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空の宇珠海の渦 第八話 神の血族 その四十八





「この辺りでどうだ…」



真魚が皆を止めた。

 


森に光が射しこんでいる。


 

一本の大木が倒れていた。

 


真魚がその上に、後鬼の煙玉を置いた。


 

そして、手に持っている棒に擦りつけた。


 

すると、煙玉に火が付いた。





挿絵(By みてみん)



「わぁ…」



昴が思わず声を上げた。

 



「七色…本当だったのだな…」

 


阿瑠が、それを見て感心している。

 



七色の煙が、渦を巻くように天に昇っていく。

 


深緑の底から、龍が天に向かうようにも見える。

 



「虹の煙みたい…」



舞衣もそれを見て驚いている。


 

それは、皆が初めて見る光景であった。

 



「奴は…暇なのか…」



嵐だけが、それを見て呆れていた。

 



「天に昇る七色の龍…」



「虹龍玉とでも名付けるか…」



真魚も笑っていた。









「火吟かぎん様、あれを!」



深い森の隙間から、それが見えた。

 



「これは…」



「どういうつもりだ…」



火吟と呼ばれる男が言った。

 


七色の煙。

 


当然、自然の煙では無い。

 



「罠か…」



普通はそう考える。

 


既に、沢山の仲間が消えている。

 


そこにいる者達の緊張が伝わって来る。

 



「行くしかないだろう…」



義沙ぎざが、笑みを浮かべて言った。

 


「正気か?」



火吟は何かを畏れている。


 

その畏れこそが、闇を引き寄せる。

 



「どのみち俺達に、勝ち目は無い…」



義沙がそう言って、皆を見た。

 


覚悟はしておけ…



そういう意味だ。

 



「お主…何かを知っておるのか?」



火吟が、義沙に疑いを向ける。



「知っていれば…裏をかく…」



義沙はそういう男だ。

 



「知らぬから言っておるのだ…」



「裏も表も全くわからぬ…」



義沙は両手を広げた。

 



「お主が先頭を行け…」



火吟が義沙に言った。

 



「俺もそのつもりだ…」



義沙が、笑みを浮かべて答えた。

 



「疑うのも…無理はない…」



「この話は、俺が持ち込んだものだ…」



「だが、違うのだ…」



義沙がそう言って歩き始めた。

 



「違うとは…どういうことだ…」



その後ろに、火吟が続いた。

 



「何も…かもだ…」



義沙は笑っている。


 


自らの破滅を楽しんでいる。


 

そうとしか見えない。

 



「俺がいない間に、全てが変わった…」



「今は、それしか考えられない…」



義沙は歩きながら喋った。 




「その答えが、あそこにあるのか…」



火吟がつぶやいた。

 



この森の先に、全ての答えがある。

 


煙がその方向を示している。

 


今の義沙に畏れは無い。

 


むしろ楽しんでいる。


 

心が躍っている。

 



「そういうことだ…」

 


破滅に向かう自分を楽しんでいる。

 


義沙はそういう男であった。

  






「気配は五つ…」



昴がそれを捉えていた。

 



「潔いではないか…」



真魚が笑みを浮かべた。 


 

その気配は、真っ直ぐに近づいてくる。

 


真魚もそれを捉えている。

 



「相手は俺だ…」



「あきらめが肝心じゃ…」



嵐がその方向を見ている。

 



「もうすぐよ…」



昴が言った。

 



阿瑠に緊張が奔る。


 

がさっ!

 


落ち葉を乱す、かすかな音。

 



「来たわよ…」

 


昴の声と同時に、木の後ろから顔が覗いた。

 



「あれは…」



舞衣が驚いている。



 

「義沙!」



昴が、その男の名を呼んだ。

 



「駒が揃った…と言うわけか…」



義沙と呼ばれた男が、昴を見ていた。




「ほう…」

 


真魚が笑みを浮かべていた。




挿絵(By みてみん)




続く…







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