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空の宇珠海の渦 第七話 揺れる心 その十二







後鬼は笈の中から、巻いた紙を取り出した。

 


そして、それを真魚に渡した。

 



「おおよその位置が掴めるであろう…」



「だが、それで何が分かるじゃ?」



後鬼は、真魚の考えを量りかねていた。

 



挿絵(By みてみん)




「これは、手がかりの一つだが…」



「この何処かにあると俺は考えている…」

 



真魚は後鬼にその目的を告げた。

 



どうやら…

 


後鬼が渡したものは、何かを示した地図のようだ。

 



「幾つかは強力な波動を放っておる…」



後鬼はその事実を真魚に伝えた。

 



「おおよその見当はついた…礼を言う…」



真魚は、紙を見ながら笑みを浮かべていた。

 



「どうじゃ…寝そべっている奴より役に立っておるであろう…」



後鬼が嵐を見た。

 



「俺は細かい仕事は好きでは無い…」



嵐は、その一言で話を終わろうとした。

 



「大きさは関係なかろう…」



「小さくても大切な事もある…」



後鬼が更に踏み込んでいく。

 



「ま、神と雖も、できることと出来ない事がある…」



「お主にとっては不向きとは言えるのう…」



後鬼が笑みを浮かべている。

 



その言葉の裏には何かある。

 



「分かれば良いのじゃ…」

 


嵐が目を閉じて答えた。

 



「頭を使う仕事はなぁ…」

 


後鬼が止めを刺しにいった。

 



「使えぬのではない、使わぬだけじゃ…」



嵐がそう言い返した。

 



前鬼が、終わらぬ話に飽きた。



「儂らは、これからどうすれば良いのじゃ…」



真魚に助け船を求めた。



 「一つ頼みがある…」

 


真魚は、前鬼と後鬼にあることを告げた。

 







翌朝、陽が昇る頃に真魚は動き始めていた。

 



「何も…こんな朝から行かぬでもよかろう…」



嵐が文句を言いながら歩いている。

 



「どうせ、することはないだろう…」



「それならば…気になる所を見ておくのもよかろう…」



真魚は、嵐には目もくれず歩いている。

 



桃尾山。

 



現在では国見山と呼ばれている。

 


頂上までは、明慧の寺から歩いてもそう時間はかからない。




だが、道という道は無い。

 



山の民でなければ、一苦労あるだろう。

 


所々に石仏がある。

 


過去に修行場であった事実が、所々に刻まれている。

 



「真魚よ、修行の場としては…」



「俺はわるくないと思うのじゃがのう…」



嵐は、溢れる霊気からそう感じ取っている。



この山が、廃れた理由を聞いているのだ。





「この山自体は変わらない…」



「変わったのは人の心だ…」



真魚は嵐にそう言った。

 



この辺りには、生駒山、葛城山、金剛山、

 


そして、吉野。

 



霊気に溢れた場が沢山ある。

 



当然、そこには道場が拓かれ、それを求める者が集まる。

 


修行の場は選び放題なのだ。

 


だが、それは迷い道が増えたとも言える。

 



「ここで無くともよいということか…」



嵐はそう考えた。

 


だが、それは吉野を知る青嵐の思考…



その断片であるかも知れない。 

 



「目指す星が消えたのだ、迷うのも無理は無い…」


 

「義淵殿や、行基殿の名前があってこその結果だろう…」

 


真魚はその事実を感じ取っていた。

 



「やることは変わらぬのにな…人はおかしなものじゃ…」



嵐がその言葉で全てを片づけた。

 



「そうだな…」



嵐の何気ない言葉。



その真実に呆れ、真魚は笑っていた。





挿絵(By みてみん)




続く…




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