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空の宇珠 海の渦 外伝 精霊の叫び その十三






桜と菜月は村の道を歩いていた。



「昨日、真魚に言われたの…村の者を説得する時間はないって…」

 


菜月はその言葉を思い出していた。

 



「だけど、村の人の協力が無ければ、どう考えても無理よ…」

 



「でも、誰も信じないわよ…きっと…」

 




挿絵(By みてみん)





食料一つをとっても、村全体となると相当の量が必要になる。

 



「確かにそうだけど…」

 


桜も概ね同じ考えではあった。

 



「でも、考えは変わるのよ…」

 


「何かあれば…」

 


「誰かさんと同じようにね…」

 



桜が菜月を見て笑った。



「そうだ…」

 


「そうだよ桜!」

 


「桜ってやっぱり、頭がいい…」

 


あの体験で菜月は変われた。

 


体験が菜月の全てを変えた。

 


それは、菜月自身の中にある真実だ。

 



「でも…何かって…」

 


菜月が考えた。

 



起きるのか…



起こすのか…




「真魚なら…やるかも…」

 



菜月の中に、耀きが生まれた。

 


かすかな希望。

 



「真魚ならできるかもね…」

 


菜月はそう感じていた。

 



その時であった。

 



空から一筋の光が落ちてきた。

 


菜月は、一瞬雷かと思った。

 



だが、それは巨大な山犬に乗った真魚であった。

 



「二人とも、背中に乗れ!」

 


真魚が言った。



「真魚!」

 


「それは…嵐…なの…」

 


菜月が気づいた。

 



「あの犬か…」

 


桜が言った。

 



「犬ではない、俺は神だ!」

 


嵐の姿。




「大丈夫なの…」




菜月は神の姿に畏れを抱いている。



それは、桜も同じであった。

 



神々しい光を放つ、気高く美しい獣。

 

 

それが、嵐の本来の姿だ。




「神様って…本当だったのね…」

 


「急げ!」

 


嵐の声で、二人は背中に飛び乗った。

 


一番前が桜、二番目が菜月、最後が真魚であった。

 



「行くぞ!しっかりつかまっていろ!」

 


嵐が飛んだ。

 



「きゃぁ!」

 


菜月が叫んだ。

 



あっという間に山を飛び越えた。



 

「何て速いの…」

 


菜月と桜が感動していた。

 



「どこに行くの?」

 


菜月が聞いた。

 



「ここだ…」

 


真魚が言った。

 



崩れた山の向こうに見えるもの。

 



「何…あれ…光ってる?」

 


菜月はよく分からなかった。

 



最初はそれに気づきもしなかった。

 


元々そこにないものだからだ。

 



「ひょっとして…湖…」

 


桜が言った。




「うそ、こんな所には無いはず…」

 


菜月はその事実を疑った。

 



「出来たのだ…」

 


真魚が言った。

 


「出来た?」

 


「森が消えて雪溶けの水が土を変えた…」

 


「そして、山自体が柔らかくなった」

 


「最後に山が崩れ谷を埋めた、そこに谷の水が溜まっている…」

 


「まさか…これが、覚の警告なの!」

 


桜が気づいた。

 


「そうだ…」

 


真魚はその事実を二人に告げた。



「これからどんどん温かくなる…山の雪が溶けていく…」

 


「その水が谷に流れていく…」

 



「溢れるの…あの水が…」

 


菜月がその未来を見た。




「土砂の堤防は一気に決壊する…」



真魚のその言葉で、菜月が振り返った。

 



決壊した水は確実に村を襲う。

 



「ああっ!」

 



菜月が両手で顔を覆った。

 


見てはいけない未来を見たからだ。

 



「どうしたらいいの!真魚、教えて!」

 


菜月が真魚に触れた。

 


「ここまで来たら止める事はできぬ…」


 

「だが、まだ起きてはいない…」

 


真魚はそう言って、菜月の手を握り返した。

 


「そんな…村が…」

 


菜月が泣いていた。

 


村がなくなる。

 


その未来に絶望していた。

 



「起きていない未来は変えられる…」



「命の耀きを絶やしてはならぬ…」

 


真魚がそう言った。

 


「命の耀き…」

 


菜月がその言葉に惹かれた。

 



「村を救うと言うことは…」



「そういうことではないのか…」



 

真魚が菜月に言った。



「命の耀き…」



「そうだ…」



「まだ、出来る事がある!」

 


「まだ、村は無くなっていない!」

 


「みんなは生きている!」

 


菜月が顔を上げた。

 



「命は輝かねばならぬ…」

 


「今の菜月なら出来るはずだ…」



真魚が言った。




「村はやり直せる…生きてさえいれば…」

 


「そうよ、そうよね…」

 


「今、出来る事をやらないと!」

 


菜月が涙を拭いていた。

 



「決まったか…」

 


嵐が菜月の決意を聞いた。




「うん!」



その声を確認して、嵐は村に向かって飛んだ。






挿絵(By みてみん)





続く…





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