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空の宇珠 海の渦 外伝 迷いの村 その九





「あれはまだ私達が六つぐらいの時よ…」



「神社の裏山で誰か殺された…」



「それを神の祟りだと言う人がいた…」

 



「それが、稜のおばあさんなの…」




「稜のおばあさんは昔、大水から村を救った人なの…」




「それで、予言者だと言われている…」





挿絵(By みてみん)





「あの御輿の前にいた奴だな…」



「響の件はあいつの指示か?」



嵐が奏の話に割って入った。

 



「そうよ…」



奏は頷いて話を続けた。

 



「それからよ、生け贄が始まったのは…」



神の祟りを鎮めるためにその儀式は始まった。

 



「そして、あの事件が起きた…」




「友達だった菫がその生け贄に選ばれたの…」



「だけど、両親は反対したわ…」

 


「私達は祟りなど信じないって…」



「そして、家族で村を出て行こうとした…」



「その矢先…」



「菫の家族が行方不明になった…」



「それを私と稜が見つけたの…」

 


「神社の裏山で…それもすぐ近くよ…」

 


「最初は人か何かも分からなかった…」


 


「動物の死体か何かと思ったの…」



「でも、私達は見た…」



「血にまみれた菫の着物…」

 


「菫の着物のの模様…」



「それは変わり果てた菫の家族の姿だったのよ…」


 



奏はそこで一度息を呑んだ。




「食べられていたの…何かに…」

 


奏が語った恐ろしい事実。

 


得体の知れないものに食べられた事実。



神を信じない者の末路。



村人達がその恐怖に縛られるのも無理はなかった。

 



「この辺りにそんな獣はいない…」

 


「熊ぐらいしか…」



奏の言葉はそれではないことを示している。




「なるほどな…奏の母が畏れているのもそれか…」



真魚は奏の話で見当はついたようだった。

 



「熊ぐらいなら俺が食ってやるがな…」

 


嵐がそう言って舌なめずりをした。

 



「だが、熊ではあるまい…」



真魚は既にそのものを見ている。

 



「熊なら父が退治しているはず…」

 


「それが、父が消えた理由か…」

 


響の言った事から真魚が答えを出した。

 



「奏と響の父は猟師だったのか…」



「消えた事と無関係ではない…」

 


嵐がそう考えた。

 



「狩られてはいけない何かがある…」



真魚がそう言った。




「初めから、神の祟りなんて無いのよ」

 


響がそう言った。

 



「偽物の神に振り回されておるのか…」



嵐が憂いでいる。

 



「この件には人の命がかかっている…」

 


「ただの人殺しでもない…」



もう何人も死んでいる。

 


しかも、このままだとそれが続く。

 


真魚の言葉からその考えが覗いている。




「どれほどのものか…」



そう言いながらも、真魚の口元には笑みが浮かんでいた。

 



「この男、何かしでかすつもりだぞ…」



嵐が奏と響にそう告げた。

 



「何かって!」



二人が同時に言葉を返した。

 



「真魚にはもう分かっているの?」



奏が真魚に聞いた。

 



「神ではないことは確かだ」



真魚はそれだけ答えた。



神ではない何か…

 


奏と響には想像がつかない。

 



「面白いことが起きる…それは保証する」



嵐がそう言って笑った。

  




挿絵(By みてみん)





続く…








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