空の宇珠海の渦 第八話 神の血族 その三十七
「あれは海…」
「あれは…」
昴は、海の向こうに大地を見つけた。
「あっちの大地の方が大きい…」
大陸を見て驚く昴。
「何なの…この感覚…」
舞衣は、すでに違うものを感じ始めていた。
「呼ばれている…」
舞衣が言った。
「あっ…」
舞衣はその大地の形を見た。
「丸いの?」
「闇に浮いているの…」
その場で生きているのは、
嵐の霊力で守られているからだ。
「私…大地に呼ばれている…」
古の力が呼んでいる。
舞衣はそう感じた。
「えっ、大地に…」
舞衣の言葉で、昴が引き寄せられた。
「良く見ておけ…」
嵐が速度を上げた。
めまぐるしく動く大地。
「これが…全部…」
昴は、目を閉じることを忘れているようだ。
嵐はあっという間に、星を一回りした。
「なぜ、あそこだけ海が広いの…」
舞衣が胸を押さえている。
「遙か昔…」
「今より栄えた文明があったと言われている…」
「その文明は…」
「自らの力を押さえきれず、海に沈んだ…」
真魚はその事を知っていた。
「まさか…」
「古の力って…」
舞衣の鼓動が早い。
「倭はその文明の一部だと言われている…」
真魚が舞衣に言った。
「私達が守ろうとしているものって…」
舞衣がその事実に気付いた。
「恐らく、今の倭とは関係ない…」
「もっと古い何かだ…」
真魚は、舞衣の疑問に答えた。
「でも、帝が欲しがっているものって…」
我が身と引き替えるものを、昴が気にしている。
「お主らは勘違いをしている…」
「勘違い!?」
昴と舞衣が同時に驚いた。
「言い伝えは、言い伝えだ…」
「文字で書かれたものではない…」
「そうだ…私も、お福婆さんも文字なんて読めない…」
真魚の導きで、昴がそのことに気付いた。
「神のちの意味は、人の血であり、大地の地だ…」
真魚が、自らの考えを二人に言った。
「倭は…古の神の地…」
「神の地であり、古の大地の一部でもあるの…」
舞衣がそう考えた。
「すると、どうなるのよ…」
昴が難解な話についていけない。
舞衣のように思考するのは、苦手のようだ。
「帝が欲しがっているものは、王の証だ…」
「古の神の土地に、神の血を持った者達が現れた…」
「そう考える方が、可能性は広がる…」
真魚は、自らの考えを形にした。
「私の力は…太古の力…」
「神の地を守る力…」
舞衣が、胸を押さえ、目を閉じた。
込められた力と対話をしている。
「三種の神器の話を覚えているか…?」
「剣、鏡、そして勾玉のことを…」
真魚がそう言った。
「三種の…神器…勾玉…」
「まさか…」
昴が、自らの胸を押さえた。
そこには、お珠から貰ったお守りがあった。
「では…王の証って…」
昴は戸惑っている。
「それは、神の血統を示すものだ…」
「今、見ただろう…」
「この大地の王の証だ…」
真魚がそう言って笑っていた。
続く…