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空の宇珠 海の渦 第九話 魂の鼓動 その十一






「それにしても…」




「なかなか面白い使い方する…」




真魚が、鹿牟呂の鎌を見て言った。





ただの鎌であるが、その動きは特殊。

 




真魚が初めて見るものであった。

 




しかも、鹿牟呂の技は昨日今日のものではない。

 




「それをどこで覚えたのだ…」




真魚は鹿牟呂を見て言った。

 




挿絵(By みてみん)





「佐伯様は全て見抜いてるようですな…」





あの闇を葬り…

 




神の犬を連れて歩く。

 




ただの男ではない。

 




鹿牟呂もそれを感じている。





「今はただ、作物を作り、山の幸を頂く…」 




「ただそれだけ…」

 



「それではいけませぬか…」




鹿牟呂が、置いていた籠に鎌を仕舞った。

 




「それだけで終わればそれでいい…」

 



真魚が鹿牟呂に言った。

 




蜻蛉と名乗る修験者。

 




真魚はそれが気になっていた。









 


ある屋敷の庭であった。

 



巴御前(ともえごぜん)様にお伝えしたいことがあります…」

 




若い貴族の男…

 



庭に向かう寝殿の前で片膝を着く。

 



それを見た侍女が中に入っていった。

 



しばらくすると、屋敷の中から一人の女性が現れた。

 




「どうなされました、綾人(あやひと)…」





巴御前らしき女性が濡れ縁に立った。   





「壱与様の様子を伺って参りました…」




そう言うと、綾人は顔を上げた。

 




「噂どおりの方でございました…」





「そうですか…」

 



その報告を聞いて、巴御前の顔が和んだ。

 




綾人にはそのように見えた。

 




しかし…

 



綾人には一つの疑問があった。

 




貴族と庶民…

 




御前様と壱与には何の関わりもない。

 




相容れる所はどこにも存在しない。 

 




それなのに、壱与を気にしている。

 




それが綾人には腑に落ちないのである。






「御前様、何かお迷い事でも…」

 



神に通じる壱与の力…

 



それが必要な重大な出来事…

 



御前様の身に、何かが起きている。

 




綾人が感じた壱与の力…

 



御前様もそれを求めている。

 



綾人はそう考えていた。

 




「そういう訳ではない…」




「綾人…」




巴御前は、綾人を見つめた。

 




「な、何でございましょう…」




その切なげな瞳に、綾人はたじろいだ。

 




その美しさの中に秘められた想い…





若き男にはその受け皿がない。

 




「出来れば…」





「出来ればでよい…」





「その壱与に遭うて見たい…」

 




綾人は驚いた。

 




「は、はい!」





驚いたまま、返事をしてしまった。

 




しかし…

 




『出来るなら…そうしたい…』

 




綾人も同じ思いであった。

 




「も、もうしばらく…お時間を…」

 




「今一度、確かめて参ります…」

 




綾人はそう言って頭を下げた。

 




「ありがとう、綾人…」

 



顔を上げた綾人の前に、美しい笑みが耀いていた。

 




次回へ続く…




挿絵(By みてみん)







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