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空の宇珠海の渦 第七話 揺れる心 その二十九





翌朝、宿坊に真魚の姿はなかった。

 


その代わりと言っては何だが、



前鬼と後鬼が見張りに付いた。

 



明慧が境内を掃除している。

 


木の上から二人がそれを見ていた。





挿絵(By みてみん)




「ここなら、放っておいても大丈夫だと思うのだが…」



前鬼は桃尾山の霊気を浴びながら、そう感じていた。

 



「一度、絡んだ結び目を解くのじゃ…」



「しかも、意図的に絡めた結び目をじゃ…」

 


「何が起こるか分からぬぞ…」



後鬼はそう見ていた。

 



誤った呪の綻びは、格好の狙い目と言える。


 

強い光は、濃い影を産む。

 


力が大きくなればなるほど、危険だと言える。

 


真魚がこの役目を言いつけたのには、訳がある。



後鬼はその意味を把握していた。

 



 



真魚と嵐は一度山を下り、布留のお宮に向かっていた。

 


側を流れる布留川が道を示している。

 


その先に、布留のお宮がある。

 


桃尾山を背にして、真魚達は歩き続けた。

 



「お主が行く必要があるのか?」



嵐が真魚に聞く。

 



「ちょっと見ておきたいものがある…」



真魚がその理由を嵐に言う。

 



「あの女か…」

 


「いや、そうではないな…」  



嵐が言い直した。

 



「ま、そんなところだ…」



真魚が笑みを見せた。



 

「ところで、薺とか言うあの女…」



「何をやらかしたのじゃ…」



後鬼にからかわれ、気になっていた。

 



「布留のお宮の呪とか…言っておったが…」

 


嵐が気になっているのは、その呪のことではない。 



呪がもたらす影響の事だ。

 



「それを…今から確認しに行く…」



真魚がそう答えた。

 



暫く歩くと橋が見えた。

 


布留の高橋。

 


ここを渡れば場の境界を超える。




目の前に奥深い森がある。



「この奥だな…」



嵐がその仕掛けに気付いている。

 



「この程度なら心配あるまい…」



嵐がそう言って歩き始めた。

 



「お主、何かしたであろう…」

 


嵐が立ち止まり振り返った。

 



「用心に越したことはない…」



「姫の結界で、たじろいだではないか…」

 


真魚が笑っている。

 



以前、丹生津姫が仕掛けた結界には入らなかった。

 


その事を真魚は言っているのだ。

 



「あれほどの結界は、他にはないがな…」 



真魚が思い出して笑っていた。




だが、真魚はその結界に、躊躇うことなく入ったのだ。

 




緩やかな坂を登って行くと、社が見えた。

 


その前に、一人の女が立っていた。

 


「そう言うことか…」




嵐が、真魚の行為の意味を汲み取った。

 



「お待ちしておりました…」



その女、薺がそう言った。





挿絵(By みてみん)




続く…






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