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空の宇珠海の渦 第八話 神の血族 その二十七






「舞衣!」

 

昴の声が、舞衣の心を現実に戻した。

 


「そのお方か!」



昴の横に昴の祖母が立っていた。

 


「待ちきれなかったみたい…」



昴が、申し訳なさそうに立っている。




挿絵(By みてみん)





「そちらが佐伯真魚様じゃな!」



「昴の祖母で、(たま)というもんじゃ…」

 


「ちなみに皆は、儂の事をお珠婆と呼んでおる…」



小さな身体に似合わず声が大きい。


 


「ありゃ!ありゃ!」



今度は、嵐を見て声を上げた。

 



「これは…何と言うていいのじゃ!」

 


驚きのあまり、一歩後ずさった。

 



「犬と言わなかっただけ、褒めてやる…」



嵐がお珠婆に言った。

 



「しゃ、喋った…」



「す、昴、どうなっておるのじゃ!」

 


お珠婆がおろおろしている。




「おばあちゃん、気付いていたんじゃないの?」



「こちらは神様…」

 


「この姿は仮のお姿よ」



昴が説明した。

 



「なんと!この犬の姿が仮のお姿とな!」



驚きの余り、言ってはならぬ言葉を漏らした。



 

「犬では無い!!神だ!!」


 

結局、お珠婆は嵐の怒りを買ってしまった。 




「申し訳ありませぬ~」

 


お珠婆はその場に跪き、手をついた。

 



「す、昴、お前も頭を下げぬか!」



地面に額をすりつけている。

 



「その心がけは認めてやる…」



嵐が、うれしそうに言った。

 



「俺と旅をしている、嵐という…」

 


見かねた真魚が、助け船を出した。

 



「なんと、佐伯様は神様をお連れで…」  



お玉婆は口を開けたまま、閉じることは無かった。

 


興奮の余り息が乱れている。




「いい加減、頭を上げたらどうだ」



嵐がお珠婆に言った。

 



「だから言ったのに…おばあちゃん…」



昴が、お珠婆の肩に手を置いた。

 



「有り難いお言葉…」



お珠婆がゆっくりと顔を上げた。

 








元の村では、阿瑠が前鬼と後鬼と話をしていた。



二人に向き合って座っている。

 


「俺はどうすればいいのだ…」




「そのまま、気長に待っておればよかろう…」



阿瑠の問いに、後鬼が答えた。

 



「お主が何も言えない以上、儂らも打つ手が無い…」



前鬼がそう言って、阿瑠を見た。

 



「言えぬのは、命令だからだ…」



阿瑠は困り果てていた。

 



「まあ、良い…その気になれば、喋らせることは簡単だ…」

 


後鬼が笑みを浮かべている。

 



「どういう意味だ」


 

阿瑠がその笑みを嫌がっている。

 



「頭痛を治すのも、喋らせるのも同じ事だ…」

 



後鬼は、秘密の薬を持っているらしい。

 


「何だと…」

 



「まあ、そんな事をしても意味は無い…」

 


「うちは真魚殿を待っている…」

 


後鬼は、阿瑠の波動を感じ、笑っていた。




だが、阿瑠は少し焦り始めていた。

 


このままでは手がかりが無い。

 


昴達を見つけなければ、手ぶらのままだ。

 



「かわいいものよのう…」



「焦る必要は無い…」



後鬼が、見透かした様に言う。

 



阿瑠が驚いたように、後鬼を見ている。

 


後鬼が阿瑠の波動を感じている。

 



「真魚殿は絶対に裏切らぬ…」

 


「お主にも、それが分かっておるはずじゃ…」



後鬼は、阿瑠の心をなだめるように言った。

 



「だが、何もせずに時を失うのは惜しい…」



焦る心が不安を生んでいる。



阿瑠は少しでも動きたかった。

 



「なるほどのう…」


 

後鬼が笑っている。

 



「では、気晴らしに、散歩でもしてみるか?」



「何を、呑気な!」




「手がかりが、無いとも言えぬぞ…」



人には気付かぬことが、後鬼達にはわかる。 




「何もせぬよりは、ましか…」 



阿瑠は、後鬼の提案を受け入れ、立ち上がった。




「素直じゃのう…」



後鬼は、阿瑠を見て笑みを浮かべた。




挿絵(By みてみん)




続く…



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