空の宇珠海の渦 第八話 神の血族 その十九
昴と舞衣の目が合った。
「あ~っ!」
突然、昴が大声を出した。
「阿瑠は?阿瑠はどこにいるの?」
昴が呆然としている。
「あの男は眠っておる…」
「真魚の仕掛けにはまりおった…」
嵐が振り返って言った。
「良かった…」
昴は胸をなで下ろした。
「阿瑠って、あの黒い者達の生き残り…?」
舞衣は、その事実を知っている。
「そうよ…」
昴がうつむいた。
「おい、待てよ!」
朔が話に割って入る。
「生き残りって、あいつらのか!」
「それは、まずいぞ!」
朔が声を荒げた。
「心配するな、朝までは絶対に起きぬ…」
「この場所も分からぬ…」
真魚が三人に言った。
「あの約束は…どうなるの?」
昴がそれを気にしている。
「約束?何の事?」
舞衣が怪訝な表情を見せた。
「あいつ等の欲しいものを渡す代わりに…」
「私を解放する…」
昴が二人に告げた。
「欲しいものって、何よ…」
舞衣がそれを気にしている。
「恐らく…王の証だ…」
真魚が三人に言った。
「王の証…?」
「それって…」
舞衣の目が、昴の剣を見ている。
「三種の神器は知っているか?」
「古より、この国の王の証だとされている…」
「剣、鏡、勾玉だ…」
「だが、奴らが捜しているのは、それではない…」
真魚が、舞衣を見て笑っている。
舞衣の視線の意味に、気付いている。
舞衣は、それを感じていた。
「違うの…」
舞衣が驚いている。
「三種の神器は、神が人に与えしものだ…」
真魚が皆にそう説明する。
「神が…人に…?」
昴は、何かに引っ掛かった。
「形があるものとは、限らぬ…」
真魚が、笑みを浮かべた。
「そう言えばお主…」
「布留の宮で光の剣を抜きおったな…」
嵐がその時を思い出していた。
「あれこそが、国を納める神の力だ…」
真魚の言葉は、昴の剣を否定している。
「では…これは…」
舞衣が、自らの胸を押さえた。
「そこにも…何かあるのか?」
「これは…」
真魚の言葉に、舞衣の心が揺れていた。
「まぁいい…」
真魚が笑っている。
「俺達を待っていた理由は、何だ…」
真魚が話を変えた。
「朔が、神を見たいと言ったからよ」
昴が朔を見て笑っている。
「俺はそんなこといってないぞ!」
朔が、話の出汁にされたことを嫌っている。
元々自尊心が強い、そう言うことだろう。
「今は仮の姿だけどね…」
昴が、嵐を見ている。
「仮…なのか?」
朔は神の獣を見ていない。
「お主なら、腰を抜かすかも知れぬな…」
嵐は朔のおおよそを見抜いていた。
「それもそうね…」
昴と舞衣が、目を合わせて笑っていた。
続く…