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一因



 好きな人の家に泊まる。

 僕はそわそわしながら、適度に散らかった蒼くんの部屋にいた。

 シャワー浴びてくると言ったまま戻って来ない蒼くんを待ちながら、息ができなくなっては何度も深呼吸した。


「出たよ」


 いつの間にか蒼くんがそばに立っていた。

 僕は慌てふためいて立ち上がろうとしたら、


「うわっ」


 足がもつれて、濡れた髪の蒼くんを抱きしめながら床に倒れてしまった。


「ご、ごめんっ」


 こわばった顔の彼が横たわっていた。


「ご、ごめんね」


 この場から逃げ出したかった。蒼くんのあんな顔を見るのは辛かった。彼に幸せになってもらいたいのに、なぜこんな事になっているのか。

 玄関に行き、出ていこうとドアノブに手を伸ばすと、蒼くんの携帯電話に着信が入ったのが聞こえた。

 思わず手を止める。


「は、はい……。琢也?」


 僕はすぐに踵を返して部屋に戻った。


「今から? 別にいいけど……」


 ちらりと僕を見て蒼くんは頷いた。


「……琢也が来るって」

「う、うん……」




 琢也は数分もせずに現れた。

 どこから電話してきたのか。奴が家のそばにいたという事は、一目瞭然だというくらいの早さだった。



 チャイムの音がして蒼くんが慌ててドアを開けるなり、琢也が言った。


「お前な、一人暮らしなんだから戸締りはきちんとしろ」

「はあ?」


 蒼くんのセリフではない。僕のセリフだ。


 こいつ、いきなり来て何を言い出すんだ。


「ちゃんと鍵はかけているよ」


 蒼くんはまじめに答えている。


「チェーンもちゃんとしろ」


 玄関先から聞こえる声に僕はますます呆れた。


 お前は、蒼くんのおかんか?


 琢也はぶつぶつ言いながら中に入ってきて、僕を見るなり顔を歪めた。


「なぜお前がここにいる」

「別にいいだろ? 友達なんだから」

「それよりどうしたんだよ。琢也」


 琢也はどっかりと床の上にあぐらをかいた。


「お前、何か俺に言う事はないか?」

「は?」


 蒼くんはわけが分からない顔をしている。


「そいつと付き合うのか?」

「へ?」


 この言葉には僕が驚いた。すると蒼くんがすかさず、


「ち、違うよっ。付き合うんじゃなくて…。その……」


 と言い繕ったが、何と言い訳したらいいのか分からずに僕の方をちらりと見た。


「じゃあ、何だよ」


 琢也が眉をひそめて、僕の方をぎろりと睨んだ。いつもなら、慣れているはずの僕も思わず身をすくめてしまうほど怖い視線だった。しかし、彼はふっと目を背けると蒼くんに言った。


「何度も連絡したんだぞ。お前、どこにいたんだよ」


 そのうち、琢也はまくし立てるように説教を始めた。くどくど言う琢也を見て、いくら友達だからとは言え、干渉しすぎだと思った。


「うるさいな。いいだろ? 別に」

「何だその言い草は。心配しているのに」

「もう、うるさいな」

「蒼っ」

 


 琢也のこんな必死な姿は初めてだった。




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