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空の宇珠 海の渦 第九話 魂の鼓動 その二十七






綾人は気分良く屋敷を後にした。

 




壱与の事は、御前様に報告し了承を得た。

 





「それにしても御前様…うれしそうだったな…」






その顔を思いだし、笑みを浮かべる。






挿絵(By みてみん)





もう何も悩むことはない。

 





出雲邑には、気持ちよく向かう事が出来る。







「昨日までが…嘘のようだ…」

 





たった一日…

 





それだけで、天と地ほどの違いがある。

 





自らの心…

 





その違いが不思議でならなかった。

 





結局…






不安をよそに…

 





全てが良い方向に向かった気がする。

 





「それにしても、あの方達…」 

 




「あんな風に生きられたら…」

 





自由で解き放たれている。

 





それに比べ自分は…






人の顔色ばかり気にしている気がする。






生きている世界が全く違う。

 




綾人は…

 




それを、羨ましく感じていた。











 




「なるほどな…そういうことか…」

 




真魚が笑みを浮かべている。

 




「お主、また何か企んでおるであろう…」

 




嵐がその笑みを嫌っている。

 




今、嵐は幸せである。

 




壱与と食い物…

 




大好きなものが側にある。

 





出来れば動きたくない…

 




その思いは十分に理解出来る。

 





「小角殿の経塚が…そうなっているとはな…」

 




ある意味で予想外…





真魚の考えとは少し違っていた。

 





「俺達が出逢った男達も同じ、修験の姿だった…」

 





「なんと!真魚殿もそのような者達に…」

 




後鬼が驚いている。

 





「こちらだけでは…なかったのか…」

 





予想を超えた何か…

 





それが動いている。

 





前鬼は、それらを感じ取っていた。

 






「しかも、奴等は闇を呼び寄せた…」

 





「何ですと!!」

 




後鬼は更に驚いた。

 





「ひょっとしたら…」

 




前鬼が感じた危険な香り…

 





闇が関係しているのなら、頷ける話である。

 





「闇を意のままにできるとなると、厄介ですな…」

 




前鬼が真魚に言う。

 




「意のまま…という感じはない…」

 




「どちらかと言えば、呼んで来ただけ…」

 




「そんな感じだ…」

 




真魚はその時の状況を説明する。

 




「どちらにせよ、奴等は使うことができる…」

 




「そう思っておいた方が良い…」

 






「そうすると、うちらには手強い相手じゃな…」

 




後鬼はそう言って嵐を見た。

 




「そうじゃろ!そうじゃろ!」

 




「俺の力が必要じゃな…」

 




嵐が自慢げに上を向き、後鬼と目を合わせた。

 





「奴は呼んでおいて逃げおったからなぁ…」

 




嵐はそれを見ていたのである。

 




「逃げただと…」

 




「それは、手に負えない…」

 




「そういうことですかな…」 

 




後鬼は真魚に確認を入れる。

 






「俺も、そう考えている…」

 




真魚が、後鬼に自らの考えを示した。 






「儂らが見た奴と、関係ありそうですな…」





前鬼はそう考えた。

 





「西の龍と東の龍…」

 





「それに紅牙が動いているなら、お山にも関係がある…」

 





そして、真魚が更に言う。

 





「お主達の考えは間違っていない…」

 




「恐らく、小角殿は鎮護の基礎を築いたのだ…」

 




「しかし、全てには表と裏がある…」

 




「表と裏…」

 




前鬼が知識の灯りを探っている。

 




その中に何かを探している。 

 





「奴等は…裏…」

 




小角が施した経塚を利用する。

 




前鬼が考えたのはそれである。

 





「そう見える…だが、何の為に…」

 




「それが、腑に落ちぬ…と思わぬか?」

 




真魚が、前鬼と後鬼に聞いた。

 





「うちらもそれは思っておった…」

 




「ここまでして何をしたいのか…」

 




小角との思い出が一つ消えた。





後鬼は淋しそうに答える。

 




「小角様と…奴等は真逆…」

 




しかし、それだけでは意図が見えてこない。

 




そして…





真魚が笑みを浮かべる。






「紅牙に聞くしかなかろう…」

 




真魚が言った。

 





「そうか…お山か…」

 




後鬼が、真魚の言葉に唸った。

 





「先に紅牙が動いていた…」

 




「それもまた、腑に落ちぬ…」

 




真魚がそう言って笑みを浮かべた。






次回へ続く…





挿絵(By みてみん)


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