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空の宇珠 海の渦 第九話 魂の鼓動 その四十七






「わぁ…」


 


浅葱が、門の前で圧倒されている。

 




「こちらへどうぞ…」

 




綾人が先導する。

 




挿絵(By みてみん)





門をくぐると広い庭がある。

 




庭の真ん中には大きな池。

 




橋の向こうにお屋敷が見えている。

 




「こんなに広かったの…」

 




外から見るのとは大きな違い。

 




浅葱は初めての体験に興奮している。

 




池の上の橋を渡って、お屋敷に向かう。

 




その屋敷の濡れ縁に、一人の女性が立っていた。

 




それは、巴御前であった。

 




「ほう…」

 




真魚が笑みを浮かべる。

 





壱与はその場で立ち止まった。

 




真魚が二人を見ている。

 




「さぁ、壱与様こちらへ…」

 




綾人が、壱与を誘導する。

 




しかし…





「は、はい…」



 


壱与は返事をしながらも、動きがぎこちない。

 




「壱与はどうしたのじゃ…」

 




嵐が真魚に聞く。

 




「これはひょっとすると…」

 




濡れ縁の巴御前と、庭の壱与…

 




二人の波動が、触れ合っている。

 




二人は、視線を合わせたまま動かない。

 




「壱与どうしたの…」

 




浅葱の声もう届かない。

 





古の記憶…

 




二人の中でその頁がめくられる。

 




お互いの…





生命エネルギーの波動が広がって行く。

 




「真魚、これは…」



 

さすがの嵐もここまでくればわかる。

 




二人の絆が今、再び結ばれる… 

 




「ああ…」

 




巴御前が涙を流している。

 




「長かった…」




「これが、あなたなのね…」

 



「壱与…」

 



壱与の全て… 

 




喜びも…

 




悲しみも…





巴御前は受け取った。

 




そして…

 




笑みを浮かべ、目を閉じた。

 





全てを噛みしめるかの様に…

 




胸の前で手を組んだ。 

 




「御前様!」

 




綾人が声を上げた。

 




巴御前は、その場で崩れる様に横たわった。

 




「そんな…」

 




壱与が涙を流している。





「この世にはもう…いないと…」

 




壱与が立ち尽くしている。

 




心の中にある記憶…

 




それと…

 




流れ込んできた巴御前の記憶…

 




二つの世界…

 




それが重なった。

 




相容れないはずの記憶。

 




重なることは絶対に有り得ない。

 




あるとすれば…

 




同じ体験をした…

 




それしかないのである。

 




遠い記憶に残るその微笑み…

 




「お母さん…」




壱与がその面影を口にした。

 




倒れた巴御前の側に、綾人と真魚が駆け寄った。

 





埋め尽くす事の出来ない、空白の時間。

 




壱与はその間を漂っていた。





次回へ続く…




挿絵(By みてみん)






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