空の宇珠海の渦 第八話 神の血族 その四十一
一筋の光が、屋敷の前に落ちた。
その波動が大地を揺らしている。
昴達が空から帰ってきた。
残された者達が、慌てて飛び出した。
「ありゃりゃ…」
お珠が驚いている。
「何をどうすればこうなるのじゃ…」
乙瑠が笑っている。
「ほに…」
「こんな短い間に…」
美鷺と朱鷺が声を揃えた。
見違えるような二人の耀き。
その波動が皆に伝わっている。
「古の扉が…開いたのか…」
お珠がその事実に気付いた。
「そうかも知れぬ…」
「いや、それ以外には考えられぬ…」
乙瑠がその事実を確信していた。
「眠らせたままでは、勿体ない…」
真魚が笑っている。
「まぁ、俺のおかげだ!」
子犬に戻った嵐が自慢している。
「なるほど…その方が都合が良い…」
「ほに、ほに…」
美鷺の言葉に朱鷺が納得している。
「何が、都合が良いの?」
昴が話に入ってきた。
「そのうちに分かる…」
「ほに、ほに…」
美鷺が問いの答えを濁した。
朱鷺と共に笑みを浮かべている。
「後は…神の地か…」
真魚が言った。
「それにはまだ…少し時間が必要じゃ…」
お珠が言った。
「いつだ…」
真魚は単刀直入に聞く。
「あと三日は必要じゃ…」
「次の満月まで待たねばならぬ…」
お珠が答えた。
「満月か…」
真魚が考え込んだ。
「満月の日に、どうにかなるの?」
昴には、想像もつかない。
「波動が上がる…そして、場を完全に閉じる…」
乙瑠がその問いに答えた。
「そのために儂ら、双子がいるのじゃ!」
「ほに、ほに!」
美鷺と朱鷺が笑っている。
「ほう…」
真魚がおおよその答えを見つけたようだ。
「だが、そのためには一度、ここを出ねばならぬ…」
乙瑠が真魚に言った。
「向こうの村に行く必要がある…」
「美鷺か朱鷺婆のどちらかを連れてな…」
お珠がそう言って息子の羅矛に視線を送った。
がたん!ごとっ!
その合図で、羅矛が床板を外した。
そこに式盤のようなものが現れた。
「これと同じものが向こうの村にある…」
「それを、こちらと同時に合わす必要がある…」
お珠の説明に真魚が興味を示す。
「なるほど…面白い…」
強い波動の答えを真魚は見ていた。
「それが、繋がりの理由か…」
そして、その答えに感心していた。
「昴、それに舞衣…」
「お主らは絶対じゃ…」
お珠が二人を見た。
「わ、私も!?」
自分の名が告げられた事に昴は動揺している。
「当たり前じゃ!」
「古の神の力を頂いたのであろうが!」
嵐が昴の足下で笑っている。
「心配するな、俺も真魚もついて行く…」
その言葉を嵐は忘れなかった。
「行ってくれるの!」
昴の喜びの波動が広がっていく。
「俺は行きたくはないが、この男は行く気だからのう…」
嵐は矛先を真魚に向けた。
「これは、俺にも関わりがあることだ…」
真魚はそう答えた。
「なるほど…そういうことですか…」
お珠は一人で納得していた。
「だが、三日後となると、少々厄介かもしれぬ…」
真魚が皆に言った。
「新たな使者ですかな…」
お珠がそれを見抜いていた。
「そういうことになるな…」
真魚は、いつもの笑みを浮かべていた。
続く…