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プロローグ

『表示後三十秒経過後ネットワークに接続されます。衝撃に備えてください』


 不可解な文字がノートパソコンの画面を埋め尽くしたのはとある夜だった。就寝の仕度をして、眠たくなるまでの暇潰しにパソコンを起動させたらこのザマだ。なんてついてないんだろうか俺は。

 怪しいメールを開いたわけではなく、いかがわしいスレに入った記憶もない。

 目を擦っても何も変わらなかった。ノートパソコンの画面には間違いなく謎の文章が現れていた。

 文面からしてウイルスソフトか何かに見える。つまりたったの三十秒で俺の(つちか)ってきたノートパソコンのデータがウイルスに侵食されるわけだ。二年の俺のニート生活にも終わりがきたみたいで涙が出そうになる。明日から世界は変わるという事だ。......主に俺だけの世界が。


『二十秒経過』と画面の表示が切り替わる。


 ......明日からは俺の親孝行生活が始まるわけだ。アルバイトをして両親を喜ばせる。そう考えれば悪くない気もした。二年間も自由に遊ばせてくれていた両親にはもちろん感謝している。ほとんど袖の通していない新品同様の制服に緩慢(かんまん)な動作で目をやった。高校に行っていたのが懐かしかった。


『十秒経過』再び表示が切り替わる。


 あれだ。ばちが当たったのだろう。思い返せばこの二年で何度母親を泣かせた事だろうか。そして父親に殴られた事だろうか。人生は山あり谷ありと言うが、さしずめ俺は山に差し掛かろうとしたところでその山を掘って無理やり谷を作った自堕落人間の王。親不孝の神である。

 ノートパソコンの画面表示が秒刻みで変化するようになる。七、六、五、と俺にとっては死の宣告のようなものが淡々とその数を減らしていく。

 俺がただの高校生に戻ってしまうまで後三秒。

 瞬間、始めに表示された文章の違和感に気がついた。


『表示後三十秒経過後ネットワークに接続されます。衝撃に備えてください』


 そもそも考えればこの文章自体がおかしいわけだ。

 ノートパソコンの電波受信の状態はとても良い。ネットワークにはちゃんと繋がっている。

 すでに繋がっているものに接続するなど日本語として成り立たない。

 たとえ日本語としての異常さを無視したとしても、まずこの文章はわけがわからないのだ。

 そして、本題。これがいちばんあり得ない。

 衝撃ってなんだ衝撃って。ネットワークに接続する事で衝撃が起きるのか?

 だけどネットワークに接続する事は別に物理的な動作ではない。

 よって衝撃という物理的なダメージは本来起こり得ないわけだ。

 残り二秒で悟る。もしかすると精神的ダメージだろうか?

 グロテスクな画像が画面に拡大されて表示される......。

 無意識的にウィンドウを閉じるバツマークを探していた。

 しかし文字が表示されているのはデスクトップのど真ん中なわけで。

 電源をぶち切るしか逃れられる手はなかった。

 残り一秒でノートパソコンの電源に手を伸ばす。

 ぶち消しで解決しようとしたところで、心に迷いがさした。

 機械製品をぶち消しするのはあんまり良くない。データが消えるかもしれないからだ。

 けどこのまま電源を切らなければデータが消えるよりも酷いことになるのは間違いない。

 もちろんそれは、わかっていたのに。

 俺はあまりのデータの大切さにぶち消しする事を躊躇(ためら)ってしまった。

 その瞬間が命取りだった。


『ネットワーク接続を開始します。接続による衝撃にご注意下さい』


 画面に表示された文字の意味を理解する前に、ノートパソコンが唐突に発光(はっこう)し始める。

 机を蹴り、反動でノートパソコンから離れようとしたが、遅かった。

 アナログテレビの電源を切るように、視界の中心に周囲の映像が集束する。

 まぶたを閉じるよりも早く視界の暗転が訪れた。

 夜の自室から全くの暗闇へ__暗黒の濃度が移り変わる。

これから頑張っていきますのでよろしくお願いします。

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