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空の宇珠 海の渦 第九話 魂の鼓動 その七





葛城二十八宿(かつらぎにじゅうはっしゅく)

 




役小角が法華経八巻二十八品を、一品ずつ埋納したとされる経塚である。

 



現在の和泉山脈から金剛山地の山、その付近に二十八の経塚がある。

 



現在も修験道の行場となっている。





 

「しかし…」

 




「小角様は何の為に、経塚を拵えたのじゃろう」

 




後鬼は走りながら考えていた。

 




その時!





「!」

 




後鬼はその気配を感じた。 

 




「人か!」

 




前鬼がその気配をそう感じ取った。

 




二人はすぐに木の上に隠れ、様子を見ることにした。 

 




「それにしても…これは…」





後鬼がその波動を感じている。

 




「人にしては…大きすぎる…」

 




前鬼が疑問に感じたのは、そこであった。





「じゃが…」

 




「まさかとは…思うが…」

 




後鬼にはもう一つの疑問があった。





人であったとしても、ただの人ではない。

 




それなりの波動の持ち主…

 




それは疑う余地がない。

 




そして…

 




もう一つの疑問…

 




それは、この場所を知っている。

 




その事実である。

 




正確に場を把握している者はそう多くない。 






自らの力で探し当てたのなら、相当の霊力の持ち主…

 




そういうことになる。

 





「そろそろか…」 

 




その波動が近づいてくる。

 




鬼の目が、その姿を捉えた。





「まさか!」

 




「これは、どういうことだ…」

 


 


次の瞬間には、二人は木の上から跳んでいた。

 




「よう!」





目の前の男がそう言った。

 



挿絵(By みてみん)





紅牙(こうが)!お主どうして…」





後鬼が驚いた様子で、その男を見た。

 




金峰山の紅牙であった。






赤い唇、切れ長の目、長い髪…

 




男とは思えない、美しい姿であった。





妖しげな美。

 



だが、その美しさの奥には牙がある。

 



紅い牙。

 



その牙の餌食になった者は、少なくない。

 




紅牙と呼ばれる所以はそこにある。

 





「お主らも、目的は同じか…」




驚いた様子も見せず、紅牙が言う。

 




「真魚は元気にしているようだな…」




前鬼と後鬼がここにいる。

 



紅牙はそこから既に読み取っている。

 




「やはり、何かが起きているのか…?」





前鬼が紅牙に聞いた。

 




「俺の見た所…」





「小角様と反対…」





そう言いながら…

 




紅牙が辺りの様子をうかがっている。





「そういう者達がいるようだ…」





紅牙が、態と大きな声で言った。

 




前鬼と後鬼は、その意味を受け取っている。

 




「小角様と反対…」




後鬼にはその意味が分からなかった。

 




「どうやら…」





「経塚の一部に細工をされた…」





紅牙がそう言って笑みを浮かべた。

 




「細工…とな…」




意味もなく、小角が経塚を作った訳ではない。




それは、理解出来る。




だが、 後鬼にはまだ何の事か分からない。

 




「龍の背骨か…」




前鬼が口を開いた。

 




前鬼の知識の灯り…

 



その中には、膨大な知識が存在する。

 



龍の背骨…




その奥にそれはあった。





「なるほど…そういうことか…」




前鬼が蓄えた口ひげを触った。

 




「こら、爺さん!」

 



「うちにもちゃんと説明せんか!」

 



自分だけ蚊帳の外にいることが、後鬼は我慢できなかった。

 




「二十八もの場所に分けて、経塚を作った…」

 




「あの頃、儂らはそれだけだと思っておった…」





「仕事の手伝いだけで満足であった…」





「だが、それには意味があったのじゃ…」




前鬼が思い出すように語り始めた。





次回へ続く…




挿絵(By みてみん)




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