空の宇珠海の渦 第八話 神の血族 その三十二
「舞衣に、古の力を施したのは私じゃ…」
舞衣の祖母である乙瑠が言った。
「あれは…古の力か…」
真魚は、舞衣の波動を思い出していた。
「この国が生まれる前の、遠い昔の力じゃ…」
「儂らも、どうなるかはわからなかった…」
お珠が答えた。
「あれは…賭であった…」
乙瑠が、舞衣の傷の深さを語る。
「結果的に命は繋がった…」
お珠の言葉は、舞衣の今を憂いでいる。
「元には戻れぬのか…」
真魚はそう感じている。
「舞衣の魂は、その力がつなぎ止めている…」
「外せば…舞衣の御魂は、離れるであろうな…」
お珠も、同じような考えであった。
「では、外さねば死なぬ…と言う事か…」
嵐はそう感じていた。
「そういう言い方もできる…」
お珠は答えた。
舞衣が、真魚に見せた心の一端。
それは、自らを犠牲にする決意でもあった。
そうしてでも守りたい…
舞衣は、自らでそれを決めた。
「他にも、そのような力が存在するのか…」
真魚が再び問う。
「佐伯様は、もう知っておるはずじゃ…」
お珠がそう答えた。
「やはり、そうか…」
真魚には、おおよその見当が付いていた。
それが、真魚の笑みの理由だ。
「今、この村の波動そのものが上昇している…」
「いずれ、道は分かれるのじゃ…」
お珠はそう言った。
「見つかるはずの無い仕組みに、まだ先があるか…」
真魚は呆れていた。
「波動が上がれば、世界が変わる…」
「やがて、人は寄りつけなくなる…」
お珠が村の未来を告げた。
「見つかるはずの無いものが…」
「見つけられたのには、訳がある…」
「そう言う事だな…」
真魚が呆れていたのは…
事の結び目を解いていたからであった。
「神の血か…」
「ほう…」
真魚の言葉に、皆が声を上げた。
「さすがに敵いませぬな…」
美鷺婆さんが言った。
「ほに、ほに」
朱鷺婆さんが微笑んでいる。
「長い間、人から遠ざけて来た村に、何が起こるか…」
「佐伯様には、おわかりであろう…」
お珠が真魚を見て言った。
「偏りだな…」
「昴を逃がした理由がそこにある…」
真魚が笑みを浮かべている。
「お主、また良からぬ事を考えておるな…」
嵐が、その笑みを嫌っていた。
続く…