嗜虐的
蒼くんと出会ってから、瞬く間に時が過ぎた。
長いゴールデンウイークが明けて、蒼くんにまたちょっかいが出せる。それだけで学生生活が楽しくなり始めた昼休み。掲示板を見ていたら、向こうに蒼くんの姿が見えた。
また琢也と一緒だ。そして、女の子もいる。
「蒼くん」
背後から近づいた僕は彼を抱きしめた。
「えっ? わっ。や、やめろよっ。康平っ」
だいぶ、打ち解けてきた。言葉遣いが少々荒っぽいのがいい傾向だ。
「いい加減にしろよっ。もうっ」
何を言われても痛くも痒くもない。
蒼くんの体はすっぽりと腕の中に入るし、じたばたされても僕の方が強い。腕を緩めると蒼くんはするりと逃げ出した。
「康平っ、二度とするなよっ」
「んー、やっぱり抱き足りない」
もう一度、蒼くんに近づくと、琢也の腕がむんずと伸びて、僕の胸倉を思い切りつかんだ。
蒼くんが逃げ出し、焦って琢也の腕をつかんだ。
僕は両手を上げる。
「蒼に触るんじゃねえよ」
「ねえ、あっち行こうよ」
女の子が口を尖らせて琢也に言う。
「ちょっと待ってろ」
乱暴な言い方なのに、女はそれがいいらしい。
僕は肩をすくめた。
「冗談だよ」
「冗談でも蒼に触るな」
そう言って女の子と歩いて行く。僕はふうっと息を吐いた。蒼くんが黙って琢也を見つめていた。
「あいつが好きなの?」
「え?」
「いつも、見てるよね」
蒼くんの目が大きく見開かれる。