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空の宇珠 海の渦 第五話 その十七





馬は逃げていなくなっていた。

 


真魚達は、歩いて山賊の村まで行くことになった。

 



「紫音、お前には分かっていたのか?」

 


阿弖流為は、蚊帳の外にいたことが気に入らないらしい。

 



「嵐と話はしていたけど、姿を見たのはさっきが初めてよ!」

 


紫音はまだ興奮していた。

 


「それにしてもすごかったわ…」

 


「俺だけ知らなかったと言うことか!」



阿弖流為は自分に呆れていた。




挿絵(By みてみん)




「母礼はまだ知らないわよ!」

 


紫音がとどめを刺す。

 


「あの鈍い男と一緒にするな!」

 


そんな阿弖流為を見て真魚が笑っている。

 


念のため棒は肩に担いでいた。

 


嵐は元の子犬に戻っていた。

 


この身体の方が体力の消耗が少ない。

 


簡単に言えばお腹が空かない。

 


それが理由だ。

 


「真魚殿、あれは一体何なのだ?」

 


那魏留が、得体の知れないものの正体を真魚に尋ねた。

 



「闇と呼んでいる」

 


「闇…ですと…」

 


那魏留にはそう言われても分からない。

 


「低き生命(エネルギー)、簡単に言えば…」



「不安、恐怖、絶望、人が抱く感情だ…」

 


真魚はそう説明した。

 


「人が生む感情…」

 


阿弖流為はわかる様な気がした。

 


「この世には光と闇がある」



「それと同じように感情にも光と闇が存在する」

 


「音に高低があるのと同じだ」

 


「人の感情の波動は魂を抜け、神の世界まで届く」

 


真魚が説明する。



「そういうことは、闇も神なのですか?」


 

御遠が急に声を張り上げた。

 


「そうだ…だが、全てではない」

 


真魚がはっきりそう言った。

 


「神が人を襲うのですか?」

 


御遠は納得が出来ない。

 



「この世が闇に包まれたなら、人は何も見ることさえ出来ない」

 


「それは絶望を意味する」

 


「人はどうなるの…」

 


御遠が不安に包まれる。

 


「火魏留のようになる…」

 


真魚は御遠が抱く不安の理由が見えていた。

 



「火魏留は魂の力を奪われた」

 


「早急にその力を戻してやらねばならない」

 



「そんなこと…出来るの?」

 

御遠の不安がたまっていく。

 


「御遠がやるのだ!そのためにここまで来たのだ!」

 


真魚は御遠にそう言った。



阿弖流為は、真魚の言っていることがよく分からないでいた。

 


「紫音、お前は闇が来る前に、いやな予感と言っていたな?」

 


阿弖流為は紫音の言葉を思い出した。

 


「それは御遠も分かっているはずよ!」


 

紫音が御遠を見た。

 


御遠は紫音を見て頷いた。

 


「そうなのか…」

 


阿弖流為には全く分からなかった。

 


その事実は否定できない。

 


「そう言うことか!真魚!」

 


阿弖流為は、真魚を見て言った。 

 


「だから…紫音を連れてきたのか!」

 


真魚は笑っていた。

 


阿弖流為は考えていた。 

 


自分の知らない世界。

 


自分には感じられないものを、この男は見ている。

 


真魚が『人を救いたい』と言ったことは本当であったのだ。

 


「そういうことか…」

 


「そういうことだったのだな、真魚!」

 


阿弖流為は笑っていた。

 


「お主は面白い男だ、これは本当に面白くなってきたわ!」

 


阿弖流為はわき上がる力を感じていた。

 


真魚は笑っていた。

 


「お主ら、村はまだなのか?」

 


嵐が我慢の限界まで来ていた。

 


「腹が空き過ぎてもう動けんぞ!」

 


弱音を吐いている。

 



挿絵(By みてみん)




「あんなに食べていたのに…」



紫音が呆れていた。

 


「その分動いたではないか!」

 


嵐が真実を言っても真魚以外には分からない。

 


真魚は笑っている。

 


「あと少しだ!」

 


那魏留が言った。

 


ぐ~~~~~~~っ

 


嵐のお腹は心より正直であった。

 


皆が笑っていた。  



続く…




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