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空の宇珠 海の渦 第九話 魂の鼓動 その三十七






「ここも久しぶりじゃのう…」

 




後鬼がその場所を見渡している。

 



吉野、金峰山(きんぷせん)寺。

 



前鬼と後鬼が嘗て暮らした場所である。

 




挿絵(By みてみん)






「これはまた都合が良い…」

 



前鬼が笑っている。 

 




「そろそろかと思っていたよ…」

 




紅牙が目の前に現れた。

 




「真魚が来るかと思ったが、忙しいようだな…」

 




「真魚殿は、ある男達を追っておる…」

 



前鬼が紅牙に事情を説明する。

 




「うちらはその事を聞きに来たのじゃ…」

 



「紅牙、お主は知っておったのであろう…」

 



後鬼が紅牙を睨んでいる。 




「あの島で、怪しい男を見た…」

 



「法華経を護摩壇に焼べておった…」




「恐らく、小角様のものじゃ…」

 



後鬼の言葉には、怒りさえ感じる。

 




「その話はここではまずい…」





 

「老師様が書院で待っているはずだ…」

 




紅牙は前鬼と後鬼を連れて、書院に向かった。






何もない部屋。

 



書院と呼ぶにはふさわしくない。

 



ただの空間…

 




そんな感じさえする部屋であった。

 




「久しぶりじゃな、前鬼後鬼…」

 




「その様子じゃと、退屈はしておらぬようだな…」

 




老師がそう言って笑っている。

 




「老師殿…お久しぶりでございます…」

 




前鬼と後鬼は頭を下げた。

 





「今回の事はお山も関わりがある…」

 




「お主らもうすうす感じておるであろう…」

 




老師が前鬼と後鬼に向き合っている。

 




紅牙は二人の後ろに座っている。

 




「老師殿は奴等のことをご存じなのですか?」

 




前鬼が単刀直入に聞く。

 





「これは、お山の極意事項じゃ…」

 




「代々、口伝によってのみ伝えられておる…」

 




「何ですと…」

 




老師の言葉に後鬼が唸った。

 




「どうりで…儂らも知らないわけじゃ…」

 




前鬼がその言葉に納得している。

 



「今知っておるのは、儂と紅牙だけじゃ…」

 



「紅牙とて、少し前に知ったばかり…」

 




老師がその事実を打ち明ける。

 



「お主らに出逢ったのは、老師様の言いつけの時だ…」 

 




紅牙も巻き込まれた一人…

 




そう言う事になる。

 






「ある男が…」





「護摩壇に法華経を焼べておりました…」

 




後鬼が島で見た事を老師に告げる。

 




「なるほど…」

 




老師がそう言ったきり黙り込んでしまった。

 




「真魚殿は、闇を扱う者と出逢っております…」

 




「闇を使うだと…」

 



前鬼の言葉に紅牙が驚いている。 

 





「奴等は恐らく…裏の者…」

 




老師がようやく口を開いた。

 




「裏の者とは…どういう…」

 




後鬼が老師に説明を求める。

 




「小角様が拵えた修験…」

 




「それには裏があったのじゃ…」

 




「な、なんですと!」

 




老師の口から出た言葉…





それに後鬼が驚いている。

 




「裏とは、どういうことなのです?」



 

前鬼がそれを知りたがっている。

 




「全ては表裏一体…」

 




「表と裏が存在する…」

 



「我らの修験の道もまた然りなのじゃ…」





老師の言葉に皆が引き込まれた。





「そして…」




「それは小角様の教えなのじゃ…」





老師が信じられない言葉を発した。

 




「小角様の教え…ですと…」

 




後鬼は開いた口が塞がらぬまま、その意味を考えていた。

 




次回へ続く…




挿絵(By みてみん)








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