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空の宇珠 海の渦 外伝 沈黙の微笑 その十一






塊の屋敷では黒いものが渦巻いていた。

 


「あの男…儂を虚仮にしおって…」

 


塊の自尊心は真魚に一度踏みつけられた。

 


塊はそう思っていた。

 



挿絵(By みてみん)





真魚にそのつもりはない。

 


しかも、きっかけは塊本人だ。

 


だが、そんな事は関係ない。

 



真魚の波動に畏れ、たじろいだ。

 


その事実が許せないだけだ。




それは、時間が経つにつれ、どんどん大きくなって行く。

 



「一度、懲らしめてやらねばのう…(ひわ)



側にいる婦人を見た。

 



「もう少し、頂いたら…」



鶸という婦人がそう言った。

 



夫の自尊心よりも金が大切な様だ。




「あの男、まだ持っておる…」

 


鶸ははそう見積もった。




「陽炎は金のなる木…」

 


「あの娘のものは全て奪ってやるわ…」

 


「全て…」

 


鶸はそう言って笑っていた。




重い波動が渦巻いている。

 


うねりながら大きくなっていく。

 


お互いの波動で、さらに加速していく。

 



酔ったように心地良い。

 



黒い感情の渦。




ひとときの快楽与え、そのものは大きくなる。

 



そして、全てを食らう。



破壊と言ってもいい。



同じ事だ。



黒い扉が開こうとしていた。

 


塊と鶸はそのことにまだ気づいていなかった。








時間が止まっていた。

 


そう感じた。 

 



陽炎は、雫を抱きしめたまま、過ぎた時間を噛みしめていた。

 



過ごして来た悲しみの時間。



それは、消え去った。

 



陽炎はその呪縛から解かれた。

 



失った時間は戻らない。

 


それよりも、今この時が愛おしかった。

 



「時間など、無いのかも知れぬな…」

 


陽炎がふとつぶやいた。




「私があると思っていただけかも知れぬ…」



「全ての時が、喜びに変わった…」




陽炎が雫の髪を撫でた。


 

光の粒が陽炎と雫に近づいた。

 


そして、その手に触れた。




「ああ…」

 


陽炎は生命そのものに触れた。

 


かけがえのないものを抱きしめ、その本質に触れた。

 


雫もそれを感じていた。

 



「これは…なんだ…」

 


遙か彼方まで広がる生命の渦。

 


その真ん中で輝く大いなる光。

 


「これが…本当の…」

 


生命が織りなす金色の布。

 


それを、大いなる光が抱きしめていた。

 


いつの間にか陽炎の身体も消えていた。

 


生命の渦となった陽炎が雫と触れ合っている。

 


雫もまたその身体は無い。

 


「これが…本来の姿…」

 


時間も、身体もない。

 


迷うことも無い。

 


雫は陽炎に触れて全てを知った。

 


陽炎は雫の全てを抱きしめた。


 




突然、光の粒が消え始めた。

 


光の扉をくぐり世界を移動する。

 


「消えていく…」

 


木葉は切なさを感じていた。

 


「邪魔が入ったか…」

 


真魚がつぶやいた。

 


それは直ぐに現実となった。

 




挿絵(By みてみん)





続く…





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