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空の宇珠 海の渦 第五話 その二十二





那岐は驚いていた。



御遠から聞いていたが、本当に子犬が喋っていたからだ。

 


「火魏留を助けていただき、ありがとうございました」

 


那岐は嵐に礼を言った。

 


「肉も食うことが出来た、苦しゅうないぞ!」

 


「だが、このことは他の村の者には内緒だぞ!」

 


嵐はご機嫌であった。




挿絵(By みてみん)




「なんか急に態度が大きくなって!」

 


紫音が嵐を見て言っている。

 



「まあ、いいんじゃない?」

 


御遠は、美しい姿の嵐を思い浮かべていた。

 



「ま、今は子犬だけどね!」

 



「子犬で悪かったな!」

 


「だが、俺は神だ!」

 


嵐が威張って言う。

 



「でも、結局、火魏留を救ったのは真魚じゃない!」

 


紫音は嵐を責める。




「俺が引っ張り出さなければ、魂そのものを食われてからになっておったわ!」



嵐の言うことも間違ってはいない。

 


「助かったからもういいの…」

 


御遠はうれしそうだった。

 



知らぬ間に、紫音と御遠は仲良くなっていた。

 


それほど言葉は交わしていない。

 


しかし、火魏留に生命(エネルギー)を入れたときに同調している。 



それだけで、もう何年も友達でいるような感じになっていた。

 


言葉を超えるものが存在している。

 


それが紫音と御遠の今の関係である。




「そういえば嵐、あの光って一体何なの?」

 


紫音が気になっていたことを、嵐に聞いて見た。

 


「そういうことは真魚に聞け!」

 


「いいじゃないのよ、教えてよ!あなたは神でしょ!」

 


嵐は突っぱねようとしたが阻まれた。

 



「簡単に言うと、この世界を作っている物じゃ」

 


「命そのものと言っても良いかの?」

 



「命って私たちの命のこと?」

 


嵐の答えに、紫音が戸惑っていた。

 


「他に何があるというのじゃ」



「火魏留が助かったのはそういうことじゃ…」



嵐が言った。

 



「だから、あんなに儚くて、切なくて…」



「胸を締めつけるような愛しさを感じたんだ…」

 


紫音は思い出していた。



感動で躯が震えていた。

 


涙が自然に溢れ、止まらなかった。

 



いつまでもこうしていたいと思った。

 



時間は存在しない。

 


心地良い空間だけが存在していた。

 



「言っておくが、あれ以上はないぞ!」

 


嵐が突然言った。

 



「あれ以上、どういうこと?」

 


御遠は知りたがっている。

 



「お前達は一度神の懐に抱かれたのだ」

 


「あれ以上の感動はもう無い…」

 


嵐がはっきり言った。

 



「そういうことね…」

 


紫音は何となく分かっていた。

 



「だけど、私にとっては貴重な体験だったわよ!」


 

あの時感じた充実感は心の奥まで刻まれた。

 


「真魚が二人を選んだのだ」

 


「私たちを選んだの?」

 


御遠は不思議そうに聞き返した。

 


「そうだ、そのことは真魚から直接聞けば良い」

 


嵐が二人に向かってそう言った。

 


「今度じっくりしぼってみるわ!」

 


紫音はそう言って笑った。



「お手柔らかにな…」

 


嵐は真魚に同情していた。

 






翌朝、真魚は小川にいた。

 


手で砂をすくって何かをしている。

 


「やはり、そうか…」

 


真魚は何かを掴んだようだ。

 


「何を企んでおる」

 


嵐は真魚を見て挑発する。

 


「まだやれることはあるという事だ」



真魚はそう答えた。

 


「村の者はこの水を飲んでいるのか…」

 


真魚は水の臭いを嗅いでみた。

 


「今はまだ大丈夫だが…」

 

真魚はそう言って顔をしかめる。

 


「何かあるのか、その水に…」

 

嵐は真魚の様子が気になった。

 


「水は命の源だからな…」

 

真魚は川の上流を見ていた。

 

 


「あっ、いた!」

 

紫音が真魚と嵐を探していた。

 


その姿を見つけてかけてくる。

 


「朝から元気だな、紫音」

 

嵐がからかう。

 



「なんか生まれ変わったような気がするの!」

 


「きゃっ、つめたっ!」


 

紫音は川の水で顔を洗っていた。

 


「あんな調子なのか?」

 


真魚は嵐を見ていった。

 


「どうも、昨日からあの調子なのだ」

 


嵐が紫音を見て呆れている。




「ちょっと刺激が強すぎたか…」

 


真魚は少し反省していた。

 



「なかなかできない体験だ、良いのではないのか?」

 

嵐が言った。

 


「青嵐か、今のは…」

 


「俺もどちらか分からなくなってきた」



「だが、俺の中で青嵐は生きている」

 


「それで良いと思えるのだ…」

 

嵐は真魚に感謝していた。

 


「あっ、那魏留が探していたわよ、話があるみたい…」

 


紫音が本来の目的を思い出した。

 


紫音が立ち上がると、真魚の姿は小さくなっていた。

 


「もう…」

 

紫音はその背中につぶやいた。




挿絵(By みてみん)




続く…




空の宇珠海の渦を読んでいただきありがとうございます。



ここで波動宇宙理論について少しだけ補足説明したいと思います。



この小説の舞台となっている精神世界を図にしてみましたので



参考にしてください。



挿絵(By みてみん)



基本的な考え方として…



一番外側は仏です。



仏は理です。



いかなる存在もこの枠から出ることは出来ません。



この枠をこえる事は別の宇宙を創ることを意味します。



物理的にはM理論が完成すれば



これが仏の理と同じ意味を持つと思います。




人は五感情報を脳で整理します。



その情報を元に行動を起こしたり考えたりします。



その情報は心にも同時に伝わり感情が生まれます。



うれしいとか楽しいとか、哀しい,苦しい様々な感情が生まれます。



その際に心から感情のエネルギーが生まれるのです。



高きエネルギーは光へ



低きエネルギーは闇へ



極論から言えばどちらがいいというわけではありません。



しかし、一般的には(宗教敵に見ても)高きを望むのが当たり前のようです。



そのエネルギーは魂の器にため込まれると同時に



器の殻から神の世界へと伝わっていきます。



この殻と神の殻は繋がっています。


(殻と言っても固い殻があるわけではありません。



どちらかというと境界と言った方が良いかも知れません。)



その時のエネルギー量で光側か闇側かに惹かれていきます。




そして大切なものが心です。



私自身は心が身体と魂を繋ぎ止めていると考えています。

 


脳科学者の世界では「心は存在しない」と最近の研究で言われていますが、



意識と心は別であると考えています。



心は二極の情報のエネルギーが閉じ込められた器です。



これらは善と悪、天使と悪魔とか言われています。



決して混ざり合うことはありませんが死ぬ際に消滅します。



余談ですが、ヱヴァンゲリヲンの世界では



この心の殻がATフィールド(絶対不可侵領域)と呼ばれているもののようです。



これが壊れると形をとどめることが出来ないようなので私はそう解釈しています。



この時点で魂と躯が切り離されます。



魂は純粋な情報を持ったエネルギー体(人霊)にもどります。




神と同じ軀になるのです。



情報のルートについてはまた次の機会にお話しします。



図を見ながらいろいろ考えて見てください。



何故、人は悲しむのか…



神が持っていない五感が存在するのかとか…



面白い発見があると思います。




続く…





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