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空の宇珠海の渦 第八話 神の血族 その四





「面白い剣を持っているな…」



真魚の言葉で気がついた。


 

剣が耀き、震動している。



身体が震えているのは、剣のせいでもあった。

 


黒い渦が大きくなるにつれ、その震動も大きくなってくる。

 



挿絵(By みてみん)




「名は何という…」

 


真魚が女に名を聞いた。


 

「私は、昴すばる」




「星の名と同じか…面白い…」



「俺は、佐伯真魚だ」




真魚が、昴に微笑んだ。


 

だが、微笑んだのは口元だけだ。

 


視線は、黒い物から外さない。

 



右手で棒を身体の前に構え、手刀印を組む。 




同時に、それは起こった。

 



目の前の黒い渦が、巨大化した。

 



「嵐!」



真魚が叫び、突風が巻き起こる。

 



目の前に、美しい神の獣が現れた。

 



その霊力に、大気が押されている。

 


その波動が、次元の膜を大きく揺らす。

 



「す、すごい…」



昴の瞳は、閉じることを忘れているようだ。



 

「玄武!」



真魚の棒が耀き、光の盾が現れた。

 


気がつくと、昴の身体は大きな光に包まれていた。



 

「そこから絶対に出るな!」



真魚の言葉で、昴は動けなくなった。

 


「はい!」

 


昴は訳も分からぬまま、返事をした。

 



巨大な黒い渦から伸びた触手。

 


追っ手の二人が、それに絡め取られている。

 



光が奔り、その触手が切れた。


 

だが、二人は動くことさえ出来ない。

 



黒い渦を切り裂く光。


 

その光が瞬く度に、黒い渦が勢いを無くしていく。

 



神の獣が、それを食らっている。




「何が、どうなっているの!」



昴が見ている事実。


 


そして、高鳴る胸の鼓動。

 



昴にとって、それは初めての体験であった。



 

生きるか、死ぬか…


 

そんなものではない。

 



それよりももっと、自らに問いかけるものがあった。

 



魂の叫び…恐怖…

 



あの中に吸い込まれたら、自分ではなくなる。



だが…



『行ってみたい…』



そんな感情が、湧き上がる。

 



「青龍!」



真魚の棒が碧く耀き、光が集まってくる。


 


その光が天に上がると、光の龍が現れた。

 



「征け!」



真魚の叫びで、青い龍が黒い渦に顔を埋めた。 




吐き出す炎が、黒い渦を焼いていく。

 


全ての黑が、灰色に変わった時、龍は首を抜いた。

 



黒い渦は灰になり砕けた。



龍は光の粒に戻り、真魚の棒に吸い込まれた。



 

ぱちん!


 


真魚が指を鳴らすと、昴を覆っていた光が消えた。

 


いつの間にか、剣の震動も止まっていた。

 



「本物か…」



真魚がつぶやいた。

 



「真魚、あいつはどうするのだ…」



動かぬ追っ手に寄り添う男。


 

神の獣がそれを見ていた。

 



「残念だが、二人は助からぬ…」

 


その男に、真魚が声を掛けた。

 



「お前が、あの黒いものを呼んだのか…」



刀を持つ手に力が入る。


 

怒りの波動が、伝わって来る。

 



「その者達が呼び込んだのだ…」




「何だと!」


 

真魚から返ってきた、意外な答え。


 

男に、それを受け入れられず筈がない。



 

「あれは、闇だ…」



「畏れや、恐怖、低きものを食らう…」



真魚が男に向かって言った。



 

「闇…」



男が何かを考えている。

 



「俺は、佐伯真魚だ」


 

「お主、名は何という…」



珍しく、真魚が自ら名乗った。

 



「佐伯…そのような者が、どうして…」



男がつぶやいた。

 


刀を置いて、仲間の身体に触れた。




「倭の使いか…それとも式家か…」



真魚が、何かを探っている。

 



自ら名乗った訳がそこにある。




「俺は、阿瑠あるだ、これ以上は言えぬ…」



男は、真魚から視線を外さずに、その名を答えた。




挿絵(By みてみん)




続く…




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