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空の宇珠 海の渦 外伝 精霊の叫び その二十七






「菜月!逃げろ!」

 


谺が叫んだ。

 



菜月への想い…




谺の波動が、次元の膜を伝わっていく。

 


菜月が谺を見た。

 


菜月がそれを受け取った。


 

谺のすぐ後ろまで水が迫っていた。

 


「谺!」

 



挿絵(By みてみん)





「早く!こっち!」

 


菜月は谺を気にしながら、母と子の親子と逃げた。

 



水はかろうじて、菜月の足下で止まった。

 



だが、菜月は谺の姿を見失った。

 



「谺!!!」



「谺!谺!どこなの!」

 


菜月は声の限り叫んだ。

 



だが、谺の姿は見当たらなかった。

 



「菜月!」

 


嵐が飛んで来て、菜月を拾った。



 

菜月の波動を、嵐が感じ、受け取った。




真魚がその手で、菜月を抱き上げた。

 



「谺が!谺が流された!」

 


「谺を見つけて!お願い!」

 



菜月の心の叫びは、二人に届いている。

 



「今の菜月になら、分かるはずだぞ…」

 


真魚が菜月に言った。



 

「谺を感じてみろ…」

 



「でも、どうやって…」

 


菜月が戸惑っている。

 



「桜は感じたのだろう?同じ事だ…」


 

嵐が言った。

 



「そうか!」

 


菜月は目を閉じた。

 



波動の翼を広げた。

 



次元の膜に触れる、谺の波動を捜した。




「谺?」

 


「谺…」



「嵐、あっち!」

 



菜月が指を指した。



嵐が飛んだ。

 



「いた!」

 


谺が流されていた。

 



だが、意識は無い。

 


嵐が咥え、真魚が引き上げた。

 


真魚が谺を看る。

 



「大丈夫だ、命に別状は無い」

 



「よかった…」

 


菜月の瞳から光がこぼれた。

 



谺の声が無ければ、菜月も流されていた。




「どこまで…馬鹿なのよ!」

 



気を失っている谺に、しがみついて泣いた。

 



大切なものを失いかけた。




菜月は、そんな自分を責めていた。




「神は、人の生死に関わってはならぬ…」

 


「その意味が、分かるな…」



嵐が菜月に言った。

 



「この責任は、菜月にとって貰わぬとな…」

 


真魚が笑って言った。

 



「うん!」

 


菜月が顔を上げて、涙を拭った。

 



菜月の耀きが、谺を包んでいた。

 



「契約成立だな…」

 


嵐は、その耀きの尊さを感じていた。

 




挿絵(By みてみん)





村人達が呆然とその光景を見ていた。

 


田や畑のほとんどが水に浸かってしまった。

 


泥の川が家を流していった。

 



これだけの惨事にもかかわらず犠牲者が出なかった。

 



「真魚がいなかったら…」

 


桜はその光景を見てつぶやいた。

 



「全て流された…終わりだ…」

 


村人の一人が言った。 

 



「何を言っておる…生かされたのじゃ…」

 


「未来は、お主らを選んだのじゃ…」



たきが真実を語った。

 



「みんな、これを見て!」

 


桜と睦月が何かを持ってきた。

 



幾つかの袋に分けられていた。

 


「こ、これは…」

 


村人の目に、涙が浮かんでいた。

 


「大丈夫、まだ、希望はある!」

 


桜が言った。

 



おおおお~

 


村人達がどよめいた。

 



「まだ、できるのか…俺たち…」

 



皆がそう感じた。

 



「大したお人だ…」

 


「命だけでは無く、希望も与えた…」

 



たきがつぶやいた。

 



桜は未来を見ていた。

 


「命の種よ…」

 


「大切に使わないと…」




菜月と二人で必死に集めた。

 


「そうか!」



はははっ…!



「命の種か…」



ははっ…



桜が、突然笑い出した。



手の平で、命の種が輝いている。




「私達が…間違っていたんだ…」




その耀きが、桜に何かを伝えていた。






挿絵(By みてみん)





続く…








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