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空の宇珠 海の渦 第九話 魂の鼓動 その十四





大柄な女が山に入って行く。

 




肩に鍬を担ぎ、背中に籠を背負っている。

 




「壱与には悪いけど、止められないのよ…」





浅葱はそう言うと、どんどん奥に進んで行った。 

 





そこは獣道である。

 




見た目にはただの草むらである。





道なのかは見分けは付かない。

 




そこを迷わずに進んで行く。

 




それだけ何度も山に入っている。

 




浅葱にとっては庭なのである。






この時代、山は安全な場所ではない。

 




しかも、女にとっては尚更である。

 




村や里に近ければまだ良い。

 





浅葱の居る場所は、深い森の中である。

 




壱与が窘めたのも頷ける。





浅葱の行動は、女としては無謀なのである。






「このあたりだったけど…」





浅葱は何かを探し始めた。

 




「あった…」





目印に結んでおいた葉…

 




それが、浅葱の目に止まった。

 




それは、山芋の蔓に結ばれていた。

 




浅葱は伝っている蔓を追った。 

 




地面との繋がりの先に、目的の芋がある。

 




「ここからが、本番なのよ…」





浅葱はそう言うと、その根本を鍬で掘り始めた。

 





大胆に、時に慎重に…

 





手慣れた様子で、どんどん掘り進めていく。

 





「これで、半分くらいか…」

 




額から汗が落ちる。

 




浅葱はそれを腕で拭った。

 




挿絵(By みてみん)







その時であった。

 




「!」

 




浅葱はその気配に気がついた。

 




誰かに見られている。

 




浅葱はその者に気付かれないように、様子を探った。

 




穴を掘り進めながら、気配に集中する。 

 





そして、その主を探し当てた。

 




かさっ、かさっ…

 




かすかに草が擦れる音が鳴る。

 




それが、近づいてくる。

 





「誰なの!」





浅葱は、持っていた鍬を構えた。

 





「大したものだな…」





「俺に気付くとは…」





男の声であった。

 





姿はまだ見えない。





浅葱の額から汗が流れ落ちる。

 





「あんた男でしょ…」





「姿ぐらい見せたらどうなの…」





よほど腕に自信があるのか…

 




浅葱の言葉は挑発的である。 

 




「いい度胸をしている…」

 





「気に入った…」






草の影から、大きな男が姿を見せた。

 






禿頭だが、残りの毛が逆立っている。






いかにも好色そうな鋭い目つき…

 




髭を蓄えた角張った顔。

 





手には錫杖、修験者のようである。

 





「神に仕える者が、女をいたぶるのか…」





浅葱の言葉は鮮烈である。





「そうされたいのなら、そうしてやってもいい…」





男は浅葱の前で、笑みを浮かべた。

 




次回へ続く…




挿絵(By みてみん)







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