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空の宇珠 海の渦 外伝 迷いの村 その二






少女が斧を見つけ手に持った。

 


「邪魔をするとあんたらも殺すよ!」



少女は痛みを抱えて走り出そうとした。





挿絵(By みてみん)




『あんたらも殺す…』




その言葉の中に殺意が存在している。




膝から血が落ちている。

 


足下に伝う血。

 



だが、それは少女の心そのものであった。

 


心が血を流している。

 


その怒りは、深い悲しみの裏側であった。

 



「仕方ない奴だ…」



嵐がそう言って霊力を開放した。

 



少女の身体が一瞬浮き上がる。

 



本来の姿の嵐が、少女の前に回り込んだ。

 



「俺を殺してから行くか?」

 



嵐の姿に腰を抜かした。




少女は座り込んだまま立てなくなった。

 



「ほ、本当に神様なの…」



少女はそう言って泣き出した。




感情が乱れている。

 



地面に頭を擦りつけ、喘ぐようにして泣いた。

 



呻いている。

 


その心の苦しみと悲しみをはき出している。

 




真魚と嵐はしばらく少女を眺めていた。

 


感情の揺らぎが落ち着くまで待っていた。





「一体、何があったのだ…」



しばらくして、真魚が少女の頭を撫でた。

 


真魚の波動が少女を包んでいく。

 



「えっ!」



少女は驚いて顔を上げた。

 


何かが心をすり抜けた。



そんな気がした。




「話を聞こう」



真魚がそう言って笑った。



嵐はすでに子犬の姿に戻っていた。








山の灯り。

 



そこには社があった。

 


それほど大きい規模ではないが三つの社が建っていた。

 



その社までは石段で繋がっている。

 



数百段はあるだろう。

 



その階段を上った所にそれはあった。

 



「おかしな波動に引き寄せられて来てみれば…」



前鬼であった。

 


一番高い木の上から見下ろしていた。

 


山伏の様な格好をして、背中に笈を担いでいる。

 



「これは…どういうことじゃろ…」



後鬼であった。

 


後鬼は赤い袴をはいている。



 

村人のほとんどが集まっている様だ。

 


皆、銘々に灯りや松明を持っている。

 


「これから何処かに向かうのか…」



前鬼がそう考えていた。

 


この場にこれほどの灯りは必要ない。



しかも、今日は満月だ。

 



「さて、何だか様子がおかしいのじゃが…」



重い波動。

 


真魚がそう表現したものを、後鬼も感じていた。

 



ドン!

 


太鼓が鳴った。

 


皆がその方向を見た。

 


ドン!

 


ドン!



社の中央。


 

数人の男が御輿を担いで立っていた。

 


だが、ただの御輿ではない。

 


板の御輿の上に縛られた少女が座っていた。

 


その前に、いかにも呪術師のような老婆が立っていた。




「これは…どういうことじゃ…」



木の上の後鬼がつぶやいた。

 


「おそらく…」



後鬼は言いかけたが口を噤んだ。

 


「真魚殿に…」



「そうじゃな…」



二人の考えは同じであった。




挿絵(By みてみん)




続く…





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