まんじり
蒼くんは、ふうっと息をついた。
「もういいよ、琢也」
「迷惑か?」
「迷惑じゃないけど…」
言いよどむ蒼くんの言葉と同時に沈黙が漂う。何となく居たたまれなかった。すると、琢也が、蒼くんの肩をつかんだ。
「いいよ。お前が迷惑でも俺は決めたんだよ」
「……何を決めたんだよ」
蒼くんがじっと見つめ返す。僕は固唾を飲んでそれを見つめる。
「だから、お前を守るって」
守るって何だよ…。
蒼くんは顔を伏せると静かに呟いた。
「春井、お前に蒼は渡さないからな」
いきなり矛先が僕に向かって、びくんとした。
「康平は関係ない」
ぴしゃりと蒼くんが言う。
「もう、帰れよ」
琢也に投げ付けられたはずの言葉は僕に突き刺さった。僕はここにいてはいけないのだ。
言いたい事だけ言って満足したのか、琢也は素直に帰った。僕も帰ろうとしたら蒼くんが不思議そうに言った。
「どこに行くんだ?」
「え?」
「泊まっていくんだろ?」
「い、いいの?」
「うん……」
「分かった。泊まっていくよ」
「ありがとう」
そんな笑顔を向けられると、切なくなる。
僕は目を細めて、情けなく笑い返した。
その日、僕らは小さなふとんに横になって、何も言わずに天井を眺めた。
僕はなるべく蒼くんを意識しないように努めた。彼が吐き出す吐息や寝顔を見てしまったら、襲いかかってしまう自信があった。けれど、隣にいる蒼くんはぴくりとも動かない。
お互いがまんじりともしないで夜を過ごした。




