空の宇珠海の渦 第八話 神の血族 その三十九
「ほう…」
真魚が笑みを浮かべた。
金色の光。
その柱が二人を包み込んでいく。
同時に舞衣の胸が耀き始めた。
その光が広がり昴に伝わる。
古の神の力と血。
二つの鍵が、扉を開こうとしていた。
「ああ…」
昴は思わず声をだした。
舞い降りる金色の光の粒。
その波動が、昴の心を揺らしている。
大いなる慈悲の光。
その尊さに、二人の心が揺れた。
「なんて…悲しいの…」
「これが…」
「受け入れるということなの…」
全てを受け入れ、包み込む。
その慈悲の心に、舞衣は埋もれた。
舞衣が、自らの身体を抱きしめた。
涙が溢れ、止まらなかった。
舞衣はその切なさに、身を焼かれていた。
「これが…」
昴の瞳から、涙がこぼれた。
「これが…本当の…」
その光に抱かれ、昴はそう感じた。
「あっ!」
目の前に突然現れた耀き。
『大いなる意思を受け継ぐ者達よ…』
二人の心にそれは響いた。
言葉では無い。
だが、はっきりと聞こえる。
「か、神…様…」
舞衣がその名を口にした。
二人には、その姿がはっきりと見える。
その存在が全てであり、答えであった。
「面白い…」
真魚は後ろで笑っている。
『今、扉は開かれた…』
その声はそう言った。
『我が力、使うが良い…』
さらなる光が二人を覆った。
「古の神…」
舞衣はそう思った。
全てのものが一気に流れ込む。
舞衣と昴は、そのものに混乱している。
『今はその時ではない…いずれその時は来る…』
その声はそう言うと、光と共に消えた。
『黒き闇迫り、神の血を穢す時、
光現れ、古の力が開かれる。
新たなる神の地が、人の導きとなろう…』
舞衣は、その言い伝えを口にした。
「古の力…」
舞衣が両手を見つめている。
自らの中に溢れるもの…
それを確かに感じていた。
その手に光の粒が舞い降りた。
その瞬間…
舞衣の瞳から光がこぼれた。
「ああ…」
それは、舞衣の悲しみであり、希望でもあった。
大いなる光の粒を抱きしめ、舞衣は泣いた。
全ての悲しみが溢れ、なくなるまで…
溢れた悲しみの隙間に、光が射しこんでくる。
大いなる慈悲の光。
舞衣はその尊さに触れ、光と溶け合っていた。
続く…