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空の宇珠 海の渦 第五話 その二十五





挿絵(By みてみん)



あれから数日経っていた。

 


真魚は山の中にいた。

 


深い原生林の中を歩いている。

 


道などはない。

 


人など誰も通ったことが無い深い森。



だが、食べ物も水も山にはある。

 


人が生きて行くだけのものは全て揃っている。

 


それだけで良い。

 


生命の波動が輝いている。

 


真魚は感じている。

 


山は、命を育んでいる。

 


真魚にとって、そこは居心地のいい場所であった。

 


その山の中で、真魚はある捜し物をしていた。

 



「なぁ、真魚よ、もうすぐ倭が来るのではないのか?」

 


真魚の足下に子犬の嵐がいた。

 


「その件は、前鬼と後鬼に任せている…」

 


倭の事は気にしていないようであった。

 


どんなに急いでも一ヶ月以上はかかる。

 


まだ、半月も経っていない。

 


田村麻呂は必ず諏訪を通る。

 


真魚はそう考えていた。

 

 


阿弖流為、紫音と分かれたあと、山賊の長である嘩威流に会った。

 


嘩威流は真魚の思ったとおりの男であった。

 


鋭い眼差しは見るべきものを見ている。

 


長と呼ばれるにふさわしい男であった。

 


伝えるべき事は全て伝えた。

 


後はあの男が判断する。

 


だが、真魚は確信している。

 


蝦夷の流れを変えられる男であるということを…


 





真魚は、手にした棒を地面に立てて何かをしている。

 


そして、時折目を瞑る。



この作業を繰り返して、山中を歩いていた。



「一度聞きたかったのだが、お主は一体何を探しておるのだ?」

 


嵐が真魚の足下から声をかける。

 


「色々ある…」

 


「色々と言うことは一つではないという事だな?」

 


真魚の言葉から嵐がそう考えた。

 


「一つではない、だが同じ所にある」

 

真魚はそう言った。

 


「はは~だいたい分かったぞ!」

 


珍しく嵐がひらめいたようだ。

 


「青嵐のおかげでお前も一皮むけたな」 



「兄者のおかげではない!これは俺の考えだ!」

 



「まあどっちでもいい…」

 


真魚はそういうと笑っていた。

 


「それをどうするつもりだ」

 


「一人ではどうする事も出来ぬであろう?」

 


嵐は気になる。



「これは餌だ、これで倭を釣る!」

 

真魚は言い切った。

 


「そういうことか!はは~ん!そういうことか!」



「真魚!お主はやはりすごい男だ!」

 


嵐はその考えに感心した。

 


そうすれば道も開ける。

 


「だが、蝦夷はどうなるのじゃ?」

 


嵐に新たな疑問が浮かぶ。



そこまでは嵐も思いつかない。




挿絵(By みてみん)



真魚は黙っている。



「ふ~~~ん?」

 


嵐にはその答えが浮かばなかった。



「俺に考えがある…」

 


真魚はそう言って笑っていた。



続く…







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