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後の祭り



 可愛い顔を見ていると、いじめたくなる。


「でもさ、あきらめた方がいいんじゃない?」


 言ってしまうと蒼くんが僕を睨んだ。


「もう、振られてる」

「え……?」


 思いもかけない言葉に僕の方がうろたえてしまった。


「そ、そうなの?」

「ああ」


 蒼くんは鋭い目で僕を見つめた。


「何だ。君もしつこいんだ」


 僕は内心、傷つきながら嫌味に言った。


「何が言いたいわけ?」

「男紹介しようか?」

「はあ?」


 蒼くんが口を開ける。無理もない。僕だって何を言い出すんだろうと思った。


「……何言ってんの?」

「空しくない? 報われるはずのない恋を追いかけても仕方ないよ。だからさ」

「だから……? 何?」

「蒼くんにぴったりの男、紹介してあげるよ」


 やばい。おかしな方向へ話が進んでいる。自分でも焦った。でも、止められない。

 ああ、僕は何を口走るのだろう。


橋本はしもと篤史あつしって知ってる?」


 蒼くんは目をぱちぱちさせた。


「モ、モデルの?」

「よかった。知っているんだ」


 本当の事を言うと、前から考えていた。

 琢也の事を忘れるには、他に好きな人ができればいい。

 僕は問題外だから。


「篤史は僕のいとこなんだ」

「え? 本当?」

「うん。篤史に頼めばいろんな事教えてもらえるよ」

「何を言って……」


 蒼くんが顔を赤らめる。その顔が愛しい。


「蒼くんは可愛いから、きっと気に入られるよ」

「だからっ。康平、何言っているんだよ」

「男を知ったら、琢也なんか忘れちゃうよ」


 瞬間、蒼くんの顏がこわばった。


「蒼くん?」


 蒼くんは唇を噛みしめると、小さくうな垂れた。


「どうし……」

「その方がいいんだなっ?」

「え?」

「康平はその方がいいんだろ?」

「何で…僕に聞くの?」


 蒼くんが、がっくりと首を垂らした。

 脱力した彼を見て、僕はおどおどしてしまった。


「そう言うんなら……」

「え……?」

「俺だって……恋がしたい」


 ぽつんと言った言葉に声が出なかった。それから、蒼くんは今までに見た事もないほど色気のある表情をしてため息をついた。


 どうしよう。

 彼が本当に他の人を好きになったら――。


 そう気付いても、後の祭りだった。


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