空の宇珠 海の渦 第九話 魂の鼓動 その四十五
真魚と紅牙と後鬼と前鬼。
四人の話は夜遅くまで続いた。
嵐は聞いていたのかいないのか…
その側で寝ていた。
次の朝、陽が昇る前に紅牙は出かけた。
そのあとすぐに前鬼と後鬼が続いた。
「おい真魚!」
「奴等はどこに行ったのだ…」
「聞いていなかったのか?」
真魚が嵐を見て呆れている。
「始まりの島だ…」
「俺達もすぐに後を追う…」
「その前に…片付けねばならぬ事がある…」
真魚が嵐にその事を告げる。
「昨日、壱与が言っていたことだな…」
「そう言えばこの前、綾人が持って来たものは何だ…」
「いい匂いがしておったではないか?」
嵐の鼻だけは間違いが無い。
「ちゃんととってある…」
真魚が笑っている。
「その朱い瓢箪の中か…」
嵐がため息をついた。
なぜなら…
過去に一度だけ試した事がある。
何でも入る朱い瓢箪…
嵐の手足では、瓢箪の栓を抜けないからである。
「行けばご馳走が出るぞ…」
真魚がそう言って笑みを浮かべる。
「おお!そうであった!」
「おい真魚!今日であったな!」
ご馳走と聞いて、嵐はじっとしてられない。
「慌てるな…壱与が誘いに来る…」
陽が昇ってから…
それは分かっている。
しかし、嵐はそれまで待てない。
ぐうううう~っ!
嵐のお腹が鳴った。
「も~たまらん!」
嵐が転げ回る。
「仕方ない…」
真魚がそう言って瓢箪の蓋を取った。
「これで我慢しておけ…」
囲炉裏の火を起こして、焼き始めた。
「ん~たまらん!」
いい匂いが漂ってきた。
「焼けたぞ…」
真魚が嵐の前に差し出す。
「何だこれは、米の塊みたいだが…」
「これは、餅だ…」
真魚が嵐に説明する。
ふはっふはっ
「ほれはうはい!」
「食べるか喋るかどっちかにしたら!」
「ほんとに、食いしん坊なんだから…」
壱与が呆れながら…
その様子を覗いていた。
次回へ続く…