空の宇珠 海の渦 第九話 魂の鼓動 その四十四
初瀬からの帰り道。
真魚と嵐は川沿いの道を歩いていた。
突然、真魚が立ち止まった。
「真魚、どうした?」
足下の嵐が気にしている。
真魚が笑みを浮かべている。
「まさか…奴等か…」
嵐が周りを見ている。
ひゃひゃひゃひゃ~
どしん!
空から後鬼が降ってきた。
どしん!
続いて前鬼が降ってきた。
「嵐、お主はまだまだじゃのう~」
後鬼が嵐をからかう。
「うるさいわ!わかっておったわ!」
嵐が負け惜しみを言う。
「ところで真魚殿…」
前鬼が後ろを指さした。
「ほう…」
「あれは、紅牙か…」
真魚が笑みを浮かべた。
「奴等の事が掴めましたぞ…」
前鬼が真魚に言う。
「紅牙が来たら、話を煮詰めるとするか…」
まだ見えぬ紅牙に向かって、真魚が言った。
出雲に着くと、借りている離れに向かう。
すると、家の前で壱与が待っていた。
「あれ、このお方は?」
「金峰山の紅牙だ…」
真魚が紅牙を紹介する。
「初めまして、壱与と申します…」
「ふふふっ…」
壱与が笑っている。
「ほんと、真魚の知り合いって…」
壱与が紅牙を見ている…
「あっ、そうだ!」
「真魚、綾人様のお屋敷にはいつ行くの?」
壱与がずっと気にしていたこと…
それを思い出した。
「明日はどうだ…」
真魚が壱与に聞く。
「分かった、皆に言っておくね…」
壱与がすぐに走って行った。
「あれが…壱与か…」
紅牙が驚いている。
「噂には聞いていたが…」
「あれほどの霊力とは…」
紅牙が笑っている。
それを…
一目で見抜く紅牙もただ者ではない。
「おい、お主!良からぬことは考えるな…」
嵐が紅牙を見ている。
「心配には及ぶまい…」
「残念ながら…」
「俺には扱えぬ代物のようだ…」
紅牙がそう言って笑った。
次回へ続く…