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空の宇珠 海の渦 第九話 魂の鼓動 その三十二





「綾人、もう帰るの?」

 




浅葱は綾人に声を掛けた。

 




しかし、綾人は気付かない。

 




夢遊病者の様に歩いている。

 




「おい!綾人!」

 




浅葱が大きな身体で綾人の前に出た。





「わっ!」

 




それでようやく綾人が気付いた。

 




挿絵(By みてみん)





「どうした…何かあったの?」

 




来た時とはずいぶんと違う。

 




綾人の様子を、浅葱が気にしている。

 





「いや、別に…」

 




そう言われても浅葱は納得出来ない。

 





「ひょっとして…壱与のこと…?」

 




壱与の所へ行く…

 




そう言って浅葱の前からいなくなった。

 




そして…


 


帰って来ればこの有様である。






「いや、そう言うわけではないんだ…」

 





「ただ…」

 




そこまで言いかけて、綾人の口が止まった。

 




「ただ、どうしたのよ!」

 




「早く言いなさいよ!」

 




浅葱は、綾人の背中を手で叩いた。 

 




どん!





「痛っ!」

 




綾人が背中を押さえている。

 





「浅葱って力あるなぁ…」

 




ようやく綾人が笑みを浮かべた。

 





「だから、何なのよ?」

 




浅葱は綾人にせっつく。

 





「壱与様って何考えているんだろう…」

 




「そう思って…」

 




ぷっ!





わははははははっ~

 




綾人の一言で、浅葱が腹を抱えている。

 





「そ、そんなにおかしいですか?」

 




綾人は戸惑っている。

 





「壱与はね、特別なの!」


 



「そんな事気にしてたら、付き合ってられないよ!」

 




浅葱が壱与の友達である訳…





それを綾人は分かった気がした。

 





「壱与様は…特別…」

 





「壱与様は…私とは違う…」

 




綾人は、浅葱の言葉に囚われた。

 






「あれはあれで苦労しているのよ…」

 





「誰にも言わないけれど…」

 




「だって、言ったって誰も理解出来ない…」 





「わからないもの…」

 




「でも、私は少し安心した…」

 




「佐伯様や嵐がいた…」

 




「それだけでも、壱与には救いだと思うの…」 





綾人は、浅葱の言葉に飲みこまれた。

 





「浅葱って…壱与様のことわかっているんだ…」

 




綾人はそう言った。

 





「あんた、話聞いてた?」

 




「だから、分からないって…」

 




「でも、壱与は壱与…」

 




「全部壱与なの…」




 

綾人は、浅葱の言葉に感動していた。

 





「全部…壱与様…」

 




壱与の全てを受け入れる浅葱の心。

 




その美しさと広さに、綾人は気付いた。

 





「私は壱与が大好き…」

 




「ただそれだけなの…」

 




綾人の言いたいこと…

 




それを浅葱はあっさりと言う。

 




しかし…





この時、綾人は感じた。






浅葱の気持ちには…適わない…

 




理由もなく、そう思っている自分がいた。






「浅葱ってすごいんだね…」

 




綾人は浅葱に向かって言った。

 




「私?私のどこがすごいの?」

 





「お偉い方の頭はどうにかなってるのね…」

 





浅葱はそう言って笑っていた。

 





「ありがとう、浅葱…」

 




「少し、元気になったよ…」

 




綾人が笑みを浮かべた。

 





「だったら胸張って帰りなさい!」

 




浅葱は綾人の背中を叩いた。

 




「どうせ、明日も来るんでしょ!」

 




浅葱はそう言って綾人を見送った。






次回へ続く…




挿絵(By みてみん)





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