空の宇珠海の渦 第八話 神の血族 その三十八
「だが、人は物を創る事が出来る…」
「帝が持つ三種の神器は、どうだか…」
真魚が笑っている。
「倭にもそれがあるの…」
昴は明らかに、何かを感じている。
「本物か、偽物かは見れば分かる…」
真魚が苦笑いを浮かべている。
昴はその言葉の意味を、理解していた。
「だったら…王の証も同じではないの?」
昴はそう感じた。
「そうだ、偽物でも本物だと言えばいい…」
「帝の力がそれを本物に替える…」
真魚の言葉は、その力の危うさを示している。
「だったら…どうして…」
昴はそのことに関わっている。
気にせずにはいられない。
「この村から、ある者が逃げた…」
「王の証が、帝の知る事実となった…」
真魚が、お珠から聞いた事実。
「それで…阿瑠たちが…」
昴の中で何かが繋がっていく。
「あるなら…欲しいと思わないか?」
「王の証だぞ…しかも、大地の王だ…」
背中の真魚の笑みは、二人には見えない。
だが、二人にはそれを感じていた。
「義沙…」
昴がその名を言った。
「この世に本物が存在し、それを知る者達がいる…」
「真の神の血を受け継ぐ者は、自分でなければならぬ…」
「だが、自らの血とは別に、世界の王となる神の血が存在する…」
「そして、その証が存在する…」
「あの男なら…それは、許せない事実だ…」
真魚が、全ての答えを告げた。
「全てを手にすれば…ひとつになる…」
舞衣がそう言った。
「そういうことだ…」
真魚が話を閉めた。
だが、その裏にあるお珠達の狙い。
その事に気付いているのは、真魚だけであった。
「話は終わったようだな…」
嵐が動きを止めた。
「この大地を歩き、船を使えば出来ぬ話ではないな…」
「俺ほど速くは進めぬがな…」
嵐が笑っている。
嵐にはどうでも良いことである。
だが、一言、自慢をしておきたかったようだ。
二人は大地の耀きに目を移した。
しばらく…無言の刻が流れた。
「本当にきれい…」
昴の瞳がそれを映し、輝いている。
闇に浮かぶ生命の光。
それを、受け入れている。
そこにあるのは、見えているものだけではない。
「二人とも」
「目を閉じて観じてみろ…」
真魚の言葉で、二人が目を閉じた。
真魚の身体が、耀き始める。
二人にその波動が伝わっていく。
「これって…」
舞衣が驚いている。
「大地が…耀いている…」
昴の瞳から、光がこぼれた。
遍く散りばめられた生命の耀き。
その波動が、心を揺らす。
「なんて…美しいの…」
舞衣は、その全てを感じ取ろうとてしていた。
続く…