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空の宇珠海の渦 第八話 神の血族 その二十三





「儂らは吉野の鬼で、前鬼と後鬼じゃ…」



「儂が前鬼で、こっちが後鬼じゃ…」

 


前鬼が阿瑠を見下ろしている。

 



阿瑠は、刀を構えたまま動けない。




挿絵(By みてみん)





「鬼だと…」



額から伸びた角。

 


口元の牙。

 


人で無い事は確かである。

 



「分けあって、真魚殿のお供をしておる…」



「真魚殿から、見張りを頼まれた…」



前鬼が、阿瑠に事情を話した。

 



「見張り?俺のか?」



阿瑠は、その言葉に驚いた。

 



「そうじゃ、約束は守ると言うておったぞ…」



後鬼がそう言って、屋根から跳んだ。

 



阿瑠の身体に力が入る。

 



「鬼は初めてか?」



後鬼が、阿瑠の目を覗いている。

 



阿瑠の波動から、心の動きを読み取っている。 




「言っておくが、鬼にも良い鬼と悪い鬼がおる…」


 

前鬼がそう言って、地上に降りた。

 



「儂らは、良い方じゃぞ…」



前鬼が笑みを浮かべた。



 

「俺は、信用した訳では無いぞ…」



阿瑠の心は閉ざしたままだ。

 



「それは、困ったものじゃのう…」



後鬼が笑っている。



 

ぴん!

 


後鬼が指を弾いた。

 



「うっ!」



ぺっ!ぺっ!



阿瑠が口の中の物を、吐き出している。

 



「な、何をした!」



左手で口元を押さえている。

 



「言ったではないか、人如きが敵わぬと…」



後鬼が笑っている。



 

「まさか!」



阿瑠の顔色が変わった。

 



「今のが毒であれば、お主は死んでおるぞ…」



後鬼がそう言って、自らの首を絞める。

 



「毒を仕込んでいたのか…」



阿瑠の畏れが、額に汗を滲ませた。

 



「痛いか?」



後鬼が、自らの額を二度ほど叩いた。

 



「えっ?」



阿瑠は、呆気に取られていた。

 


「だから、頭は痛いのかと聞いておるのじゃ!」



後鬼が阿瑠に言った。

 



「え…」



阿瑠が左手を額に添えた。




「い、痛くない…」



「治っているぞ…」



阿瑠が驚いている。

 



「うちにかかれば、そんなものじゃ…」



後鬼が自慢げに、腰に手を当てた。

 



「相変わらず、媼さんの薬は良く聞くのう…」



前鬼が、阿瑠を見て笑っている。


 


「薬だと…」



「頭痛のことも見抜いていたのか…」



阿瑠は信じられない様子で、口元を触った。

 



「治ったであろうが…」

 


「敵に塩を送るとはこのことかのう…」



後鬼は笑っている。




阿瑠は呆気にとられたままだ。

 



「あの男…」



真魚と嵐の姿が浮かぶ。



 

「神と鬼を…味方に付けているのか…」



その事実が、阿瑠の頭の中を巡り続けた。




「さて、本題に入ろう…」

 


前鬼が話を始めた。

 



「しばらく真魚殿は戻らぬ…」



「だが、逃げた訳では無い、確かめに行っただけだ…」



前鬼は、阿瑠に真魚の行動を伝えた。

 



「ところで、お主の名は何というのじゃ?」



後鬼が、阿瑠に聞いた。

 



「俺は、阿瑠だ…」




「面白い名じゃのう…」



後鬼が阿瑠の顔を覗いている。

 



「ぼちぼち、いいのではないのか?」



そして、後鬼が阿瑠に言った。

 



「何がだ…」

 


阿瑠は眉をしかめた。

 



「その物騒なものを、仕舞って貰えぬかのう…」



後鬼が、刀を鞘に収める仕草をした。

 



「よかろう…」

 


阿瑠は、素直にその言葉に従った。

 



挿絵(By みてみん)





続く…




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