空の宇珠海の渦 第八話 神の血族 その十三
闇の中に、虫の鳴き声が聞こえている。
真魚達は、昴の家で眠りに就いていた。
その鳴き声に混じって、その声が聞こえた。
「昴…昴…」
昴は最初、蚊の羽音だと思った。
だが、それが舞衣の声だと気付いた。
「舞衣…」
昴はゆっくりと身体を起こした。
そして、周りを見た。
闇の中では、目が慣れるまで時間がかかる。
「外か?」
昴は、側に置いてあった剣を持った。
そして、立ち上がった。
「これは…」
闇の中で光るものがある。
胸に下げているお守りであった。
「ひょっとして…捜している物って…」
昴は、理由も分かぬままそう感じた。
「これは、おばあちゃんの形見…」
だが、その考えを却下した。
「これもか…」
ふと目を下ろすと、剣の柄が淡く耀いている。
そのおかげで、足下に不安がなくなった。
昴は、皆を起こさぬように、そっと外に出た。
「これは!」
そして、星の宇珠に抱かれた。
「なんと、美しい…」
いつもより、星が耀いて見える。
何かが…導いている…
昴はそう感じた。
剣とお守り。
その光が、ある方向を示した。
昴の視線が、光に誘われる。
その光の先に、ほんのりと人の姿が見えた。
「舞衣…」
その光の波動を、昴は感じている。
「あなたは…生きているの?」
昴が引き寄せられる。
「みんなは…いきているの?」
昴は、その答えを知りたかった。
「ほう…」
真魚は、その様子を物陰から見ていた。
「俺の出番はなさそうじゃな…」
嵐も側で見ている。
「それにしても…」
「あの男は肝心な時に寝たままか…」
嵐が呆れている。
「阿瑠は朝までは起きぬ…」
嵐に答えながら、真魚が笑っている。
「さてはお主…何かを仕込んだな…」
今度は、真魚に呆れている。
「話がややこしくなっては困る…」
「お土産さえ持って帰れば、何も言うまい…」
真魚は二人の様子からは、目を離さなかった。
「おい、真魚!」
嵐がその変化に気付いた。
二人が近寄って、何かを話している
「知り合いのようじゃな…」
嵐の耳なら、離れていても捉えられる。
「舞衣という幼なじみか…」
真魚はそう受け取った。
「何処かへ行くようじゃぞ…」
嵐がその会話を真魚に告げた。
「村人の所か…」
真魚はそう考えていた。
二人が動いた。
森へ向かっている。
「行くぞ!」
真魚と嵐は、その後を付けた。
続く…