空の宇珠海の渦 第八話 神の血族 その十五
「何をしておるのだ、奴ら…」
突然、着物を脱ぎ始めた女に、嵐が驚いている。
「運命とか…何とか…」
嵐の目が釘付けになっている。
「見られることは覚悟の上だ…」
真魚が、笑みを浮かべている。
昴に伝える事は、こちらにも伝わる。
それを承知の上で、行っている。
舞衣は真魚の存在に気付いている。
真魚は、その事に気付いている。
「秘めた力か…秘めさせられた力か…」
真魚がつぶやいた。
「どちらにせよ、これで間違いはない…」
舞衣が、深く関わっている。
それは、昴も同じ事であった。
「知らなかった…」
「ずっと、一緒にいたのに…」
昴は舞衣の背中を見て、泣いていた。
「昴は…知らない…」
「この傷が出来たのは、ほんの少し前…」
舞衣は、昴の涙がうれしかった。
「では…あの時…」
村が、黒い者達に襲われた。
昴に浮かんだのは、その時の光景であった。
「でも…」
昴は、舞衣の傷に引き寄せられた。
そして、その傷に触れようとした。
「あっ!」
光が弾けた。
昴は、思わず手を引っ込めた。
「わかったでしょ…」
「これは偶然ではないの…」
舞衣が、着物を直しながら言った。
昴が、痺れた手を見つめている。
「これは…」
その手の振動が収まらない。
「この力が、私達を守っている…」
「もう、後戻りは出来ない…」
舞衣は昴を見て言った。
「守っている?」
「まさか、あの黒い者達は…舞衣が…」
「仕方が無かったのよ…」
舞衣がそう言って目を伏せた。
舞衣にも心はある。
その心の痛みが、昴に伝わって来る。
「私だって、あの黒い闇が来なければ…」
「この剣で、殺していたかも知れない…」
昴も同じ事をした。
舞衣の心に、寄り添いたかった。
「だけど…いつまでも…」
「逃げられない…」
昴はそう思っている。
「私は…殺されかけた…」
「村の人もみんな…」
「その末裔と言うだけで…」
舞衣は昴にその事実を告げた。
「末裔…末裔って?」
昴が初めて聞く話であった。
「だから…運命なの…」
「私達は、逃げられないのよ…」
舞衣が、昴にその事実を告げた。
続く…