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空の宇珠 海の渦 外伝 迷いの村 その二十五






「稜…本当に…稜なのか…」



埜枝が驚いている。

 


稜の姿に驚いているのではない。

 


その内なる波動に驚いているのだ。

 




挿絵(By みてみん)





「ばあちゃん、来たよ」



稜の真っ直ぐな目が埜枝を捉えている。

 


「そうか…」



「お前が…関わっていたのか…」


 

よくよく考えて見れば、何も不思議ではない。

 


稜が繋いだと言うことだ。

 



「仕方が無い…奴だ…」



埜枝のその言葉の中に溢れる想い。

 


たくましくなった稜に感動している。

 


そして、関わった全ての者に感謝していた。

 



「そちらのお方はどなたですかな?」



埜枝は真魚を見た。

 



溢れる波動。

 



埜枝はそれを感じていた。

 



「真魚だよ、俺たちを助けてくれた」



稜が言った。

 



「佐伯真魚殿じゃ…」



後鬼が埜枝の側で言った。



 

「そして、あの山犬が嵐、あそこの爺が前鬼だ…」



「よいしょ!」




紹介が終わると同時に、前鬼が空から舞い降りてきた。

 


「間に合ったか?」



前鬼が自慢げに腰に手を当てた。

 



「出来すぎた登場じゃな…」

 


前鬼は一生、後鬼に隠し事は出来ないであろう。

 



「嵐、悪いが、うろついている村人を眠らせてくれ…」



「ほどほどにな…」



真魚が笑みを浮かべている。

 



「では、少し頂いておくか…」



嵐がそう言うと、姿が消えた。

 



そして、直ぐに戻ってきた。

 



ぺろり

 


嵐が唇を舌で舐めた。

 



「なんと…」



埜枝が驚いている。

 



「言っておくが、俺は神だ!」



嵐が驚いている埜枝に言った。


 



ようやく埜枝も気がついた。


 



生け贄の消えた訳。

 



埜枝の口元に笑みが浮かんでいる。

 



そこに、孫の稜も関わっていたことが、おかしくてたまらない。

 




「これ以上の味方はおらぬな…稜?」



埜枝が稜を見て言った。

 



「社を借りたい…」



突然、真魚が埜枝に告げた。

 



「奴が戻ってくる、その前にやっておきたい事がある…」

 



「好きに使え、もう何も拒みはせぬ…」

 


埜枝は真魚達を受け入れた。

 



埜枝が感じている波動。

 



そこに、埜枝が口を挟む余地はない。

 


「光は正しき心を誘う…」

 


埜枝は稜を見てそう感じた。

 


稜が光を連れてきた。

 


埜枝はそう思った。






 



社の祭壇の前に真魚が座った。



呪を唱え、手刀印で空を切った。

 


「皆ここに座ってくれ」

 


真魚の指示どおり皆が座った。

 


祭壇の前に埜枝。


 

その後ろに稜。

 


その後ろが真魚。

 


最後は二人並んで左が奏。

 


右が響。

 


真魚を中心に三人で正三角形を造る。



その頂点である稜の前に、埜枝がいる形となる。

 


前鬼と後鬼は扉の前に、左が後鬼、右が前鬼。

 


嵐は扉の前で皆を守る役目だ。

 



「皆、俺の方を向いてくれ…」



真魚がそう言って目を閉じた。

 


真魚が手刀印で空に何かを描いている。

 


突然…

 


真魚の身体から強烈な波動が、広がった。

 


皆の身体を抜けて宇宙に届いてく。

 



「こ、これは…」

 


埜枝が驚いていた。

 


そして、次の瞬間真魚の身体が輝いた。

 



七つの輪が回り始めた。

 


そして同時に耀き出すもの。

 


三つの心が共鳴していた。 

 


美しき和音。

 


音にすればそうかも知れない。

 


その波動が広がり大きくなっていく。

 



「な、なんという…」



埜枝はその意味を感じている。

 



そして、自分が犯した過ちと向き合っている。


 


真魚の光の輪が速度を増した。

 


もう、身体は光で見えない。

 


その光が広がり全てを包んでいく。

 



「おお…なんと…」



埜枝の目の前に光の粒が舞い降りてきた。

 


「稜達が…これを…」



真魚が導き、三人で開いた扉。

 


埜枝はその事に気づいていた。

 


開いた三つの扉が一つの意味を持つ。

 


その尊さに埜枝は涙を流していた。

 



響の命を埜枝は奪おうとした。

 


その過ちを埜枝は悔いた。

 


そして、埜枝は光に触れた。

 



その慈悲の心に埜枝は泣いた。

 



「許されているのか…こんなわしでも…」



埜枝は光を抱きしめたまま動かなかった。

 


動かなかったのではない。

 


動けなかったのだ。

 


「来たぞ!」



「ようやくお出ましじゃな…」



本来の姿の嵐と後鬼がその者を迎えた。

 



真魚が立ち上がりその者に向かった。

 



その手には例の棒が握られている。

 



真魚が手刀印を組んだ。

 


棒が耀き始めた。

 


虹色に輝きだした。




振動している。




その振動が大気を揺らす。


 


そして、その者を真上から切り裂いた。

 



何も変わらなかった。

 



見た目には何も…





だが、次の瞬間、その者が揺らぎ始めた。






挿絵(By みてみん)






続く…







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