表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/494

空の宇珠 海の渦 第五話 その五十一





蝦夷の連合軍は川岸に追い込まれていく。

 


有利と感じた倭の軍は勢いを増した。

 


「このまま川に追い詰めろ!」

 


指揮官らしき者の声が聞こえる。

 


うおおおお~

 


波動が増幅する。

 


倭が息を吹き返した。

 


「母礼!」

 


阿弖流為が叫んだ。

 


馬を走らせる。

 


母礼は刀で応戦している。

 


槍が相手では接近戦は不利だ。

 


阿弖流為が走り込んできた。

 


その瞬間に、倭の兵が消えた。

 


阿弖流為が放った矢が倭の兵を貫いた。

 


「すまん!」

 


「次だ!」




挿絵(By みてみん)



阿弖流為は、礼を言う母礼を尻目に馬を走らせた。

 



「行くぞ!」

 


母礼も続く。

 


蝦夷の連合軍は二人について馬を走らせた。

 


倭の網が閉じようとしている。

 


蝦夷の連合軍は二つに割れた。

 


そして、それぞれが別方向に向かった。

 


川上と川下。

 


倭が閉じようとしている網の端を抜けて行った。

 


それに釣られて倭の軍も割れた。

 


追いかける。

 


有利であった戦いが、このままでは無駄になる。



皆がそう考えた。

 



「追え!逃がすな!」

 


指揮官の声が、更にその気持ちを高ぶらせる。

 


蝦夷の戦力が二つに割れた。

 


だが、倭の軍も二つに割れたのだ。

 



川上と川下。




二つに分かれ、人の渦が流れていく。

 



蝦夷の連合軍は、倭の網をすり抜けた。

 



そして、考えもしなかった行動に出た。




ある場所に差しかかった瞬間、方向を変えた。

 



行き止まりである川に向かった。




そして、川を走ったのだ。

 



川の中を馬は飛んだ。

 



そこは浅瀬であった。

 



挿絵(By みてみん)




蝦夷の連合軍は、あっという間に川を越えてしまった。

 


倭の軍が追いかける。

 



だが、水の中にある浅瀬がわからない。




川向こうまではかなりの距離がある。

 


渡ろうとするが流された。

 



思うように渡ることが出来なかった。

 


渡れる場所を見つけるまでに、時間がかかった。

 


倭の軍が渡り始めた頃、蝦夷の軍は次の行動に出ていた。

 


矢が飛んできた。

 


川を渡っている倭の兵は簡単に標的となった。

 


致命傷を負わないまでもどんどん流されていく。

 


川岸にたどり着く者は少ない。

 


たどり着いたとしても味方はいない。

 



倭の兵は戦意を喪失していく。

 


高めた気持ちが絶望に変わっていく。

 


戦場に絶望の波動が溜まっていく。

 



だが、しばらくすると蝦夷の連合軍も矢を撃ち尽くした。

 



すると、今度は川岸から離れ奥に走り出した。

 


川岸に蝦夷の姿が消えたのを見てから倭は動き出した。

 



「今だ!いけ!川を渡れ!」

 


指揮の声と共に川を渡り始めた。

 


その頃には渡れる場所を見つけていた。

 


人が手を広げて二人分。

 



そこを外せば川の流れに流される。

 


だが、場所さえわかれば簡単であった。

 


簡単な事でも、知らないと言うだけでこれほどの差が生まれるのだ。

 



同じ事が川上でも起きていた。

 


倭の兵は戦えなくなった者が増えた。

 


既に戦力は二割方消えた。




「阿弖流為…やるではないか…」



田村麻呂はやっと気づいた。

 


背水の陣ではなかった。

 


油断させる為の罠だったのだ。

 


「さすがの俺も、騙されたというわけか…」

 

田村麻呂は不敵な笑みを浮かべていた。




続く…




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ