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空の宇珠 海の渦 外伝 迷いの村 その十三






前鬼が空から降ってきた。


 

「皆、お揃いか…」

 


「面白いものを連れてきた…」



その者に前鬼が視線を送る。

 



「稜!」



奏と響は同時に声を上げた。

 


「行くよ!」



響が奏の手を掴み、走った。

 



「ちょっと、響!」



奏は嫌がったが、響はお構いなしだ。






挿絵(By みてみん)





響に隠すことなど出来ない。

 


奏もそれは分かっている。

 



はぁはぁはぁ

 


息が切れている。

 


稜が膝に手を置き休んでいた。




奏と響を見て笑った。

 


だが、その笑顔はどこか切なげに感じた。

 



「なによ、男のくせに情けない!」



「ちょっと走ったぐらいで…」



奏がそこまで言いかけた時、稜が思いがけない行動にでた。




稜が奏と響を抱きしめた。

 



「すまない、俺が…情けない…」



そこまで言いかけて、稜が言葉に詰まった。

 



泣いていた。

 



自責の念と二人への想い。

 



その感情が稜の心を苦しめていた。

 



奏は稜の心を初めて知った。

 


三人で抱き合っている。

 



心が手に取るように分かる。

 



響とは良くあることだ。

 



『特別な力…』



奏もその意味をそう感じていた。




「稜…」



稜の想いに触れて、奏は知った。




「あの時から…ずっと…」


 

稜の苦しみを奏と響は感じていた。

 



「良かった…助かって…」



稜の二人に対する想い。

 


奏と響の心が稜を包んでいく。




そして、稜の心の奥に輝く光が現れた。

 





「お主、奏と響に何か仕込みおったな…」




嵐が真魚に言った。




「奏と響が勝手にそうなったのだ…」



真魚はさらりと受け流した。




「連れていったのはお前だぞ、嵐…」





「おれはついでに見せたかっただけだ…」




真魚の言葉を、嵐がはぐらかす。




あれからそれほど時間は過ぎていない。




その光は奏と響に宿り、稜を導いていく。




「これも…ありだな…」




「想いが開く扉か…」




前鬼の言葉に後鬼が味をつける。



 


その扉を開く鍵は、奏と響だ。

 



「稜!」



 

二人が稜の変化に気がついた。

 


稜の身体が震えている。

 


振動している。

 



稜の生命(エネルギー)の光が広がっていく。

 



開かれる扉。

 



溢れる光。

 



その中から覗く慈悲の耀き。

 


そして…



溢れる光に三人が包まれた。

 



「これは…」



舞い降りる光の粒。

 


「あの時と…同じ…」



響は感動していた。

 



「これが…稜の力…」



奏は初めて見るその力に圧倒された。

 



「俺は…」



稜が戸惑っている。

 


ふふっふっ



響が笑った。

 


はははは

 


稜が笑った。

 


「ひょっとして…稜も初めてだったの…」



奏がそう言って笑った。

 



「真魚殿なしでこれか…」



後鬼が呆れていた。

 


「面白い…」



真魚が笑っている。

 


「儂もこれほどとは思ってなかったぞ…」



前鬼の予想を遙かに超えた結果だ。

 



「お主ら、分かっておらんのう…」



「稜の力を引き出したのは、奏と響だ!」



子犬の嵐が自慢げに話す。

 


「お主の口から、その言葉が出ただけでも進歩じゃな!」



後鬼が嵐を嘲笑した。



「うるさいわ!」

 


この勝負、嵐に勝算はない。

 



三つの心が躍っている。

 


お互いを共有しながら踊っている。

 



奏は稜の本当の心を知った。

 



響は稜と奏の想いを感じている。

 



そして…

 



稜の決意が二人を包み込んでいた。

 



三人の想いが共有しながら広がっている。

 


その波動は次元の境界を越えていく。

 


そして、宇宙に伝わっていく。

 




「これで…」

 


後鬼が言った。

 


「動かざるを得ないか…」

 


前鬼が言った。

 


「強き光は闇を誘う…」



真魚が三人を見て言った。

 


「稜にとっては…」



「辛いことになるかもしれぬな…」



前鬼と後鬼がその心を察していた。





挿絵(By みてみん)






続く…








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