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空の宇珠 海の渦 外伝 精霊の叫び その十






たきの話を聞くだけのつもりが、ずいぶんと長居をしてしまった。

 


家を出た頃には日が傾きかけていた。


 


丁度、そこに仕事を終えた谺が帰って来た。

 


「谺、お帰り!」

 



「どうしたんだ、みんな揃って…」

 



挿絵(By みてみん)





菜月だけで無く睦月も一緒にいる。



その側に真魚がいる。



谺は、それが気になっていた。

 

 


「あっ、谺は初めてだったわよね…」

 


「真魚…あれ、何だったっけ…」

 


菜月が気を遣って真魚を紹介しようとした。

 



真魚という名前以外は、曖昧であった。

 



「佐伯真魚という…」

 



真魚が自ら名乗った。

 


「佐伯…」



「どうして…そのような方が…」

 


貴族である真魚が、この村に来ること自体が謎である。

 



「捜し物をしている…たまたま立ち寄っただけだ…」

 


真魚はそう答えた。

 



「捜し物…」



谺はその答えを信用していない。

 



「今、たきばあちゃんに会って来たの…」

 


「ご馳走になっちゃった…」



菜月は頭を掻いて谺に詫びた。

 



「婆ちゃんが…この人を…」

 


谺は驚いた。

 


たきは滅多なことでは人を信用しない。

 


そのたきが、家に人を入れた。

 


しかも、手厚くもてなした。

 


そんなことなど、今まで一度もなかった。



「桜も一緒か?」

 


「ええ、桜も一緒よ!」



菜月が笑って答えた。



「桜もか…」



谺はつぶやいた。




その時…

 


うおぉっお~



獣の叫び声が聞こえた。

 


「わかる…わかるわ!」

 


「私にも聞こえる!」



菜月が言った。


 

菜月が目を閉じて、波動を感じ、読み取っていた。

 



「お主も分かるのではないのか?」

 


真魚は谺に言った。

 



「なぜ…それを…」

 


谺は真魚を見た。

 



「あの時、聞いていたではないか…」

 



「あの時…?」

 


谺が初めて真魚を見かけた時だ。


 

その様子を真魚は見逃さなかった。



「そうか…」

 


谺は気がついた。

 


真魚はあの時、たきに会っている。

 


それは、たきが招き入れたと言うことなのだ。

 



「覚の声だな…」

 


真魚はその声の主を言った。

 


「お主の手も借りねばならぬ…」

 


「村を救うために…」

 


真魚は谺の目を見ていった。

 



「覚が警告している…」

 


「だが、何をすればいいのか…」

 


谺が真魚に言った。

 



「それを、今から探しに行く…」

 



「今から?…あてはあるのか?」

 



「使いの者が覚に会っているはずだ…」

 



「覚に…そんな事ができるのか…」

 


谺は真魚の言葉に驚いていた。

 



「覚は警告を発しているのだ…」

 


「全て知っている筈だ…」

 


真魚はその事実を告げた。




今まで、誰も気づいてはいなかった。




「そうか!その手が!」

 


菜月が叫んだ。

 


「何だか迷っていたけど、その手があったんだ!」

 


菜月が喜んでいた。

 



「菜月、簡単に言うが、覚はどこにいるか分からない…」

 


「それに、話が出来るかさえ分からぬ…」



谺が言うことは間違ってはいない。




たきならば出来るかもしれない。



だが、たきの身体ではその場所まではたどり着けない。



「覚は味方なのよね!真魚!」

 


「そうなるな…」

 


真魚が菜月の大胆さに笑っていた。

 



「だったら、きっと助けてくれるわよ!」

 


菜月の言うことも間違ってはいない。

 



「菜月にひとつ頼みたいことがある…」

 


真魚が菜月に言った。




「私、何でもするよ!」



「この村を救えるのなら…」



 

菜月の波動が広がっていく。

 


何かしたい。




心で生み出した波動が、次元の膜を伝わっていく。

 



「菜月…お前…」

 


谺が菜月の変化に驚いていた。

 


「菜月達はできる限りの食料を集めてほしい…」

 


「それと…もうひとつ…」



真魚は、菜月の耳元でそのものを伝えた。




「わかった!やってみる!」




菜月はうずうずしていた。

 


運命。



生きている意味。

 



それが何なのか菜月には分からなかった。




だが、動き出した。




それは間違いなかった。




その理由の分からない衝動を、押さえられなかった。

 



菜月の魂が、何かを求め、動き始めようとしていた。 




挿絵(By みてみん)




続く…


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