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空の宇珠 海の渦 外伝 沈黙の微笑 その二十






真魚は夕刻から眠り続けていた。

 


陽炎が一晩、皆で過ごす事を提案した。



その理由の一つでもあった。

 



闇との戦いで消耗した霊力。

 


その影響は身体にも及んでいる。

 


後鬼の理水を飲めば楽になるだろう。

 


だが、真魚はそれをしなかった。

 


後鬼の生命の結晶。



その事実を知る、真魚の想いでもあった。

 





挿絵(By みてみん)





「無理をするなと言っても、無駄じゃがのう…」

 


陽炎の家が見えている。

 


「身体には限りがある…」

 


木の上で後鬼が真魚の事を心配していた。

 



「理水を飲まないのは、大丈夫ということじゃ…」



その横に前鬼が座って星を見ていた。

 



「うちとしては…出来れば飲んで貰いたい…」

 


後鬼の真魚に対する想い。

 


真魚はそのことも分かっている。

 



「それに…」

 


「うちらがしている仕事以外にも、何か企んでおる…」



「この国の隅々まで…」

 


後鬼はその事実に呆れていた。

 



「さすがの儂も真魚殿だけは分からん…」




「いわば…病じゃな…」



前鬼が匙を投げていた。

 



「対処療法しか手が無いからな…この病には…」

 


後鬼がそう言って微笑んだ。

 


「儂らは手を貸すだけじゃ…」


 

前鬼が微笑んだ。

 



「今日、見た雫の笑顔…」

 


「あれが答えなのかも知れぬ…」



後鬼はそれを思い浮かべていた。

 



「命の耀きか…」



前鬼は星空を見た。

 


「まだ、先は長いな…」



そして、そうつぶやいた。





 


翌朝になっても真魚は目を覚まさなかった。

 


嵐は暇をもてあましていた。

 


朝の太陽の光を浴びて、庭で寝転んでいた。

 




「前鬼さんと後鬼さんが、いないのだけど…」



雫が嵐の頭を撫でた。

 


「次の仕事に向かったのじゃろう…」



嵐が片目を開けて返事をした。

 



「そうなの…忙しいんだ…」



雫が残念そうに答えた。

 



「何か奴らに用なのか?」




「もっとお話、聞きたかったなぁと思って…」




雫の、動き始めた心は止まらない。

 


何かを知りたくてうずうずしている。




「そんなことか…」



嵐がつぶやいた。

 



「そんな事って、嵐には分かるの?」




「俺は神だぞ…」

 


雫の言葉が嵐の自尊心に火をつけた。

 



「奴らと比べられるのもな…」



嵐がそう言って立ち上がった。

 



「まとめて面倒を見てやる…」



「陽炎と木葉を連れてこい!」



嵐の波動が雫に伝わる。

 



「分かった…」



雫は陽炎と木葉を探しに行った。

 




しばらくすると雫が二人を連れて来た。

 


「何をする気なの?」



雫が不思議に思っている。

 



「見せてやる…」




嵐がそう言って霊力を開放した。

 


その霊力で大気が押され風が巻き起こる。

 


金と銀の光を放つ。



嵐が本来の姿になった。

 



「すごいものだな…」

 


陽炎がその力に驚いていた。

 



「乗れ!」

 


嵐がそう言って背を下げた。



前から雫、木葉、陽炎の順に背中に乗った。

 



「しっかり捕まっていろ!」

 


嵐がそう言って飛んだ。

 



「うわっ!」

 

その速度に、雫が悲鳴を上げた。

 


一瞬で雲を抜けた。

 


大地は遙か彼方にある。

 


木葉は雫にしがみついたまま、声も出ない。 




「すごい…」

 


陽炎は感動の渦に包まれていた。



嵐が止まった。

 


「目を開けてみろ…」


 

「ここは…」



雫が聞いた。

 


「都だ…」



雲の隙間から見える、 整然とした町並み。

 


見たことも無い建物。

 


「本当に都か…」



陽炎が言った。

 


「お主らの足下に、お上がいるのだぞ…」



庶民にとって恐ろしい言葉を、嵐は平然と言ってのけた。




「俺は神だから関係ないがな…」

 


嵐はそう言って笑った。



「本当に都か?」



「聞いていた華々しさなど、無いではないか…」



陽炎は信じられなかった。



「ここに人が…住んでいるの…」



雫はその事実に戸惑っていた。





挿絵(By みてみん)





続く…







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