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空の宇珠海の渦 第八話 神の血族 その四十六






謎の式盤を囲む様に、皆が座っている。



「なぜ、昴と舞衣が付いて来るのだ!」



阿瑠はその作戦を不満に思っていた。

 



「その必要があるからだ…」



真魚が笑っている。

 


「舞衣一人に翻弄されおったくせに…」

 


嵐がその事実を、阿瑠に突きつけた。

 



挿絵(By みてみん)




「闇が来なければ、どうなっていたか分からぬ…」



阿瑠が、負け惜しみを言っている。

 



「俺も真魚もついておる、心配は無用じゃ…」



嵐が阿瑠に止めを指した。




「それは…そうだが…」



阿瑠は納得出来ない。

 



「お主は、とりあえず交渉に臨め…」



「その後は、真魚殿に任せれば良い…」

 


後鬼が、阿瑠を後押しする。




「私達はどうすればいいの…」



昴が、後鬼に聞いた。




「見届ける必要がある…」



美鷺が二人を見て言った。

 



「見届ける…」



昴は怪訝な表情を見せた。

 



「見ることは、受け入れることじゃ…」



美鷺は昴を見て言った。

 


「お主らが全てを見て、受け入れ、決めるのじゃ…」



美鷺は昴と舞衣を見て微笑んだ。

 



「全てを…決める…」



昴は、その言葉を口にした。

 


噛みしめるように、何度もつぶやいた。 

 



「じゃが、交渉するためには、出逢わなければならぬ…」 



後鬼が、阿瑠を見た。

 



深い森の中で、申し合わせもせず、人同士が出逢う。

 


それは、かなり確立が低い。

 


しかも、相手はどこを通っているかは分からない。

 



「だから、餌が必要じゃのう…」



前鬼に、なにやら策があるようだ。




「餌…だと?」

 


阿瑠は昴を見た。


 

阿瑠達は、逃げる昴に引き寄せられた。




「わっ、私はならないわよ!」

 


昴は、慌てて阿瑠をにらみ返した。




「では、これではどうじゃ…」



後鬼が、笈から何かを出した。

 



握り拳ほどの丸い紙の塊。



見た目はそんな感じである。




「これを燃やせば煙が出る…」



「しかも、七色の煙じゃぞ…」



後鬼は、自慢げに持ち上げた。   




「七色である必要があるのか?」



嵐がすぐさま、食いついた。




「七色を出すために、どれだけ苦労したことか…」



後鬼はそれを、自慢したかったようだ。

 



「この場合…赤だけの方が良かったかも知れぬぞ…」



嵐が、後鬼の上げ足を取る。

 



「それで、おびき寄せるの?」



昴が話を先に進めた。

 



「そういうことになるな…」



真魚が呆れて、笑っている。

 



その後ろで、嵐と後鬼の舌戦は続いていた。











「義沙こっちに来てみろ!」



一人の男が義沙を呼んだ。

 


「これは…」



義沙はそれを初めて見た。


 


灰色の木。

 


生命が吸い取られた、ただの塊。

 


義沙にはそう見えた。

 



火吟(かぎん)様、こちらに!」



火吟と呼ばれる男が、声の方に向かった。

 



黒い布。

 


それだけが落ちていた。

 



「何が…起きたのだ…」



火吟と呼ばれる男が、呆然としている。

 


黒いその布は良く知っている。


 

自らが纏っているものだ。




義沙が、自らの記憶を辿っている。

 


灰色の木と、抜け殻のような着物。


 

二つを繋ぐ記憶の糸。



だが、それは…どこにもなかった。

 



「恐らく…生きては、おるまい…」



義沙がつぶやいた。

 



先の隊に、何かが起きた。

 


しかも、奴等には手に負えない何かだ。



それだけは、間違い無かった。

 



その災いが我が身に及ぶ。 

 


皆に、負の感情が沸き起こる。

 



義沙は、灰色の木に触れた。

 


触れた瞬間、崩れ落ちる。


 

灰色の粉が耀き、風に舞った。




「明日は我が身か…」




指先に残る感覚。

 


義沙はそれを確かめていた。





挿絵(By みてみん)




続く…







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