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狐と僕の最後の夏休みの思い出

作者: 縞P

初めまして。

夏休みも近かったので書いてみました。

本当は夏休みくらいに投稿したかったんですが

色々書きたい物が増えたので先に。


楽に読んでくれると嬉しいです。

 高校生になってから3度目の夏休みが始まった。

 僕、狐塚聡こづかあきらは、実家へ一人里帰りの為、駅に向かっている。

 両親は既に実家に居る。僕は、寮に住んでいるからだ。

 最初、寮がある学校に行きたいと言ったら怒られると思っていた。

 が、普通に両親は嫌な顔をせず許可してくれた。

「自分のしたいようにしなさい」と、僕は嬉しかった。信用されてるんだ、と。

 寮に住み始めてからは、ちょっとはホームシックになったりもした。

 けど月日が経つと、そりゃあ慣れる。刺激的な事も最初だけだった。

 1度目2度目は帰れなかった為、呼ばれたので最後くらいは里帰りしようと思ってた。


 自分の事を説明してる内に、駅に着いた。

 いつも通り切符を買い改札を通り電車に乗り込み窓際を確保する。

 この場所から実家には一時間も掛かるが、窓から見える外の風景を見てたら

 あっという間に着くから苦にならない。

 進んでいく度に変わっていく風景を、ぼーっと眺める。




 アナウンスで目的地に着いた事に気づく。

 急いで電車を降り、駅出入口で待っている両親の元へ走った。

 出入口前で、お母さんがこちらに気づいて笑顔で大きく手を振っていた。


「元気そうで良かったわ!」


 会ってそうそう抱きしめられる。


「夏休みの宿題は持ってきたの?」

「ちゃんと持ってきてるよ。だらだら過ごすのも嫌だから」

『えらい!』


 僕に言った。

 褒められて僕の口が少し緩んだ。

 車で移動中、車内で学校であった事や寮であった事を話した。


 少しすると実家に着いた。

 周りは田んぼが大半を占めている。

 そうです。

 田舎です。

 

 少しして僕は、二階の自分の部屋に荷物を置きに行った。

 掃除が必要かと思ったが、前もって掃除をしていてくれたらしい。

 一階に降りると振り子時計の針が丁度お昼を指していた。

 ゴーン

 ゴーン

 3年振りに聴いた振り子時計の音に実家にまた帰って来れたんだと自覚した。

 お母さんがお昼よ、と呼び掛け、それを聞いたお父さんと僕はテーブルに向かい、

 久しぶりの家族三人で食卓を囲んだ。


「お母さんの料理は美味しいね」

「ありがとうっ! そう言って貰えると作ったかいがあったわ!」

「聡、どうしたの? 涙なんか流して」

「え――――あ、あれ何でだろ」


 涙を手で拭いながら両親に大丈夫だよと答え、料理を再び食べ始める。

 自分でも何故涙が出たのか理解出来なかった。


 手料理を食べ終わり居間でテレビを見ているとニュースが目に飛び込んだ。

 家のすぐ近くの神社で狐の親子を見たという

 何故か懐かしく感じだ。

 自然と身体が動き、見に行きたくなった。


「ちょっとすぐそこの神社に散歩してくる!」

「気をつけて行くのよ」

「気を付けてな」

「うん、分かった」


 そう言って僕は靴を履いて玄関を出て近くの神社に向かった。

 そういえば小さい頃、今から向かう神社でちっちゃい子供の狐と遊んでいた事を

 思い出した。


 神社に着き鳥居をくぐり階段を一段、また一段、と登って行く。

 本殿の手前には池がある。

 大昔、化け狐を、この神社まで追い込んだが人間に化け姿を眩まそうとしたが

 池に映った姿が化け狐だったらしく正体がバレてそのまま討伐されたらしい。

 俗にいう『九尾の狐(きゅうびのきつね)』の言い伝えだ。


 少し離れた場所には、僕の苗字と同じ祠がある。

 祠の前に立ち、手を合わせると祠の後ろから尻尾が見えた。

 一瞬驚くが尻尾の先が黒かった為、すぐ何か分かった。

 ヒョコッと覗く姿が可愛かった。

 そう簡単に人には近づかないよね、と思っていたがこちらに近づいてきた。

 手を伸ばせば届く距離に来た狐に恐る恐る手を近づける。

 すると狐は僕の指をぺろっと舌を出して舐めた。


 狐が後ろを振り向き首を動かした。

 すると後ろから2匹の子狐が出てきた。

 祠の横に僕が座ると狐の親子が仲良く寄ってきた。

 子狐2匹が膝の上に乗り親狐がそれを見守るように僕の左側に身体を寄せてきた。

 それを見て古巣に戻ったような感じがした。

 急に眠気に誘われ、その場で眠りについた。



 (おかえり)



 誰かが僕にそう言った……。

 誰……?

 僕は呼び掛けた。

 貴方は私の……大事な……だから。

 声の主は言ったが途切れ途切れでよく聴こえなかった。

 


 目を覚ますと、そこは自分の部屋だった。

 あれ、僕はさっきまで神社に居たはずじゃ?

 親に僕はどうやって帰ってきたのか聞きに階段を降りた。


「自分で帰ってきたじゃない」

「え? 本当に?」

「ただいまー、って言って帰ってきたのよ? 覚えてないの?」

「あれ……」

「寝ぼけてるんじゃない? ほら顔と手洗ってきなさい」


 お母さんの後ろ姿を見ると尻尾が見えた、気がした。

 目を閉じ、目を開け、もう一度見ると尻尾はなかった。

 気のせいか。


 狐に化かされたような、どうも腑に落ちない。

 部屋に戻りベッドに横たわり目を瞑り今日あった事を思い出そうとしたら

 お腹の上に何かが落ちてきた。落ちてきた? いや、乗ったが正しいだろうか。

 お腹の方を見ると狐が居た。なんで僕の部屋に……?いや2階まで登ってきた?

 窓は、狐が入れそうな隙間くらい開いていた。あれ? 窓開けてたっけ。


 実家に戻ってきて神社に行ってから何かおかしい。腹の上に乗っている狐を

 触りながら考えた。

 ん?


「―――――ってよく見たら、神社に居た子狐じゃないか!」


 でも何でここに……?子狐は僕の方を、じーっと見ていた。


「僕の顔に何か付いてるのか?」


 って、そんな事はどうでもいい! 親狐のとこに連れて行かないと!

 急いで準備をして家を出た。辺りは街灯も無ければ灯り一つない真っ暗だ。

 昔から夜目は利くからライト無しでも大丈夫だろう。多分。


 子狐が僕の隣に並行して歩いている。たまに此方を見たりしていた。

 神社に向かう途中にある、自販機に目が止まった。自販機の前に人が居た。

 時間が時間なだけに珍しいな、と思いつつ、それは僕もだった。

 目が合ったので軽く会釈し通り過ぎた。


 通り過ぎた後、後ろを振り向くと、先ほど会釈した人が居なかったのだ。

 驚き自販機の場所まで走り、見渡すが人の姿などなかった。


「え、え、あれ……さっき、たしかに人だった……はず?」

「見た目は人だったよ」

「だよね、って―――――誰!?」


 咄嗟に首を動かし辺りを見るが誰も居ない。

 居るのは僕と子狐1匹だけだった。

 子狐を抱き抱え、まさかお前が? そんなわけないか……。

 きょとんとしたような表情で僕を見ていた。

 

 神社近くまで来ると不思議な感覚に襲われた。

 来る前より身体が軽くなり、今なら階段も五段ずつ登れそうだ!

 怪我する事など、お構いなしに僕は何も考えずに行動に移った。

 ピョンピョンと兎のように階段と飛び越えていく。

 それに続いて子狐も一緒に付いてきていた。そして階段を登り切った。


「ほ、本当に登りきっちゃった。」


まるで(・・・)人間じゃないみたいだ(・・・・・・・・)

 驚きを隠せなかった僕は、自分の頬を抓った。痛い。普通に痛い。

 一瞬強い目眩がしたが、すぐ体調を戻した。


「あったあった。祠だ。おーい、お母さん何処ー? 弟連れてきたよー」


 お母さん(・・・・)?何を言ってるんだ僕は、自分でも意味が分からなかった。

 祠の後ろから親狐と子狐が出てきた。僕と一緒に歩いてきた子狐は親狐の所に

 向かった。それを見て安心した僕に誰かが声を掛けた。


「もうそろそろいいんじゃないかしら?」


 え? どっかで聴いたことのあるような声だった。


「もう約束の時間も過ぎてるのよ」


 この声……お母……さんの声、だ。え、なんで? あれ、今はお家に……

 わけがわからなくなり僕は狐親子の方を見た。

 すると親狐が僕を見て言った。


「やっと私の事をちゃんと見たわね。どのくらい待たせるのよ。この子は」

「え、狐が喋って……る? え?」

「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」


 子狐まで喋っていた。しかも僕の事をお兄ちゃん(・・・・・)って

 それがキーワードだったのか僕の中で何かが弾け飛んだ。





「そんなに人間になりたいの?」

「なりたい!僕人間になってみたい!」

「お兄ちゃん行っちゃやだよ!」

「お兄ちゃん置いてかないで!」

「弟と妹はどうするの? お兄ちゃんと離れさせて可哀想とは思わないの?」

「う、で、でも僕人間になってみたい……ちょっとだけでもいいから!」


 弟と妹が泣きそうな顔を見ながら僕に訴えていた。行っちゃやだ。置いてかないで。

 だけど、僕は人間になりたかった。時々、神社に来る人間を見て思った。

 見たことのない物を使ったりしていたのを見て興味が湧いてきた。

 仲間や兄弟達に言うと、おかしいよ! と罵られたりもした。

 それでも僕はなりたかった。どんな生活を送っていたのか知りたかった。

 体験してみたかった。

 昔仲間に聴いた事を思い出した。


「お前の母ちゃんって九尾の狐なのか? 」


 初めて聴いた。なんなのそれと聞くと仲間は普通に教えてくれた。



『九尾の狐は何千年も生きた狐でどんなことも出来る何かに化けたり姿を変えれる』



 僕は夜、弟と妹が眠りについた時にお母さんに聴いた。お母さんは九尾の狐で何でも 出来て何にでも姿を変えたり出来るの! 

 お母さんは答えた。


「どこでそれを聞いたの?」

「仲間が教えてくれた!」

「お喋りな仲間が居るのね。後で問い詰めないといけないわね」

「どうなの! お母さんは姿を変えたり出来るの!?」


 お母さんは諦めたのか变化を見せてくれた。僕は驚いた。お母さん凄い!

 僕はお母さんに思っていた事を言った。

 すると一度も怒らなかったお母さんがこの日、初めて怒った。

 初めて怒った親を見て僕は泣きだした。

 僕の泣いた声で起きたのか、弟と妹が起きだした。


「ん~……お兄ちゃんどうしたの?」

「お兄ちゃん何で泣いてるの?」


 お母さんは我に返ったのか僕を慰めながら弟達に、自分が怒鳴ったから

 泣いてしまったのよ、と説明した。弟と妹は僕に寄り添って大丈夫?

 もうお母さん怒ってないよ。そう言ってまた眠り出した。


 朝になり、いつも通り弟達と遊んでいるとにお母さんに呼ばれた。

 昨日の事についての謝罪だった。

 僕も勝手なこと言ってごめんね。謝った。

 それでまだ人間になりたいの?と聞いてきたが僕は「うん!」と言いかけたが

 昨日の事を思い出し一瞬(ども)った。


「約束出来るなら考えてもいいわ」

「え! ほ、本当に!」

「ええ、でもちゃんと貴方が約束を守れたらの話よ」

「する!約束守る!」


 やっとなれると思って僕は嬉しかったんだ。だって人間になれる。化けれる。

 人間の生活が出来る。それだけで僕は凄く本当に嬉しかった。



 お母さんの力を一部分けて貰う日がきた。

 弟と妹は泣きそうな顔で僕を見ていた。僕は言った。

 ちゃんと約束の日になったら戻ってくるよ、と。笑顔で。

 約束の内容はこうだ。


『人間の年齢で15歳まで。その年齢になったら、この神社に戻って来る事』


 それだけだった。だけど僕は人間の時間が長すぎて約束の事を忘れていった。

 だけどお母さんは、最初から僕と一緒に居てくれたんだ。

 僕が約束の日を忘れて、それで僕を此処に呼んだんだ。そうだ。僕は。

 

 全部思い出した。


「思い出した?」


 お母さんは僕の顔を見て言った。僕は約束を守れなかった事、弟や妹の事を忘れていた事を、お母さんの側に寄って泣きながら謝った。ごめんなさい。本当にごめんなさい。約束守れなくてごめんなさい。兄弟達にも謝った。

 弟や妹は許してくれた。一緒に泣いていた。

 全部思い出し気づいた時には僕は、もう狐の姿に戻っていた。

 巣に戻り久しぶりに家族と一緒に、そのまま眠った。


 起きると朝になっていた。僕は大きな欠伸をした。

 先に起きていたお母さんの所に言った。

 お母さんは人間として過ごした生活はどうだった?楽しかった?と、どうだったか僕に

聞いてきた。僕はそれに答え、学校という建物や先生、行事と言うものについて

 まだ話していない事を楽しく語った。弟妹も起きてきた。僕を間に挟んでくっついてきた。

 何十年も待たせたので今日はいっぱい甘えさせてあげようと思った。


「お兄ちゃん、私も人間になってみたい!」

「僕も!僕も!」

「楽しいとは思うけど家族の事を忘れるかもしれないよ?」


 そう言うと、やっぱりなるのやめる! と口を揃えて言ったのを聞いて

 僕は安心した。お母さんも安心したような顔をしていた。

 お母さんと僕はクスっと少し笑った。 


                                 ~おしまい~

ここまで読んで下さって有り難うございます。

読みやすい想像しやすいように書いていたら

単調になってしまいました。すみません。


感想等がありましたら気軽に書いて下さい。

喜びます。


それではここまで読んで下さって有り難うございます。

また次の別のお話で。ばいばい。

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