空の宇珠海の渦 第八話 神の血族 その四十七
嵐を先頭にして、森の中を歩いている。
嵐の後に昴、阿瑠、そして舞衣が続いている。
しんがりは真魚が務めていた。
「5人ほど…」
昴は既にそれを感じ取っていた。
その感度は更に上がっている。
人の能力にも個性がある。
この力は昴の個性であった。
「失敗を、改めぬ奴等じゃな…」
先頭の嵐が、つぶやいた。
「相変わらず…すごいものだな…」
阿瑠が呆れている。
「後鬼の煙玉は、無駄だったかも知れぬな…」
嵐がうれしそうに言う。
「少なすぎる…」
真魚がつぶやいた。
「そういえば…そうかも知れぬ…」
阿瑠が何かを考えている。
帝のやり方は良く知っている。
一度、ぐらいでは曲げることは無い。
蝦夷との戦いが、まさにそうであった。
「その気配は…闇と戦った辺りだな…」
真魚が昴に、確認を入れた。
「はい…」
昴は、その方向を気にしていた。
「これは、誰が拵えたのじゃ…」
謎の式盤を見て、後鬼が言った。
「古の神の力…としか言えませぬ…」
美鷺が後鬼の前にいる。
前鬼と後鬼、美鷺が村に残っていた。
「遙か遠い昔…滅んだ世界があった…」
「この辺りは、その一部だったかも知れませぬ…」
美鷺が話を続けた。
「滅んだ…世界…」
後鬼が眉を顰めた。
少なくとも、後鬼の生きている間の話では無い。
「”れむりあ”と…」
美鷺がその名を口にした。
「勿論、私らは古の文字は読めませぬ…」
「波動で教えて頂いたのです…」
「面白い話じゃな…」
二人の後ろに、前鬼が座っている。
「先ほど一部と言っておったが…」
前鬼が、美鷺に尋ねた。
「今は、ほとんどが…海の中ですな…」
その海とは、熊野灘という事になる。
「そうすると…この倭も含まれていた…と言う事か…」
前鬼は、そう推測したようだ。
「では…これ以外にもあるのか?」
後鬼が謎の式盤を見ている。
「私達が見つけた物は、これと同じ物がもう一つ…」
「それと…王の証、剣、鏡、勾玉…」
「探せばまだ…あるかもしれませぬ…」
美鷺が笑みを浮かべた。
「まだ、未知の力が眠っている…」
「そういうことか…」
前鬼が驚いている。
「古の世界の生き残りが…、王の証を受け継いだのか…」
後鬼が考え込んだ。
「その可能性はあるが…時が合わぬ」
「別々に存在した…と考える方が納得出来る…」
前鬼が自らの考えを伝えた。
「ひょっとして…」
「お主らが…王の証を受け継ぐ者達か…」
後鬼が美鷺を見た。
「それは…答えられぬ…」
美鷺が笑っている。
「そういうことか…」
前鬼の中で何かが繋がった。
美鷺の笑みは、否定ではない。
言えないだけなのだ。
「神の力の地、受け継ぐ者、導くもの…」
「三つの力が…一つになって…」
「この地より飛び立ったのか…」
後鬼がつぶやいた。
「八咫烏も…三本足じゃったのう…」
前鬼が、神話の一部を思い出している。
「ここに一度止まり…融合した…」
「その後、この地を抜けて行った…」
「そういうことなのか…」
前鬼の中で、全てが繋がって行った。
続く…