表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
285/494

空の宇珠 海の渦 外伝 精霊の叫び その二十三






菜月と桜は、ただならぬ衝動に動かされ、家を出た。

 


「お姉ちゃん何処かに行くの?」

 


家の外では、睦月が嵐にいたずらをして遊んでいた。

 


「止めないと…」

 


菜月が言った。





挿絵(By みてみん)






「何を止めるの?」

 


睦月が菜月に聞いた。

 


それが素直な反応だ。

 



「何って…これよ…」

 


菜月は手を広げた。

 



「睦月にだってわかるでしょう?」

 



「わかるけど…何かまでは…」

 



漂う…重き波動。

 


睦月にもそれは分かる。

 



だが、具体的に何が原因かは分からない。

 



「仕方ない奴らだ…」

 


嵐が目を開けた。

 



「俺がついて行ってやる!」

 


嵐がそう言うと立ち上がった。

 



「嵐…あなた、ひょっとして…」

 


桜が感じた疑問。

 



なぜ、嵐がいるのか…

 


その答えが、ようやく分かった。

 



「え~、嵐まで行っちゃうの~」

 


睦月の不満は、遊び相手がいなくなることだ。

 



「睦月、その時は近いぞ…」

 


嵐が睦月に言った。

 



「え…」

 


睦月が、驚いた様子で嵐を見た。

 



「嘘はつかぬ…たきの言う事を聞け…」


 

嵐のその言葉で、睦月はたきの元に走った。

 



「真魚は今、手を離せぬからな…」

 



面倒な様子で、子犬の嵐が歩き出した。

 



「嵐、目当てがあるの?」

 


菜月が嵐を追い越し、前に回った。

 



「俺を誰だと思っておるのだ…」

 


嵐が座って菜月を見上げた。

 



「頼もしい、神様?」

 



「?は余計じゃ」

 


嵐がそう言って、霊力を解放した。

 


その霊力に大気が押され風が舞い上がる。

 



「きゃぁ!」



菜月が叫んだ。



金と銀の縞模様の美しき獣が現れた。

 



「乗れ、行くぞ!」

 


嵐が二人を誘う。

 



「嵐に任せるわ!」

 


菜月がうれしそうに嵐に飛び乗った。



 

着物が捲れ、足が見えても気にしない。

 


「仕方ない…」

 


桜も菜月に従った。

 



「しっかり掴まっておれ!」

 



嵐がそう言った瞬間には、雲の上であった。

 








付き人は、感情に振り回されて動く男に、戸惑っていた。



「お待ちください!」

 


「その場所までは、半日はかかります」

 


「今からですと、夜は山で過ごす事になります!」

 


付き人が、その事実を役人の男に告げた。

 



「それを早く言え!」

 


男が立ち止まった。

 


「では、明日、日の出と共に行くぞ!」

 



「どうしても…行かれるのですか…」



付き人が心配している。



慣れない山を歩かねばならない。




「この目で見ぬまでは…納得出来ぬ…」



男の決意は固いようであった。









「やれやれ…」

 


木の上から覗く影。

 


前鬼であった。

 



「難儀な男じゃのう…」

 


前鬼は呆れていた。




「典型的な破滅型じゃな…」

 


感情に振り回され、行動を起こす。




問題は、その事に気づいていないことだ。

 


 

怒りや畏れが生み出す感情。

 



全てに、この男の自尊心が絡んでいる。

 



「人の上に立つ者がこれでは、下の者は大変じゃろうな…」

 


前鬼は付き人に同情していた。




「一度、媼さんの所に戻るか…」

 



前鬼は、木の枝を飛んで森に消えた。




挿絵(By みてみん)





続く…





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ