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空の宇珠 海の渦 第九話 魂の鼓動 その三十一








「嵐の姿が見えませぬなぁ…」

 



後鬼が周りを見渡した。

 




「あそこだ…」

 




真魚が嵐の居場所を見る。

 




「よほど…壱与の事が気になると見える…」

 




後鬼がそう言って笑っている。

 




「久しぶりに逢ったのだ…」

 




「仕方あるまい…」

 



真魚もその事は分かっている。 

 





「一つの国を動かす事も出来る…霊力…」

 




前鬼は壱与の力をそう見ている。

 




三諸山の神と通じ、倭の大地を守護する巫女。

 




その壱与を守る。

 




偶然の出逢い。

 




それでも…

 




嵐の力は頼もしい。

 





「これも…必然か…」

 




後鬼が笑みを浮かべる。

 




「では、うちらはお山に…」



 


前鬼と後鬼はそう言って姿を消した。

 




「おや?」

 




「奴等は何処かに行きよったのか?」

 




嵐が帰った時には、前鬼と後鬼の姿はなかった。

 




「嵐、お主に頼みたい事がある…」

 



真魚が珍しくそう言う。

 




「頼まれても良いが…」

 




「飯と引き替えじゃぞ…」

 




真魚はその条件と引き替えに、嵐に頼み事を伝えた。





「任せておけ…」 

 




嵐がそう言うと突風が吹いた。

 




嵐の霊気が大気を押しのけた。

 




挿絵(By みてみん)





神々しい波動が大地を駆け抜ける。

 




そこには金と銀の美しい獣。

 




本来の嵐の姿があった。

 










蜻蛉は山蝉に逢うために、目的の場所に向かった。

 





出雲の奥。

 




泊瀬(はつせ)にある。

 




泊瀬とは現在の初瀬である。

 




そこで夜に落ち合う事になっている。

 





「夜までは時間がある…」

 




「しかし、奴等は動くまい…」

 




川沿いの道を歩いている。

 




その時であった。 

 




「あっ!」

 




突風が吹いた。

 




身体が一瞬宙に浮いた。

 




そのまま地面に転がった。

 




「なんだ!今のは!」 

 




蜻蛉はすぐに立ち上がり、身構えた。

 




ただの風ではない。

 




強烈な波動…

 




それが、蜻蛉の脇を抜けて行った。





何かに襲われた…





蜻蛉はそう感じた。

 




もしそれが悪意のあるものであったとしたら…





無事ではなかったはずだ。

 




蜻蛉の中に僅かではあるが、恐怖が生まれた。

 




「いかん!」

 



蜻蛉はその恐怖を押さえ込んだ。

 




「危ない、危ない…」

 




恐怖は闇を生む。

 




それは自らをも貶める穴。

 




思考はその穴に通じる道。

 




闇の種を扱う者…

 




その仕組みは十分理解している。 

 





「それにしても…」

 





今まで感じた事のない波動。

 





蜻蛉はその事実に戸惑っていた。






次回へ続く…





挿絵(By みてみん)







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