空の宇珠 海の渦 外伝 迷いの村 その二十四
真魚達は空の上から捜していた。
満月と雖も辺りは暗い。
「これだと見えない…」
奏に焦りがある。
そのものの姿を、目で捜そうとしている。
「見ようとするな、感じてみろ…」
真魚が奏に言った。
三人は目を閉じた。
そして、そのものの波動を捜した。
「真実が見えるとは限らない…」
「ゆったりとした、重い波動が存在するはずだ」
重い波動。
真魚はそう表現した。
高き波動は細かく早い。
低き波動は大きく遅い。
「これ…なの…」
響が見つけたようだ。
「ほんとだ…」
奏にもそれが伝わる。
「俺にも…分かる…」
最後に稜が見つけた。
「大したものだな…」
嵐が感心していた。
「真魚と嵐は分かっていたんでしょ!」
奏が目を開けて抗議した。
「試したんでしょ…」
響の手が嵐を叩く。
「分かればいいではないか!」
嵐が速度を上げた。
「いた!あそこよ!」
奏と響が同時に叫んだ。
「面白いな…お主ら…」
嵐が笑っている。
思った通り神社に向かっている。
だが、奏と響の声が聞こえたのか、その場で止まった。
「気づいたか…」
真魚が笑みを浮かべた。
「嵐、このままゆっくり神社まで飛んでくれ…」
「奴をおびき出して、どうする気だ…」
嵐が真魚の指示を気にしている。
「もう一人、真実を見なければならない者がいる…」
「あの祈祷師か…」
「そうだ…」
「なるほど…」
「お主…世話好きにも程があるな…」
嵐が呆れながら笑っていた。
「わしはこの辺りで様子見といくか…」
前鬼は神社の木の上に座っていた。
「真魚殿はどうやって折り合いをつけるのか…」
前鬼はその事を考えていた。
闇の中に閉ざされた想い。
三人にとっても、辛い記憶となるだろう。
それでも、三人はこの道を選んだ。
「媼さんの話もそろそろ終わったころじゃろ…」
「後は、奴が来るのを待つだけか…」
前鬼が満月を見ている。
「哀しい月夜になるかも知れぬ…」
その月を見てつぶやいた。
「おっ、ご到着か!」
その月の側に、一筋の光が輝いた。
その光が真っ直ぐこちらに向かって来る。
前鬼は直ぐに木の上から飛び降りた。
真魚達が神社の境内に降りた。
社の前では後鬼と埜枝が待っていた。
続く…