表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
433/494

空の宇珠海の渦 第八話 神の血族 その四十五






「阿瑠、命の保証はあるのか…」



真魚もその事を気に掛けていた。

 



「それは、分からぬ…」



阿瑠が口籠もった。

 


「これだから…男は困るのう…」

 


後鬼が、昴と舞衣を見た。

 


昴と舞衣は黙っているが、否定はしない。

 




挿絵(By みてみん)




「熱くなるのは良いが、後先を考えぬ…」



「命を粗末に扱うな…」



「そう言ったであろうが…」



後鬼が、阿瑠の考えを窘めた。

 



「では、どうすればいいのだ…」

 


阿瑠が、後鬼を見ている。




「それを、今から皆で考えればよかろう…」



後鬼の意見はもっともである。

 



「奴等の目的は王の証だけだ…」



「こちらの命などは、考えてはおるまい…」


 

後鬼は既に、先を見ているようだ。

 



「これを渡しても…助からぬ…」



「そうかも…知れぬな…」

 


阿瑠は、懐の王の証を手に握った。

 



その身に染みついている、帝のやり方。

 


後鬼の考えは間違ってはいない。

 


阿瑠には分かっている。




「では…」



「なぜ、昴や舞衣が来たのだ…」



阿瑠は、昴を見て言った。


 


危険な目に遭いに来る必要は無い。

 


阿瑠の目がそう言っている。

 



「えっ…」



昴は何かを伝えたかった。



だが、言葉が出てこない。




「必要だからだ…」

 


真魚が二人の間に割って入った。

 



「必要…女の昴達が…」

 


阿瑠は知らない。

 


二人が古の鍵であることを…




「さて、こちらで作戦を練るか…」



後鬼が皆を、謎の式盤の前に集めた。










がさっ!

 


深い森の下草が揺れた。

 



「おい、義沙ぎざ…」



黒い着物を着た男が言った。

 



「何だ…」



義沙と呼ばれた男が答えた。

 


鋭い目つき。



口元に髭を蓄え、薄い唇に笑みを浮かべている。



抜け目が無い。



一目で…そんな男であることが窺える。




そして、他に三人。

 



同じ黒い着物、帯刀し背中に荷物を背負っている。

 



阿瑠と同じ着物。

 



その男達が、帝の命を受けた者であることがわかる。

 



「何か妙だ…」



その男が答えた。

 



「そう言えば…そうだな…」



義沙が答えた。

 



「先の隊がどうなったかは知らぬが…」



「あいつらが何もしなかったとは…考えにくい…」



義沙は続けてそう言った。

 



「何か手がかりが、あってもおかしくはない…」

 


その男はそう言った。

 



「人の気配はしない…」

 


「だが…この感じ…」

 


蝉の鳴く声が、不気味に響いている。




「この虫の声は何だ…」



男が言った。



 

「まさか…」



蝉だけでは無い。


 

ありとあらゆる虫が、騒いでいる。



その鳴き声が、森に響いている。

 



人は虫の声を、不快には感じない。


 

だから、気がつかなかった。

 



「知らせているのか…虫が…」



義沙はそう感じた。

 



「まさか、そんなことがあるものか!」



別の男がそれを否定した。

 



その男の着物に、蜘蛛の糸が付いていた。

 



「お主、蜘蛛の巣を切ったな…」



義沙がそれを見つけた。

 



「あるかも…知れぬな…」



義沙だけは、疑う事はしなかった。

 



見えるものだけが、真実では無い。

 


義沙にそう教えた者が、村にいる。

 



「面白い…」

 


義沙は森の奥を見て、笑みを浮かべていた。

 




挿絵(By みてみん)






続く…







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ