(日太)「そもそも何で、お前達はここに来たの?」
(界男)「ああ、山海が肝試しをしようと」
(日太)「…成程ね」
淡堕は山海の顔を殴りまくっていた。
(界男)「おい、淡堕やり過ぎだ!」
日太と界男が止めに入った。
(日太)「淡堕、やり過ぎだ!」
(淡堕)「お前も山海の味方かよ!」
淡堕は界男に怒った
(界男)「それは…」
界男が黙り込んだ。
(淡堕)「ふん、やっぱお前も山海の味方かよ」
(日太)「淡堕!」
(淡堕)「何だよ、日太」
日太は淡堕をぶん殴った。
(淡堕)「何すんだよ!」
(日太)「淡堕…俺はお前が女の子に刺された一部始終を見ていた」
(淡堕)「何?」
(日太)「お前は他の皆とは違い自分の事を言っていた」
(淡堕)「どういう事だ!」
(日太)「覚えていないだろうな」
(淡堕)「何?」
(日太)「あの時のお前は『死にたくない!』と言った」
(淡堕)「皆も同じだろがぁ!?」
(日太)「いや、他の皆は山海の事を言っていたよ」
(淡堕)「皆、本当なのか?」
淡堕の問いに界男が答えた。
(界男)「確かに日太の言うとおりだけど最初は自分の事を思っていたけれど意識が朦朧としてきた時に山海の事が心配になっていった」
(淡堕)「どうしてだ?」
(界男)「ん?」
(淡堕)「どうして…そこまで山海の事を?」
丹波が答えた。
(丹波)「友達だからに決まってるだろ!」
(淡堕)「だとしたら」
(丹波)「ん?」
(淡堕)「俺とは友達じゃないと?」
完素が答えた。
(完素)「お前とも友達だよ」
(淡堕)「だったら何で止めた!? 此処に居る日太と山海以外の皆は俺と同じ気持ちがあるのなら何でそう行動しない!?」
日太が答えた。
(日太)「皆その思いは捨ててないと思う」
(淡堕)「だったら!」
(日太)「…はぁ」
(淡堕)「その溜息は何だよ!?」
(日太)「淡堕、覚えてないのか?」
(淡堕)「?」
(日太)「たくっ、お前の腹を見てみろよ」
淡堕は腹を見た。
(淡堕)「な、何だよ、これ!?」
(日太)「やっぱり、覚えてないか」
(淡堕)「お、教えてくれよ!」
淡堕は泣きながら訊いて来た。
(日太)「簡単に言うと、俺と山海以外の皆はここに住んでいる霊に刺されてお前らの魂を霊が持ち去ってそれを俺達が取り戻した」
(淡堕)「え、山海も?」
(日太)「そうだ」
(淡堕)「ありえない」
この事に山海が答えた。
(山海)「皆、すまない!」
日太以外の皆が驚いた。
(山海)「俺がこんな所に連れて来なければこんな目に遭わなかった…本当にすまない」
(日太)「……」
山海は頭を下げた。この事に淡堕が答えた。
(淡堕)「…もう、いいよ」
(山海)「! ……ありがとう」
山海は涙ぐんだ。
(完素)「お前ら良い感じの所、悪いがこれまでの事を淡堕に話さないと」
(日太)「おっと、そうだった」
日太は今までの事を話した。
(淡堕)「そうか」
淡堕は納得したようだ。
日太と山海は、此処に来た皆の魂を見つける事が出来たが後は女の子の霊が残っている(残り十六時間と二十二分)
・女の子の霊と皆の家系が繋がる
(界男)「日太と山海は、これからどうする?」
(日太)「後、一人だけ残っている」
(完素)「一人?」
(日太)「そうだ」
(丹波)「誰かまだ…」
日太と山海以外の皆は周りを見た。
(淡堕)「俺達以外には誰もいないだろ」
(日太)「最後の相手は…この子だ」
日太は女の子の日記帳を見せた。
(淡堕)「何だ、それ?」
(界男)「これって…」
(日太)「お前らを連れて行った女の子の日記帳だよ」
(淡堕)「あいつか」
(丹波)「でも、何で?」
(日太)「ここは、他の空間にある」
(淡堕)「は?」
(完素)「じゃあ、どうやって出るの?」
(日太)「この子の心を救うしか此処から出る方法は無い!」
(山海)「でも、この子の場所が分からないと――」
(日太)「いや、おおよその見当は付いている」
山海と皆は驚いた。
(山海)「分かるって?」
(日太)「山海」
(山海)「ん?」
(日太)「これを見つけたのは何処だっけ?」
(山海)「確か…!」
山海も場所が分かったようだ。
(山海)「そういう事か!」
(日太)「ああ、恐らくお前が思っている場所に女の子の霊がいる」
(界男)「どういう事だ?」
皆は当然まだ分かっていなかった。
(丹波)「教えてくれよ」
(日太)「そうだな…」
(山海)「なあ、日太…あの日記帳も見せたら」
(日太)「そうだな」
日太は皆に女の子の彼氏の日記帳を渡した。
(界男)「これは?」
(日太)「ああ、あの女の子の彼氏が書いていた日記帳だ。読んでみろ!」
皆は日記帳の内容を読んだ。
(界男)「……そうか、あの女の子は苛めの被害者だったのか」
(丹波)「でも、どうして女の子はこんな事を?」
(日太)「恐らく、彼氏のもとに行こうとしたが心残りがあった」
(淡堕)「?」
山海が言った。
(山海)「あの子は彼氏とお兄さんの二人しか遊ぶ人がいなかった」
(日太)「つまり、あの子は彼氏とお兄さん以外の人と遊びたくて此処に来た人たちと遊びたくて此処に来た人の前に現れて「アソブ?」と言い否定すればお前達のような事をしていた」
(界男)「成程ね」
皆は納得したが界男が言った。
(山海)「でも、俺は否定もしないで刺されたぞ」
この事に日太は簡単に答えた。
(日太)「だから、あの子は理性が無くなり始めている」
(山海)「…成程!」
(日太)「そろそろ、女の子のいる場所に行かないと」
(山海)「ああ」
(男性)『チョット、マッテクダサイ』
皆この声が聴こえた方向に振り向いた。そこには十五歳ぐらいの男性の霊がいた。
(日太)「…貴方はもしかして」
(男性)「はい、遊子の兄の林寸 救男です」
日太達の前に現れたのは遊子の兄の林寸 救男【りんすん きゅうお】だった。
(日太)「でも、なんでここに?」
(救男)『はい、一つ気になる事が』
(日太)「何でしょう?」
(救男)『君達は、どうして此処に?』
山海がまず答えた。
(山海)「……俺は、なんとなく」
他の皆はちょっと怒り顔で山海を睨んだ。
(救男)『何となく、ですか?』
(山海)「はい」
(救男)『君は?』
日太はこの救男の問いに答えた。
(日太)「俺は、こいつの電話で此処に来た」
(救男)「電話で?」
(日太)「はい」
(救男)『君達の名前を教えてくれないかな?』
日太達は名前を教えた。
(日太)「俺の名前は、林寸 日太です」
(山海)「俺の名前は、鮫熊 山海です」
(界男)「俺の名前は、哀世 界男です」
(丹波)「俺の名前は、水楽 丹波です」
(界男)「俺の名前は、喜未 完素です」
(淡堕)「俺の名前は、濃怒 淡堕です」
(救男)『! まさか、君達があの家系の人達だったとは』
救男は驚いたようだった。
(日太)「どうかしましたか?」
(救男)『遊子を苛めていた者達が君達の家系の人達だったのです!』
(全員)『え!』
日太達は騒然とした。
(救男)『特に酷く虐めていたのが山海君の家系と日太君の家系です』
(全員)『え!』
日太達は更に驚いた。
(救男)『妹の彼氏である詩蘇男は山海君の家系の者です』
(日太以外)『え!』
日太以外の全員が吃驚した。
(救男)『僕と遊子は日太君の家系の者です』
日太は愕然とした。
(救男)『貴方方二人に頼みがあります』
(日太)「はい」
(救男)『遊子を救って下さい、お願いします』
(日太)「分かっています」
(救男)『え?』
(日太)「詩蘇男君から頼まれていますから」
(救男)『…そうですか』
(山海)「はい」
(救男)『でも、こんな事が起きるとはね…運命のイタズラかね』
そう言って救男さんは消えた。
(日太)「じゃあ、俺達はあの子が隠れている場所に行くよ」
(淡堕)「ああ」
(日太)「行くぞ、山海」
(山海)「ああ」
日太と山海は体育館を出た。
(山海)「……にしても、俺達皆があの子の関係の者だったとは」
そう山海が言った。
(日太)「そうだな」
日太と山海は女の子がいると思われる場所へ――
(山海)「此処だよな」
(日太)「ああ」
日太と山海が居るのは職員室の前だ。
(日太)「……では、扉を開けるぞ」
(山海)「あ、ああ」
日太は扉を開けた。
(女の子)『フフ、ヨクミツケタネ♡』
(日太)「まぁね」
(女の子)『ジャア、ナニシテ、アソブ?』
日太と山海は目を合わせて日太にこの子を救いだす事を任せた。
(日太)「…なぁ、もうやめよう」
(女の子)『ナニイッテッルノ?』
(日太)「君はどうして死のうとしたの?」
(女の子)『ソレハ…』
(日太)「詩蘇男君の所に行く為じゃなかったの?」
(女の子)『ナンデシソオクンノコトヲ?』
(日太)「詩蘇男君に頼まれたからだよ」
(女の子)『シソオクンガ?』
(日太)「ああ、君を救ってくれと!」
(女の子)『ワタシヲ……』
(日太)「それに此処に居る山海は詩蘇男君の家系の者だよ」
(女の子)『エ!』
(日太)「そんな俺も君の家系の者だ」
(女の子)『ソンナ』
(山海)「君に伝えたい事がある」
(女の子)『ナニ?』
(山海)「君のお兄さんと詩蘇男君は殺されたようだ」
(女の子)『コロサレタ?』
(日太)「ああ、詩蘇男君は日記を書いていた」
(女の子)『日記を?』
女の子は一瞬だけ理性を取り戻した事で言葉がはっきりとしてきた。
(山海)「ああ、それがこれだ」
山海が持って来た詩蘇男君の日記帳を日太に渡した。
(女の子)『ソレガシソオクンノニッキ…』
(日太)「そうだ」
日太は詩蘇男君の日記帳を女の子に見せた。
(日太)「ここに君を虐めていた者達を呼んで止めようとしたらしい」
(女の子)『ジャア』
(日太)「そう、詩蘇男君は他殺だった」
(女の子)『ソンナ』
女の子は顔に手を被せて泣いた。
(日太)「今の君は、虐めをしていた者達と同じ事をしている」
(女の子)『……』
女の子は泣くのを止めた。
(山海)「詩蘇男君は君の言動を望んでいると思うかい」
(女の子)『ソレハ…』
女の子は顔をそむける。
(日太)「君は、理性を失い死ぬ直前の思いのまま言動していた」
(女の子)『……』
話を少し変えて女の子の日記帳の事に話題を変えた。
(日太)「…君の日記帳も見たよ」
(女の子)『え!』
女の子は驚いたようだ。
(日太)「君の日記帳の最後に詩蘇男君のもとに行くと書いてあった」
(女の子)『……』
(日太)「君は詩蘇男君のもとに行こうと死のうと思い首を吊ろうとした。その時に他の事を考えたそうだろ」
(女の子)『…ソレハ…』
(日太)「死ぬ時に君は皆と楽しく遊びたかったそう思い死んだ、そうだね」
(女の子)『…ソウヨ』
(日太)「もう、そんな気持ちとはさよならだ」
(女の子)『エ!』
(日太)「君にとって一番だと思うのは詩蘇男君達のもとに行く事が良いと俺達は思う」
(女の子)『……』
女の子がまだ心が変わらないようなので話しを少し変えた。
(日太)「君にとって、兄とは何?」
(女の子)『ソレハ…』
日太にとっての兄について話した。
(日太)「俺が思うに大切で憧れる人物の一人だと思うけど君はどうだ」
女の子は自分の兄(救男)がどうゆう風に見えていたかを話した。
(女の子)『ワタシノアニハ、ドンナコトニモクジケズニガンバルニンゲンデアニハ、タイセツナアニデシタ』
(日太)「そうだよな、だったら、今の君をお兄さんが見たらどう思うだろうね」
(女の子)『ソレハ…』
女の子は、顔を下げた。
(日太)「それに君は詩蘇男君の気持ちを無駄にさせるのか?」
(女の子)『ソンナコト…』
(日太)「君は気持ちを切り替えて詩蘇男君達のもとへ行くべきだよ」
(女の子)『……ウン♡』
女の子の気持ちは救う事が出来た。
(日太)「やっと、分かってくれようだね」
(女の子)『ウン、アリガトウ♡』
(日太)「!」
そう言い女の子の体が光り始めた。
(山海)「何だ!?」
(女の子)『お兄ちゃん達のおかげで私はお兄ちゃん達のもとに行けるわ』
(日太)「…そうか」
山海は小声で話してきた。
(山海)「日太」
(日太)「何だよ、こんな時に」
(山海)「俺達はどうするの?」
(日太)「あっそうだった」
(山海)「お前なあ」
(日太)「ごめん、ごめん」
(山海)「…まあ、良いけど」
女の子が消えかけた時、女の子が話しかけて来た。
(女の子)『大丈夫だよ♡』
(日太)「え?」
(女の子)『ふふ、じゃあね♡ ありがとう♡』
(日太)「うわ!」
女の子は満面の笑顔をしたと思ったら目の前が光って見えなくなった。
(日太)「ここは?」
(山海)「うっ!」
(日太)「山海、皆大丈夫か!」
(山海)「ここは、一体どこだ?」
皆は周りを見て山海が気付いた。
(山海)「ここ、あの学校があった場所だ!」
(日太)「え!」
そこは、空き地となっていた。
(淡堕)「これは、一体どう言う事だ?」
そう淡堕が言った。
(山海)「恐らく、あの学校その物がもうこの世には無く詩蘇男君達があの女の子を救って欲しいとこの世に現した存在だった」
そう山海が言った。
(界男)「だとしても、女の子は気が狂っていたそれは大きな賭けに等しい」
そう界男が言った。
(界男)「確かにそうだが、もしあの二人でも無理だったらどうなる?」
そう完素が言った。
(丹波)「そうか、二人の思いが伝わらなかった。そこで、生きている人間達に自分達の思いを…願い託した」
そう丹波が言った。
(淡堕)「だが、来たのは、俺達が最初だった」
そう淡堕が言った。
(日太)「取り敢えず、皆はこれからどうする?」
日太は皆に訊いた。
(山海)「もう、夜だし帰らないと」
そう山海が言い皆はそれに頷いた。
(淡堕)「じゃあ、またな」
(山海)「じゃあな」
皆は学校があった空き地から帰って行った。
(日太)「…さてと、俺も帰るか」
日太も家に帰宅した。
(日太)「ただいま」
家に入るとリビングの方から母親が来た。
(母親)「あら日太ちゃんお帰りなさい! どこに行っていたの?」
(日太)「友達と空港に」
(母親)「そう」
日太は玄関に靴を揃えていると父親の靴が無い事に気付き母親に訊いてみた。
(日太)「あれ、父さんは?」
(母親)「父さんは、朝からゴルフに行ったわよ」
(日太)「そう、じゃあ、俺寝るから」
(母親)「ちょっと待って」
(日太)「何?」
(母親)「風呂に入りなさい」
(日太)「いいよ、入らなくて」
(母親)「駄目よ、汗いっぱい掻いているでしょ」
(日太)「そうだけど」
(母親)「風呂に入って、体を洗いなさい」
(日太)「…分かったよ」
(母親)「じゃあ、母さんは風呂の準備をしとくから貴方は着替えを自分の部屋から持ってきなさい」
(日太)「はい」
日太は二階に上がり自分の部屋に入った。
(日太)「たっくよう」
日太は着替えの下着が入っている棚に向かった。
(日太)「先ずは、下着のタンクトップとパンツはこれでよし、次は上着だ」
日太は上着が入っている棚がある隣の部屋に向かった。
(日太)「えっと、Tシャツはこれで、ズボンはこれだな」
日太は赤と黒の横しまのTシャツと灰色の長ズボンを選んだ。
(日太)「後は、持ち帰った物は無いかな」
日太は着ている服のポケットに廃校から持ち帰った物が無いか調べた。
(日太)「えっと、携帯電話は行く時に持っていたから当然あるだろ他には…」
日太はポケットをさらに調べた。
(日太)「これ何だ?」
ポケットを漁っていたら何かに触れたので出して見たらノートだった。
(日太)「これは…まさか!」
日太はノートの内容を確認する為に開いてみたら詩蘇男君と遊子ちゃんの日記帳だった。
(日太)「持って帰って来ちゃったかどうしよう」
日太は日記帳をどうするか考えた。
(日太)「……そうだ、詩蘇男君は山海の家系だから詩蘇男君の日記帳は山海に渡して遊子ちゃんの日記帳は俺が内緒で持って置こう」
日太は日記帳を家族に見られない様に机の中に隠した。
(母親)「日太、風呂が湧いたわよ」
(日太)「は~い」
日太は一階に戻って風呂場に向かった。
(日太)「じゃあ、入るとするか」
日太は服を脱ぎシャワーを浴びずに一直線に風呂に入った。
(日太)「はぁ、疲れた」
日太は二時間ほど風呂に浸かったというか寝た。
(日太)「…やべ、少し寝ちゃった、そろそろ出るとするか」
日太は風呂から出て体を拭いた。
(日太)(ふぅ、後でお墓にでも行こう)
その時、母親が声を掛けて来た
(母親)「ねぇ、日太ちゃん寝る前にお仏壇に手を合わせたら」
(日太)「そうだな」
日太は服を着てリビングの隣の両親が寝る寝室に向かった。
(母親)「日太ちゃんお仏壇に手を合わせる前に訊きたい事があるの」
(日太)「何?」
日太と母親はリビングで話をした。
(母親)「私は貴方のお父さんと結婚をしたけど結婚をした当時の貴方は私の事を嫌っていたけど今も私の事が嫌い?」
(日太)「いや、あの時よりは嫌いじゃないよ」
(母親)「そう、嬉しいわ」
日太はお仏壇がある隣の寝室に向かいお仏壇に手を合わせた。
(日太)「じゃあ、俺は寝るよ」
(母親)「ええ、お休みなさい」
(日太)「お休み」
日太は二階にある自分の部屋に戻った。
(日太)(さてと、明日は花を買ったらまずお墓に行って次にあの学校跡地に供えたら、そのまま山海の家に向かって山海に詩蘇男君のノートを渡したら帰るか)
日太はそう考えながら布団を敷いた。
(日太)「明日の準備をするか」
日太は寝る前に明日持っていく物を確認した。
(日太)「まず、財布と鍵と携帯電話で残るは詩蘇男君の日記帳だけどどうやって山海のもとまで持っていく…」
日太は詩蘇男君の日記帳を山海に渡すまで誰にも見せないようにするためにはどうしたら良いか考えた。
(日太)(そうだ、確か、本屋の袋があったはず、あれに入れて持って行けばいいのか)
日太はゴミ袋用の袋を入れた棚を調べた。
(日太)「えっと、……これだ!」
日太は本屋の袋を見つけた。
(日太)(これに詩蘇男君の日記帳を入れて持って行けばいいか)
日太は詩蘇男君の日記帳を袋に入れた。
(日太)「よし、これで寝られる」
日太は部屋の電気を消して寝た。
翌日――
(母親)「日太、朝よ、起きなさい」
(日太)「う~ん」
日太は母親の言葉で目を覚まし一階に下りた。
(母親)「ご飯、出来てるわよ」
(日太)「はーい」
日太はリビングにある椅子に座った。
(母親)「はい、朝食の食事」
(日太)「今日の朝食は何?」
(母親)「今日の朝食はね、パンとパンにつけるマーガリン、サラダ、牛乳、ヨーグルト、目玉焼き、鮭のバター風味、バナナよ」
(日太)「じゃあ、頂きます」
日太は朝食を四十分ほどで食べ終わった。
(日太)「ごちそうさまでした」
(母親)「どう、美味しかった?」
(日太)「うん、悪くは無いよ」
(母親)「じゃあ、私は皿を洗ったらデパートに行って買い物をしてくるから留守番していてくれないかな?」
(日太)「ごめん、今日は山海に借りていた本を返さないといけないから留守番は無理」
(母親)「あら、そう」
(日太)「まあ、俺が鍵を閉めて出かけるから安心してよ」
(母親)「そうね、じゃあ、私は食器を洗ってから出かけるわ」
(日太)「うん」
日太は二階に上がり自分の部屋で数学の勉強をやっているフリをした。
(母親)「じゃあ、私は行くね」
(日太)「行ってらっしゃい」
(母親)「鍵ちゃんと閉めて行くのよ」
(日太)「分かっているよ」
母親は買い物に出かけた。
(日太)「さてと、俺も行くとするか」
日太は家にある窓の全てに鍵を閉めて電気を消して玄関に向かった。
(日太)「持っていく物は…大丈夫! よし行こう」
日太は、玄関の扉を開けて外に出て扉に鍵を掛けた。
(日太)「まずは墓に供える花を買わないと」
日太は近くの花屋へ――
(男性)「いらっしゃいませ…あれ日太か?」
(日太)「え?」
花屋には小・中学生時代の同級生だった暴泣 鬼孫【ぼうきゅう きそん】が働いていた。
(日太)「お前、何やってるの?」
(鬼孫)「俺か? 此処で働いているだけだけど」
(日太)「そうか」
(鬼孫)「で、お前こそ、何してるんだ?」
(日太)「ああ、花を買いに来た」
(鬼孫)「何の花?」
(日太)「グラジアスのブルーチャームってあるか?」
(鬼孫)「あるぞ」
日太は鬼孫に連れられてグラシアスの場所に来た。
(鬼孫)「これでしょ」
(日太)「ああ、これだ」
(鬼孫)「後は、何かある?」
(日太)「後は…カーネーションのピートはある?」
(鬼孫)「あるぞ」
日太は鬼孫に連れられてカーネーションの売り場へ来た。
(鬼孫)「これだろ」
(日太)「ああ、これだ」
(鬼孫)「他に何かある?」
(日太)「後は、ラベンダー、アナナス、時計草、サンダーソニア、アネモネだけどあるか?」
(鬼孫)「ああ、分かった」
日太は鬼孫に連れられて、それぞれの売り場へと案内された。そして予定の花が全て揃った。
(鬼孫)「これだけか?」
(日太)「ああ」
(鬼孫)「じゃあ、レジに向かおう」
(日太)「うん」
日太はレジに向かった。
(鬼孫)「全部合わせて…2,450円です」
日太は財布から五千円札を出した。
(日太)「はい、2,550円のお釣りです」
(鬼孫)「サンキュー」
日太は花屋を出た。
(鬼孫)「ありがとうございました」
鬼孫はお客さんである日太にちゃんとお辞儀をした。
(日太)(さてと、次に行くのはお墓だけどお墓があるのは深大寺の近くだったよな)
日太は深大寺の近くの墓地に向かった。
(日太)「…はぁ…はぁ…やっぱ、坂はきついな」
日太は坂を上って何とか墓地に着いた。
(日太)(そうだ、お墓にお供えする花を袋から出しとかないと)
日太はお墓に向かう前に墓にお供えする花を袋から出した。
(日太)(えっと、グラジオラス、カーネーション、ラベンダー、アナナスの4本を出して)
日太は家族の墓に向かった。
(日太)(久しぶりに墓に行くな。十年は行ってないな)
日太は家族の墓に着いて花を花立てに供えて目を閉じて手を合わせた。
(日太)「よし、後は、山海に渡す物を渡せば完了だ」
日太は墓地を後にした。
(日太)「そうだ、あれを忘れる所だった」
日太は墓地の方にお辞儀をして向きを変えて学校跡地に向かった。
(日太)(さてと、山海の家に向かうのは空き地に行ってからだな)
日太は学校跡地に着く寸前に何と花を持った山海と界男達四人が前から歩いてきた。
(日太)「あれ、皆どうしてここに?」
(山海)「ああ、今から空き地に行くところだよ」
(日太)「そうか、実は俺も今から学校跡地に行くところだよ」
(山海)「じゃあ、一緒に行くか」
(日太)「そうだな」
日太は皆で学校跡地へと向かっている最中に淡堕が話し掛けて来た。
(淡堕)「なぁ、皆に伝えておくべき事があるうんだよ」
(日太)「なんだよ、淡堕」
(淡堕)「実は……」
(山海)「おい、着いたぞ」
(日太)「話しは、後でだいいな」
(淡堕)「あ、ああ…」
日太達は学校跡地に着き、俺と山海は、お互いが買った花(俺は時計草、サンダーソニア、アネモネで山海は、はまかんざし)を学校跡地の前に供えて手を合わせた。
(日太)「……で、淡堕お前が話しておきたい事って、何だよ?」
(淡堕)「ああ、実は昨日此処で皆と別れた後にアパートに帰ってある事を調べて見た」
(山海)「ある事って?」
(淡堕)「例の女の子がなぜ苛められたのかを調べていたら驚くべき事実が分かった」
(丹波)「何?」
(淡堕)「虐められた根源は古くからあったようだ」
(界男)「どう言う事だ?」
(淡堕)「俺達が生まれる五百年以上も前から俺達の一族は村の中で女子共を苛めていた。」
(山海)「村?」
(日太)「ああ、その村全てに何故か同じ掟があって…」
(界男)「掟?」
(淡堕)「ああ、信じられないと思うがその掟とは、女の子が産まれたら殺すという掟だ」
(山海)「何だよ、その掟!」
(淡堕)「気持ちは分かるがそれがまだ息衝いていた」
(完素)「どう言う事だ」
(淡堕)「此処に居る全員が男だろ」
(丹波)「そういえば」
(淡堕)「家族で女性は母しかいない」
(界男)「確かに」
(日太)「……」
(山海)「だとしたらその村はどうやって生き残った?」
(淡堕)「ああ、それに関してはまだ不明だけど推測の域だが男の子が大人になったら村を出て愛する女性が見つけたら村に女性と二人で戻りそのまま村で暮らすっていう感じじゃないかと思うけど」
(山海)「だけど、それって他にもこういう場所がまだ残っているっていう事か?」
(淡堕)「恐らくは…」
皆は黙ってしまいその場の空気が暗くなりそうな時、日太は一言言った。
(日太)「……もし、他にもあの子のような被害者がいるのなら俺は助けたい」
(山海)「!」
(日太)「俺達の一族が絡んでいるなら俺達の手で助けないと」
(淡堕)「…そうだな」
皆は覚悟を決めた。
(山海)「でも、どうやって俺達の一族が絡んでいる事件をどうやって探す?」
(日太)「そうだな…」
皆は一族が絡んでいる事件をどうやって探すか考えていたら淡堕が一つ提案を出した。
(淡堕)「一族が住んでいた村に行くか?」
(日太)「…成程! その手が良いだろ」
その時、完素が言った。
(完素)「…先に帰って良いか?」
(山海)「いいけど」
(完素)「ありがとう」
完素はそのまま帰った。
(日太)「さて、これで話しは纏って来たけど皆はこの事を家族に話すか?」
(山海)「いや、話す訳が無いだろ」
山海が言った言葉に皆は同感だった。
日太は山海に例の物を渡すのを思い出した。
(日太)「そうだ、山海に渡す物が有ったのをすっかり忘れるとこだった」
(山海)「え!俺に」
(日太)「ああ」
日太は持って来た袋から詩蘇男君の日記帳を手渡した。
(山海)「これ、もしかして」
(日太)「ああ、詩蘇男君の日記だ」
(山海)「何でお前が持っている?」
(日太)「多分、あの子を助ける時に俺が持っていたからじゃないかな」
(界男)「成程ね」
(山海)「で、何で俺に渡した」
(日太)「詩蘇男君は山海の家系の者だから山海に持っていて欲しい」
(山海)「…分かった」
山海は詩蘇男君の日記を受け取った。
(日太)「……で、俺達の村って何所に?」
(淡堕)「ああ、その件については俺の家で明日教えるよ」
(日太)(…いじるなよ)
(山海)「じゃあ、明日は淡堕の家に集合って事でいいな」
(丹波)「ああ」
(日太)「完素には誰が伝える?」
完素に明日の予定を誰が伝えるか決めかねていたところ淡堕が口を開いた。
(淡堕)「山海から伝えたら」
(山海)「そうだな」
(山海)「じゃあ、皆また明日会おう」
(全員)『じゃあな』
皆は先に帰って行った。
(日太)「さてと、俺も家に戻るとするか」
日太が学校跡地を後にしようとした瞬間、学校跡地から声が聴こえた。
(女の子)(ありがとう)
(男の子)(サンキュー)
(男性)(がんばれよ)
日太は足を止めたが振り返らずに笑みを浮かべて後にした。
ここから日太達の苦しく悲しい物語が始まった。
あの世の者達か?それとも家系か?これから日太達の選択が日太達の運命を大きく変えていく。
四情狩林~それぞれの苦しみと意い~ 第一章 完
四情狩林~それぞれの苦しみと意い~ 第二章 続く――
日太とその仲間達は一族の《悪しき風習》を知ってしまった! 女の子を救う事は出来たがこれは氷山の一角よりも小さい銀河の小惑星と言える小さな出来事! だが、その小惑星の軌道が行く先に在る物は?